明豊エンタープライズ(ジャスダック上場)のプレスリリース(9月6日付)。
中国における不動産開発プロジェクトに係る過年度の貸倒引当金の計上について調べた特別調査委員会の調査報告書を受領したというものです。
「結論といたしましては、当社の中国プロジェクトに係る貸付金等債権に関する過年度の貸倒引当金計上に関し、貸付金債権については 2011 年 7 月期の第 2 四半期に、出資持分の売買代金債権については 2011 年 7月期の第 3 四半期に、それぞれ債務者の支払能力を踏まえた貸倒引当金の計上を行う必要があったとの報告を受けております。 」
報告書によると、以下のような取引が行われています(12ページ)
・2005 年 11 月、北京における不動産開発プロジェクト に参加することを決定
・2006 年 10月 31 日、他の参加者とともに、実施主体となる合弁会社である A 社に対し、 3750 万人民元(当時のレートで換算すると 5 億 7832 万 8860 円)を出資
・2007 年11 月、運営資金とするために、B 社に対して、4 億 2500 万円を貸し付け(長期貸付金として計上)
・2009 年 5 月、本件出資持分を B 社に 5 億 7832 万 9000 円で売却することを合意
・2010 年 3 月、B 社に対して本件出資持分を譲渡(売買代金債権は未収入金と長期未収入金として計上)
引当てについては、最終的に、2018 年 7 月期に、北京 PJ 債権を破産更生債権等に分類し、同債権全額(合計残高約 8 億 4700 万円)について貸倒引当金を計上しています(同上)。
関連勘定の残高推移は以下のとおり(29ページ)。
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調査の結論としては、引当てが遅かったということになっています。相手先関係者との間で、債務の一部免除の「覚書」(法的に有効なものかどうかは不明)を交わしていたようですが、損失計上のタイミングは、有効か無効かで変わらないという結論のようです。
「(1)本件貸付金債権
本件覚書が有効であった場合、本件貸付金債権は、2010 年 7 月期第 2 四半期において、全額貸倒損失を計上する必要がある。
また、本件覚書が無効だとしても、本件貸付金債権は、2010 年 7 月期第 2 四半期におい、貸倒懸念債権に分類される債権であり、財務内容評価法に基づき、B 社の支払能力を総合的に判断すれば、その全額について貸倒引当金を計上する必要があると思料する。
(2)本件売買代金債権
本件売買代金債権は、2010 年 7 月期第 3 四半期において、貸倒懸念債権に分類される債権であり、財務内容評価法に基づき、B 社の支払能力を総合的に判断すれば、回収可能額は、1 億円乃至 1 億 4000 万円にとどまるため、4 億 2700 万円乃至 4 億 6700 万円の貸倒引当金を計上する必要があると思料する。」(37ページ)
「MEP の役員が、北京 PJ について Q 氏や D氏任せにしており、北京 PJ 債権の回収可能性について主体的に問題意識を有していなかった」、「本件覚書の法的有効性にかかわらず、2009 年 12 月の時点で、本件貸付金債権を免除することを内容とする覚書が作成されていた事実を、Q 氏及び D 氏以外の MEP の役職員が把握していたならば、北京 PJ 債権の回収可能性について、追加の資料を要求したり、根本的に検討し直すなど、より慎重な検討がなされていた可能性もある」といった指摘もなされています(40ページ)。(MEP:明豊エンタープライズ)
この件に関しては、9月13日に訂正報告書を提出したそうです。
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過年度の有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び過年度決算短信等の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)
例えば、2013年7月期の純資産への影響で見ると、訂正前1,494,062千円に対し、訂正額 △ 689,244千円、訂正後 804,818千円となっており、会社の規模からすると大きな影響額となっています。
内部統制報告書も訂正です。
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過年度内部統制報告書の訂正報告書の提出に関するお知らせ(PDFファイル)
この件とも関係があるようですが、会計監査人も交代するそうです。
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公認会計士等の異動に関するお知らせ(PDFファイル)
「当社の会計監査人であるアーク有限責任監査法人は 2019 年 10 月 29 日開催予定の第 51 期定時株主総会終結の時をもって任期満了となります。
当社は、2019 年9月6日付で公表いたしました「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」に記載のとおり、当社の中国プロジェクトに係る貸付等債権に関する過年度の貸倒引当金に関して、その計上時期の見直しを行い、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書等について決算訂正を行っておりますが、同監査法人より、この決算訂正の要因となった過去の事実関係のうち一部の重要な情報について発生当時から訂正直前期まで同監査法人に提供されていなかったこと、かかる対応により同監査法人として経営者の誠実性に疑念が生じ、当社との信頼関係が損なわれたこと、また、新規事業進出等の経営環境の変化により監査工数の増大も見込まれることから、任期満了に伴い契約更新を差し控えたい旨の申し出を受けました。
これを契機として、10 年と長年にわたり同監査法人が当社に関与を継続してきたことも考慮して、監査法人の交代を行うこととし、当社グループの事業規模に適した監査対応と監査費用の相当性の観点から、複数の監査法人の比較検討を行いました。その結果、当社グループの事業規模及び監査の効率性と監査報酬の相当性等を検討し、監査等委員会は前述3.の理由により新たに監査法人元和を会計監査人として選任する議案の内容を決定したものであります。」