会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

大水、売上高の水増し186億円 不正取引で社長陳謝

大水、売上高の水増し186億円 不正取引で社長陳謝 - MSN産経ニュース

大証2部上場の水産卸会社「大水」が、売上高の水増しが証拠書類の残る2003年4月から2008年9月までで約186億円、損失は最大約16億円に上ることを明らかにしたという記事。

「・・・大水の元営業部長(55)=懲戒解雇=が営業成績を上げるため元年ごろから循環取引を始めた、とする調査報告を発表。「他の役員、社員の関与はなかった」と結論づけ、元部長への損害賠償請求や刑事告訴なども検討する。」

不適切な取引に関する調査概要報告について(PDFファイル)

取引の概要のところを読むと、典型的な循環取引だったようです。ただし取引価格が膨れ上がらないよう循環の途中で損失を計上させていたようです。

「本件取引は、当該社員が取引の基軸となったA社を利用し、取引関係業者十数社のうち取引ごとに複数社を経由させる循環取引で、A社において評価替えを行っていました。また、取引の中には冷蔵倉庫業者に偽入庫通知書を発行させて行った架空取引もありました。」

「本件取引は当該社員がA社および取引関係業者に直接連絡し仕入売上の指示を行っておりました。取引関係業者は、それに従って順次取引を進めていきました。その過程で取引関係業者には0.5~1.0%の手数料が上乗せされ、当社にも通常の利益が計上されておりました。循環取引による損失は継続的に循環すればその損失はさらに増大します。しかし、本件取引ではA社を経由する際に商品の評価を調整(例、仕入1,000円→売上800円)して、損失をA社に架空在庫として滞留させておりました。」

そうすると損失を計上したA社は資金繰りがつかなくなりますが、それに対しては別の不正により資金環流していたようです。

「また、当該社員はA社および運送業者に指示し、A社から運送業者に商品の架空請求をさせ、運送業者は手数料を加え当社に運賃として請求し資金をA社に還流しておりました。」

2003年には損を取り戻そうとして別のビジネスに手を出しますが、うまくいかず、結果として循環取引の規模をますます拡大させてしまいます。

「平成17年になって水産会社との間でサケの事業計画が持ち上がり、当該社員はこのサケ事業により売上の増大と大幅な利益を出すことにより、それまで循環取引によって抱えていた負債(形式的にはA社の負債)、架空在庫を少しでも減らすことを目的として取り組みました。しかし、サケの相場は当初高値を付けていましたが、平成18年度後半からは下落傾向が見られ、以後は主にその含み損を顕在化させないためA社を介した評価替えの取引が行われ、同時に取引関係業者に対する循環取引の資金繰り支援を目的として循環取引を繰り返すことも活発になり、本件取引の規模および損失が拡大いたしました。」

最終的には以下のような内訳の約16億円もの損失を計上することとなってしまいました。

平成15年3月末累積損失 346百万円
当社マージン 509百万円
循環マージン 298百万円
在庫評価損失 471百万円
取引関連損失 50百万円
 総 額 1,674百万円

ちなみに、中央青山監査法人・みすず監査法人が監査をしていたため、訂正後の連結財務諸表および財務諸表については監査を受けていないそうです。

取引先と共謀しており、おそらく書類もすべて整っていたのでしょうから、発見は非常に難しかったと思われます。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事