企業会計審議会で検討している不正対応監査基準の案の内容が明らかになったという記事。8日の日経朝刊の記事によれば、11日の監査部会で基準の原案が示されるようです。
「企業の不正な会計操作を防ぐために、金融庁が検討してきた新たな会計監査基準の原案が7日明らかになった。企業に損失隠しの疑いがある場合、事業所を抜き打ちで監査するように監査法人に求める。監査法人が代わる際には、問題点の詳細な引き継ぎも義務づける。オリンパスや大王製紙などで会計にからむ不祥事が相次いだため、監査を厳しくして株式市場の信頼回復をめざす。」
記事の見出しになっている「抜き打ち監査」については、監査部会で示された「不正に対応した監査の基準の考え方(案)」でも、それにぴったり当てはまる項目は見当たりません。日経によるキャッチフレーズなのでしょう。金融庁が使っている言葉だとすれば、銀行検査か何かと混同しているのでしょう。通常の会計監査で監査人が連絡もせずにいきなり監査先にいって監査させろと要求しても、断られるだけです。もちろん、会社の経営者の了解を得たうえで、現場レベルの不正を発見する手続としては、あり得る(その場合でも抜き打ちが有効な項目は限られていると思われる)のかもしれませんが、オリンパスのような経営者による不正に対しては、実施不可能でしょう。
(監査基準委員会報告書240では不正への全般的対応として「実施する監査手続の種類、時期及び範囲の選択に当たって、企業が想定しない要素の組込み」を求めています。これを「抜き打ち」といえなくはありませんが・・・。)
日経の解説記事(5面)によれば、「費用負担が増えることを懸念する産業界にも配慮し、「過重な監査手続きを求めるものではない」とする」そうですが、何が必要な手続で、何が「過重な」手続なのかは、監査基準の各規定に具体的に書かれていることをもとに判断するしかないわけであり、そんな一般規定があっても、何の意味もありません。
J-SOXのときと同じように、世間一般に対しては、厳しい基準を作ったと宣伝しておきながら、産業界に対しては、負担は増やさない(負担が増えたとすれば監査人の対応が過度に保守的だからだ)といってなだめるという構図なのでしょうか。
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