中央青山監査法人の公認会計士が、監査を担当していた足利銀行から、同行の融資先企業を紹介され、その顧問税理士に就任していたという記事。
ある銀行の監査人である会計士・監査法人(そのパートナーを含む)は、その銀行の融資先から、業務を請け負ってはならないというような独立性のルールは、たしか、なかったと思います。(もしあったら、A銀行を監査している監査法人は、A銀行から融資を受けている会社の監査やその他の会計業務・コンサル業務をやってはいけないことになります。)
しかし、記事で書かれているように、会計士協会の倫理規則第14条では、「独立性の保持に疑いをもたれるような関係や外観を呈しないよう留意しなければならない」という包括的な規定が設けられており、記事のケースでは「銀行の紹介で」というところが引っかかるおそれがあります(ただし、監査先である銀行の紹介でクライアントを獲得した例は、これに限らず少なくないので、それだけで独立性違反とは言いづらい面があります)。
融資先の区分が要注意先に格上げされたというのは、独立性が損なわれたという状況証拠かもしれませんが、決め手にはなりません。
もちろん、この融資先の財政状態が実際には「要注意先」区分より悪いことがわかっていながら、甘い格付けを見逃したとしたら、監査人としての役割を果たしていないことになり、責任は免れません。しかし、そのことと独立性とは別の問題でしょう。
ただ、独立性は、一般の人からみた「外観」でも判断されるので、マスコミがこのように書き立てると、なにもなくても、独立性違反の「外観」ができあがってしまい、監査の信頼性が失われてしまいます。非常に怖いところです。
日本公認会計士協会の倫理規則
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