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監査法人原会計事務所に対する検査結果に基づく勧告について(金融庁)

監査法人原会計事務所に対する検査結果に基づく勧告について(PDFファイル)

金融庁の公認会計士・監査審査会は、監査法人原会計事務所を検査した結果、同監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、同監査法人に対して行政処分その他の措置を講ずるよう勧告しました(2021年2月26日付)。

同監査法人の現況について、最初に書かれています。

「当監査法人は、代表社員4名、社員2名、常勤職員である監査補助者等による約 10 名の人員で構成されており、他の監査法人での監査経験者はおらず、法人設立以来の運営態勢を踏襲している。

当監査法人は、長年にわたって数社の上場会社を主な被監査会社としており、当監査法人の業務収入に占める当該各上場被監査会社からの監査報酬の割合(報酬依存度)が高くなっている状況にある。」

以下、指摘事項より抜粋。

業務管理態勢

「最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、当監査法人設立以前から続く被監査会社との関係の維持・継続を最優先に考えており、被監査会社に長く変動はないことから、実施した監査や法人運営に問題がないと思い込んでいる。」

「最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、監査品質や職業倫理・独立性など公認会計士に求められる資質を重視する意識が不足しているほか、組織的な業務運営や品質管理態勢を構築する必要性を認識していない。」

最高経営責任者兼品質管理担当責任者のみによる法人運営が常態化しており、最高経営責任者兼品質管理担当責任者以外の社員は、社員としての職責を果たす必要性を認識していない。」

品質管理態勢

「最高経営責任者兼品質管理担当責任者は、...(品質管理レビュー等で)指摘を受けた事項や指摘を受けた監査業務についてのみ改善しているかを確認すれば足りると思い込んでおり、指摘事項の再発防止に向けた改善措置が講じられておらず、今回審査会検査で検証した個別監査業務の全てにおいて、これまでの品質管理レビュー等での指摘事項と同様の不備が繰り返されている。」

「当監査法人は、公認会計士法の大会社等以外の被監査会社1社から、監査契約上の監査報酬とは別に監査業務の対価性が認められない「特別監査報酬」を継続して受領している。また、同社の役員に対して商品券を継続して贈与している。

当該「特別監査報酬」については、公認会計士法令上の「特別の経済上の利益」に相当するものと認められ、当監査法人は、公認会計士法で禁止している「監査法人が著しい利害関係を有する会社」に対して監査業務を提供している状況にある。

また、当監査法人による当該商品券の贈与については、日本公認会計士協会が定める倫理規則で禁止している保証業務の依頼人に対する「社会通念上許容される範囲を超える贈答」をしている状況にある。」

個別監査業務

不正リスク対応手続が不適切かつ不十分、収益認識に関する不正リスクの識別が不適切、関係会社株式の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、のれんの評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、固定資産の減損の検討に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、事業損失費用の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分などの重要な不備が認められる。」

訂正監査に係るリスク評価手続が不十分、仕訳テストが不十分、棚卸資産の評価に係る会計上の見積りに関する検討が不十分、売掛金及び棚卸資産に係る残高確認手続が不十分、売上高等の損益勘定に係る監査手続が不十分、グループ監査において評価したリスクへの対応が不十分、監査役等とのコミュニケーションが不十分など、不備が広範かつ多数認められる。」

会計士協会の上場会社監査事務所登録情報によれば、同監査法人は、1989年設立の老舗監査法人です。
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