金融庁は、KDA監査法人の運営が著しく不当と認められるとして、同法人に対する行政処分を、2016年8月12日付で行いました。
処分の内容は、業務改善命令(業務管理体制の改善)です。
「監査契約の新規締結及び更新、監査実施者の教育・訓練及び選任、監査業務に係る審査、定期的な検証など品質管理全般に多くの不備が認められている」「監査業務の実施において、リスク・アプローチに基づく監査計画の立案や会計上の見積りの監査等について、重要な手続に多くの不備が認められている」「監査調書の作成において、結論だけが記載されているもの又は資料を綴じ込んだだけのものが多数みられるにもかかわらず、これを看過している」「被監査会社において、重要な営業損失、マイナスの営業キャッシュ・フロー、主要な得意先の喪失等、監査の基準に例示されている継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が複数存在することを監査チームは認識しているにもかかわらず、当該事象又は状況は識別していないとする経営者の主張の妥当性を検討していない」「不動産取引において買い手が当該不動産の売戻し権を保有するなど通例でない重要な取引について、当該取引の事業上の合理性を十分に検討していない」など、いろいろな指摘がなされています。
(「当監査法人の業務執行社員は、監査リスクの高い複数の上場会社の監査業務を行っているにもかかわらず、被監査会社の主張を批判的に評価していないなど、職業的懐疑心を十分に保持・発揮していない」という指摘もありますが、これは少し変です。これだと、監査リスクが高い場合にのみ、被監査会社の主張を批判的に評価すればよいというように読めます。しかし、職業的懐疑心は「監査証拠を鵜呑みにせず、批判的に評価する姿勢」(監査基準委員会報告書200)のことであり、また、職業的懐疑心は、監査リスクの高低にかかわらず、常に保持しなければならないのですから、監査リスクが低いと一般的に考えられているような会社(例えば不正発覚前のオリンパスや東芝)でも、被監査会社の主張(これも証拠の一種)の批判的評価は必要でしょう。また、細かいことをいえば、この文脈では「監査リスク」(監査手続実施後にも残るリスク)ではなく「重要な虚偽表示リスク」でしょう。)
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