○オーディオ部屋?
オーディオ製品を8畳の洋間に無理矢理押し込んでいる
1年中厚手のカーテンで閉ざれたまま
壁掛けの「裸婦」が薄暗く浮かび上がる
「お邪魔します」と一声掛けて入らねばならない
エアコンが必要な夏冬は自然に足が遠のく
○不動の主(あるじ)はALTEC 620B
8畳の洋間に不似合いに大きいALTEC 620B
かれこれ20年以上、我が家のオーディオシステムの中心に居座っている
○ALTEC 大型スピーカーシステムの系譜は大きく分けて2系統
・スピーカーユニット
①低域38cm口径ウーファー+高域セクトラルホーン 2ユニット構成
②38cm口径ウーファーの中央に高域ショートセクトラルホーンを組み込んだ同軸 1ユニット構成
共に、管球アンプ時代に起源を持ちつ高能率スピーカーユニットです。
・スピーカーボックスの形式
③フロントロードホーン+バスレフ箱
④バスレフ箱(中・大)
・外観(仕上げ)
⑤性能優先、質実剛健な業務用(プロ)用:
⑥周囲の家具(調度品)と並べて違和感が生じない民生(パブリック)用:
○ALTEC 620B
②2ウエイ同軸スピーカーユニット604−8Hを、④大型バスレフボックスを組み入れた、⑥民生用スピーカーシステム
○同軸ユニットALTEC604ー8Hが生まれた背景
大出力半導体アンプが出現
スピーカーシステムは「能率を犠牲にしても再生帯域広域化を優先」する時代に移行した。
スピーカーユニットは受け持ち帯域を分けて専門化し、大型スピーカーは複数のスピーカーユニットを組み合わせる方向にシフトしました。
その火付け役になったのが、JBL4343に代表される「JBLプロフェッショナルシリーズ」。高額商品にも拘らず、空前の大ヒットとなりました。
604ー8Hは「再生帯域広域化」の流れの中で、「高能率を維持しつつ、高域特性の改善と指向特性の拡大」を目指した製品です。
ホーンドライバーはリングダイアグラムからタンジェリン・ラジアルフェイズプラグに、ホーン形状はマルチセルラホーンから小型マンターレイ(魚:エイ)ホーンに変わりました。
LCネットワークも大変更しました。2ウエイスピーカーなのに中音域と高音域を個別に調整できるようになりました。
604ー8Hは、保守色の強いALTECがその殻を破った革新的なスピーカーユニットでした。
ALTEC 620Bは、②604ー8Hを大ぶりのバスレフ箱に入れ、④取り外し可能な布性フロントグリルで化粧した⑥民生用スピーカーシステムです。
ALTECで直ぐに思い浮かぶのは、フロントロードホーン型ボックスの上に大型ホーンを乗せたA7です。
往年のジャズ喫茶ではJBL 4343と双璧をなす定番スピーカーシステムでした。
A5はA7とほぼ同じ外観ですが、より強力な磁気回路を持つスピーカーユニットで構成されています。A7のウーファーは416B、A5のウーファーはより強力な515Bです。
604ー8Hのウーファー部は515B相当の強力版です。
A7、A5にガッツ溢れる音。ジャズ、ロック等ハマった場合はこれしかないの独壇場です。
620Bはほぼ同じ磁気回路の同軸スピーカーユニットを積む。クラシックも十分聴けます。ジャズでは物足りない一面も
全く異なったスピーカーのように感じます。不思議です。
ALTECのこの革新的な取り組みに対する評価はまちまちでした。往年のALTECユーザーは旧製品を懐かしむ声も強かったように思います。
自分は604ー8Hの前身モデル604ー8Bと聴き比べ、604ー8Hを選びました。次のモデルはフェライトマグネット仕様に変わっていました。604ー8Hはアルニコ磁石搭載最終モデルであると言うことがも選定理由になったのかもしれません。
アルニコ磁石とフェライト磁石
ALTEC 620Bの重量は約70kg。動かせない重さではありません。この上に、相方となる「全段差動300Bプッシュプルアンプ(重量未計測:40kg以上)」が鎮座している。総重量110kg越え。移動するにはこのアンプを下さねばなりません。2組ある重量級アンプの新たな置き場所の確保も頭の痛い問題です。
やむをえず、「ALTEC 620B+全段差動300Bプッシュプルアンプ」はそのままにして、より小型のスピーカーを試聴しました。
ALTEC 620Bを退かしてまで交換したくなるようなスピーカーシステムは現れませんでした。
ALTEC 620Bと全段差動300Bプッシュプルアンプの相性が良いのだと思います
今や、ALTEC 620Bと全段差動300Bプッシュプルアンプは一心同体と言える存在です。
○604ー8Hのエッジは布製
ウレタン製エッジは経年劣化が激しい。劣化が進むとボロボロになり、やがて朽ち落ちる。張り替えなければなりません。劣化を恐れて革などに張り替える方法もありますが、本来の特性を損なうことになります。
ゴムエッジは経年劣化で硬化が進む。柔軟処理が必要と思う。
604ー8Hのウーファーエッジは昔ながらの布製(ビスコースオイル塗り)。経年劣化はあるでしょう。今も十分な弾力があり、張り替えの必要は感じません。
○604ー8Hの最大の魅力は高能率。
現代スピーカーの設計思想は広帯域を意識している。
高域を伸ばすのは比較的容易です。
難しいのは低域の拡大です。f0を如何に下げるか。小口径のウーファーは低域再生が苦手。振動板を重くするしかありません。必然的に能率は下がります。
半導体アンプのIC化も進み、小型アンプでも100wは楽々出る時代。
スピーカーシステムに高能率を求める必要が減ったのです。
515Bの能率は105dB/W/mと極めて高い。515Bとフロントロードホーンと組み合わせたA5は106dB/W/mと更に高い。
604ー8Hのウーファー部は515B相当品。大型バスレフ箱にマウントされている。能率は103dB/W/mと高い。
現代設計のブックシェルフスピーカーは低い。仮に83dB/W/mと仮定すれば、ALTEC 620Bは20db高い。能率差は100倍ある。
生音とスピーカーの音の違いの一つはダイナミックレンジ(微小音と最大音量の幅)です。
スピーカーユニットには最大許容入力電力(W)があり、これを超えると歪む。破損する。
高能率スピーカーは振動板が軽い。その分、立ち上がりが早く、ダイナミックレンジが広く感じます。
概して、ホーン型スピーカーはメガホン効果で能率が高い。やや個性的な面もありますが生々しく聞こえます。
一度、高能率スピーカーを聴いて欲しいものです。ブックシェルフ型スピーカーにはない世界が広がります。
その典型がウエスタン・エレクトリックの劇場スピーカーシステム。しかし、家庭で御せる代物ではありません。
現代設計スピーカーでも高能率システムはあります。その多くはウーファーは別駆動、大出力アンプ内蔵が多い。
現代設計スピーカーは広帯域でなければならないと言う宿命があります。
重いウーファーの振動板を動かさねばならない。大出力半導体アンプが前提です。
超低域再生をサッパリと諦めれば、設計は大分楽になると思います。小出力真空管アンプを楽しむ余裕が生まれると思うのです。
(余談)
ALTEC 620B が来たのは二十数年前。既に販売は終了していました。縁あってオーディ愛好家の遺品を譲り受けたものです。
それまで、6畳の小部屋でJBLのユニットを使った3ウエイマルチアンプで格闘していました。
JBL・SPユニットを使ったマルチアンプシステム(1980年代) 画像 https://blog.goo.ne.jp/kamekutobu_2014/e/36719636e9ff6f0613fef479d957777e
ALTEC 620B 過去記事 https://blog.goo.ne.jp/kamekutobu_2014/e/e6a930758662c86469ba3ac6186a47f9
これまで求め続けて来た「ウッドベースのフワーと漂うような軽やかな低音」があっさりと出て、ビックリしました。
ALTEC620B(右チャンネル)
前面サランネットを外した状態
長方形の穴はバスレフポート。奥行きはフロントバッフルの厚みしかありません。
エア抜き穴としか見えませんが、計算したところ、バスレフ効果ありです。
バスレフは共鳴現象を利用している。その音域は盛り上がるけれど、音源に含まれる音とはイコールではありません。この穴をウレタンで塞ぎ、半密閉にしようかと思案中です。
バスレフポートから出ている線はスピーカーコード。本来はスピーカーボックスの裏側のスピーカー端子に繋ぐ構造ですが、端子がチャチで信頼性が乏しい。ネットワークに直接ハンダ付けしています。 このスピーカーコードがサランネットの枠と干渉し、サランネットの固定が甘くなる。つまり、邪魔です。
上に載っているのが、全段差動300B プッシュプルアンプ
左チャンネルのALTEC620Bにも載っています。
この画像を見て思うことあり
この部屋の隠れ主は、全段差動300B プッシュプルアンプ じゃないのか?
ALTEC620Bは中古品として今でも入手可能
対して、全段差動300B プッシュプルアンプ。タムラトランス製品は販売中止品。入手は不可能に近い。
と言うことで、全段差動300B プッシュプルアンプに続く。
L チャンネル サランネットあり
L チャンネル サランネットなし
L 、Rチャンネルスピーカーとも全く同じスピーカーです。
バスレフポート、L Cネットワークの位置は同じです。
バスレフポート
ダンプド・セミバスレフ?
ウレタンで軽く塞ぎました。重低音を含む迫力ある音楽をあまり聴きません。
バスレフ特有の癖を低減?できるかも 測定していません。
ALTEC 620B関連