コロナ対策助成金の不正受給1437社が公表、金額上位の10社は?不正発覚後に待ち受ける悲惨な末路(要無料登録)
巨額の資金が投じられた雇用調整助成金の新型コロナ対策の特例措置で、不正受給の摘発が相次いでいるという記事。東京商工リサーチの人が書いています。
「コロナ禍で雇用を守るために設けられた雇用調整助成金の特例措置には、3年間で6兆円以上が投じられた。窮地に陥った企業の雇用維持に大きな役割を果たしたが、コロナ禍が収束した2023年から不正受給の摘発が相次いでいる。これまでに不正受給した1437社の社名が公表されたが、さらに件数は増え続けている。悪質な場合、刑事事件に発展するケースもあり、社名が公表された企業の倒産リスクが顕在化している。」
厚労省の現在の対応は...
「厚労省はコロナ禍の収束に合わせ、不正受給への対応を厳格化してきた。現在、各労働局で調査を実施し、受給した助成金について不正・不適正な場合は自主申告を促している。だが、悪質性が極めて高い場合、法人や代表者を詐欺罪として刑事責任を問うほか、「自主申告ではない不正受給事案については、例外なく事業主名等を公表」すると強い姿勢で臨んでいる。
不正受給が発覚すれば、各都道府県の労働局が社名を公表する。社名のほか、代表者名や所在地、業種、返還を命じた額や不正行為の内容なども掲載される。社名公表を避けるには、労働局による調査の前に自主申告し、迅速に全額を返還することが必要だ。」
摘発の状況は...
「東京商工リサーチの集計では、これまで不正受給で社名を公表された企業は全国で1437社、不正受給総額は465億7502万円に達する。不正受給額の平均は1社で3241万円だ。」
2021年は9社、2022年は218社、2023年は692社、2024年も10月下旬までに518社が、社名公表されたそうです。
不正受給の金額が大きな会社は...
「これまでに公表された不正受給額の最高額は、人気もんじゃ焼き店をチェーン展開する加納コーポレーション(東京)の49億6797万円。一部の従業員について、事業主都合の休業でなく、単に勤務予定がない日を休業として申請したとして2024年3月に不正受給が公表された(全額返還済み)。これまでの不正受給額とはケタはずれの額で、大きくマスコミでも取り上げられた。
不正受給額の2位は、水戸京成百貨店(茨城)の10億7383万円。従業員が出勤していながら休業と虚偽の申請書類を作成し、不正受給が発覚した。2023年2月の公表時点で全額を返還していたが、その後、茨城県警の捜索が入り、元社長や元総務部長らが詐欺容疑で逮捕される事件に発展。地元を代表する百貨店の不祥事は大きな波紋を呼んだ。
以下、3位は宿泊業のファーストリゾート(株)(千葉、不正受給額7億3798万円)、4位は清掃業の華誠(株)(神奈川、同5億1333万円)、5位は旅行業の(株)ワールド航空サービス(東京、同3億9357万円)と、3億円以上の高額な不正受給額が続く。」
記事では、業種別、年商などによる傾向も説明しています。
不正をやるために会社を設立したことが疑われるようなケースもあるようです。
「業歴では、雇調金の特例措置が始まった2020年4月以降に起業した会社が58社あった。コロナ禍で事業が軌道に乗る前に、間髪入れず不正を行ったことになる。タイミングから察するに、不正を目的に会社を設立したと指摘されても否定できないケースも見受けられる。」
記事によれば、社名公表企業のうち、5.2%が経営破綻しているそうです。経営が苦しいから不正に手を染めた面が推測されるとはいえ、不正の代償は重いようです。
上場会社でも、雇用調整助成金で不正があったことを開示する例が散見されます。上場会社の場合は、助成金返還などのペナルティだけでなく、過年度決算の訂正(もらう権利がないものを利益に計上していたので、それを取り消す必要がある)や、事実関係や責任の所在に関する調査などで、多額の費用がかかるようです。やましいところがある会社は、早めに自主申告した方がよいかもしれません。