金融庁の証券取引等監視委員会は、テラ株式会社における有価証券報告書等の虚偽記載について検査した結果、法令違反の事実が認められたとして、課徴金納付命令発出の勧告を、2019年7月19日付で行いました。
「当時、当社の代表取締役であった者が、医療法人の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有していたにもかかわらず、当社と当該医療法人との取引を、「関連当事者との取引」(連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則第15条の4の2第1項)として、連結財務諸表への注記を行わなかった。
当社は、これにより、記載すべき重要な事項の記載が欠けている有価証券報告書等を提出した。」
平成27年12月期から平成29年12月期までの有価証券報告書が問題にされています。
さらに、これらの有価証券報告書を組込情報とする有価証券届出書を提出したことにより、「「記載すべき重要な事項の記載が欠けている」発行開示書類を提出し、当該発行開示書類に基づく募集により株券等を取得させた」としています。
勧告された課徴金の額は、2億2,385万円です。
発行開示書類の虚偽記載があったことで、大きな課徴金の額となっているようです。
関連当事者取引の記載もれで、これだけの課徴金になるというのは、珍しいケースなのでは。
もちろん、関連当事者取引は重要事項ですが、粉飾決算ではないのに、関連当事者注記のもれだけで、大きな課徴金を課すのだとすれば、ペナルティが著しくアンバランスであるように思われます。
会社は課徴金を認めるようです。
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証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告及び特別損失の発生に関するお知らせ(テラ)
「 当社は、証券取引等監視委員会から勧告が行われたことを真摯に受け止め、金融庁から正式な通知を受領次第、対応について検討いたしますが、特段の事情がない限り事実及び納付すべき課徴金の額を認める方針であり、決定次第あらためて開示いたします。 」
「当社は、有価証券報告書等の重要な事項の不記載に至った直接の原因となった矢崎雄一郎氏に対し、責任の所在を明確化し、損害賠償請求等の責任追及も視野に入れて検討してまいりますので、併せてご報告いたします。」
訂正報告書をみると以下のような注記がもれていただけのようです(平成29年12月期の例)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/43/eea2b79cd9345625939768d18d14fade.png)
(このほかに前期分があります。)
訂正報告書の提出理由より。
「当社は上記の第三者委員会の調査報告書で指摘事項のひとつである医療法人社団医創会の関連当事者性を調査した結果、形式的基準に照らせば、矢崎雄一郎氏が医創会を支配していたかの明確な根拠はないが、第三者委員会報告書に記載されているように、矢崎氏は、医創会の理事や社員ではないものの、医創会を事実上コントロールする立場にあったといえ、一定程度の関連当事者性が認められると判断し、平成27年12月期から平成29年12月期の有価証券報告書の訂正を行うことといたしました。」
持分がない医療法人であり(したがって出資者であっても何か権利があるわけではない)、また、理事や社員にもなっていないとすると、関連当事者といえるのかどうか、グレーゾーンのように思われます。
ちなみに、日産ゴーン事件の役員報酬と違って、関連当事者は財務諸表の注記(監査範囲に含まれる)ですから、監査人の責任も当然問われることになるでしょう。
法律事務所やビッグ4からは第三者委員会の費用をぼったくられ、金融庁からは課徴金をぼったくられるということになるのでしょうか。
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「財務諸表への注記の不備を理由とした課徴金勧告は初めてだ。監視委によるとテラの元社長が医療法人に資金を出し、人事にも関与していたという。不備があった有報をもとに資金調達したため、課徴金額も巨額になった。」
財務諸表本表ではない虚偽記載への課徴金という意味で、日産への課徴金の露払いなのでしょうか。