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「マルチアンプスピーカー」の現実

 チャンネルディバイダー・マルチアンプ式スピーカー(システム)は一つの理想像です。
 「マルチスピーカー・マルチアンプ」の勧め (ステレオサウンド別冊名)のタイトル名を見ても、何のことやら分からないでしょう。
 「マルチチャンネルディバイダー・マルチアンプドライブ・マルチスピーカーユニット・スピーカーシステム」と書いてもやはりサッパリ分からないかもしれません。
 どっちみ、分からないのなら、略称「マルチアンプスピーカー」として話を進めることにします。

 実際にやってみて(とは言っても25年以上も前)の経験から見た問題点を書き連ねます。

①装置全体のS/Nが下がる。
 チャンネルディバイダーはアンプの一種。プリアンプ、パワーアンプと同じよう残留雑音がある。
 中・高域のスピーカーユニット(ホーン型が多い)は低域のスピーカーユニットと比べて能率が高い。
 LCネットワーク方式の場合、中・高域スピーカーユニット側から見れば、パワーアンプにノイズカットフィルターを入れたのと同じ。パワーアンプから来る残留ノイズは減る。
 マルチアンプ方式の場合、パワーアンプとスピーカーユニットはダイレクトにつながる。パワーアンプの残留雑音はそのままで減衰しない。
 つまり、LCネットワーク方式と比べS/Nが悪くなる。

②スピーカーユニットの保護が必要
 スピーカーシステムはアンプ電源のオン・オフ時にショックを受ける。
 LCネットワーク(L、C、R)はスピーカーユニットの実質上の保護回路としても働いている。
 マルチアンプ方式の場合、ショックがスピーカーユニットにダイレクトの伝わる。
 アンプに遅延回路を内蔵し、動作安定後にリレーで繋ぐ等の対策をすべきです。
 雷停電に備え、即断回路が必要です。
 
 スピーカーユニット保護のため、低域をカットする大容量コンデンサーを入れる方法もあるが、アンプ直結と言う最大のメリットが失われる。

③神経を使う場面が多い。
 アンプの点火順序もショックノイズに気を遣う必要がある。
 プリ、チャンネルディバイダー、低域用、中域用、高域用の順番になる。
 切る時は逆順です。
 雷予想が出ている時は電源は切りましょう。電源コードはコンセントから引き抜きましょう。
 
 故障時、あるいは、動作が変と思った時、原因の特定は容易ではありません。
 接続機器数、接続コード数も半端ない。チェックだけでも大変です。

○苦しい言い訳
 都合20年位格闘したと思う。自分は頓挫してしまいました。

 マルチアンプスピーカーシステムに挑戦したのは、手持ちのラックス製真空管アンプを活用すると言う意味が強かったように思う。
 ラックス製真空管アンプ(チャンネルディバイダーも含め)で統一したい言う拘りがあった。
 ラックス製真空管アンプの起源はLPレコード全盛時代。S/N比は決して良いとは言えなかった。これは現在使用中の現代設計真空管アンプとの比較で実感しています。
 アンプの残留ノイズは高能率ホーン型スピーカーユニット(JBL製)では気になった。
 高能率ホーン型スピーカーユニットはショックノイズに弱い。実際、ツィター2405の振動板を壊してしまった。

○マルチアンプスピーカーシステムの現実解答
 チャンネルディバー方式で一番メリットを受けるのはウーファー。ダンピングファクターが下がらない。制動が効く。結果、ウーファーのフワフワ感が減る。
 スピーカーからの逆起電力の原因は振動板の余震。振動板が重いウーファーが問題となる。
 ウーファーからの逆起電力は直結するアンプには影響するが、別系統のアンプには影響しない。他のスピーカーへの影響はない。

 ウーファーに直結しているアンプにアクシデントが生じても、ウーファーはタフなので、破損の恐れは少ない。

 ミッドレンジ以上のスピーカーユニットは保護回路と言う意味でもLCネットワークにした方が安全と思う。

 4343にもある「パート・マルチアンプスピーカーシステム」が「現実解」かもしれません。
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