Qiicksilver Audio pre amprifire 上に仮置きされた マイ「麗しの真空管アンプ」
キット製品と言うと細かいパーツは基盤(取り付け方式)が一般的です。
スペース効率が良く、組み立てが楽、初心者に向いているからです。
50年前のラックスキットも基盤でした。
基盤化は量産が前提と一面もありそうです。
講習会用キットはラグ板(取り付け方式)でした。
狭い場所にパーツを押し込み、ハンダコテ作業は大変でした。
受講生の技量と不屈精神力が問われるものでした。
自分はこの配線作業途上でギブアップ。講師先生の熱心な指導で何とか形を繕うことが出来ました。
ラグ板は、配線の難易度が高い反面、利点もある。
基盤配線ではパーツ配置が基盤面積に限定されるのに対し、ラグ板配線はその縛りがない。シャーシー内のパーツ配置の自由度が高い。
近くに置きたいものは近くに、離さなければならないものは離すことができる。
ラグ板の重ね置きが出来る。
アースポイント設定の自由度が高く、樹状集中アースが可能です。
基盤配線では導体断面積は基盤裏の導体厚で決まる。制限がある。ラグ板配線は配線導体断面積で決まる。ラグ板配線が有利でしょう。
配線材はテフロン皮膜銅線を使っているので耐久性は高い。
ラグ板別に自分流の改造が可能です。
手作り感が強く、マイ・アンプ感は増します。
今回はラグ板キットですが、基盤キットも可能な設計になっています。
入門者、初心者には基盤組み、中級者以上にはラグ板組みと言う選択が可能です。
部品配置図では、ステレオアンプなのに出力トランスが一つしか見当たりません。一つはシャーシー内の全く別の離れた場所の側板に横付けなので、発見が遅れました。
出力トランスは磁力を発生する。両チャンネルのトランスが近ければ互いに影響を受け、チャンネルセパレーションが劣化する可能性がある。
出力トランスの取り付け軸の角度を90度ズラしているので、トランス同士の影響はより少なくなる。
狭いシャーシー内にトランスを配置するための苦渋の選択結果かも知れませんが、設計者がそこまで計算していたとしたら・・・驚くしかありません。
シャーシー内外のパーツは共締め箇所がいくつもある。
シャーシーの穴数を極力減らし、シャーシー強度を保つ。
外に露出するボルト(飾りネジ)は減るので、見栄えも良くなる。
シャーシー強度を高めるために補強板を付けている。
そこまで考えたキット製品を自分は知らない。
キット製品はコスト最優先の設計になる。性能に関係ない箇所は極力簡易化する。
「麗しの真空管アンプ」は「見栄え」も性能の一つ。コストを掛けています。
熱を出す電源トランスはシャーシーの外に置かざるを得ません。
コストを抑えた電源トランスは剥き出し状態なので見栄えは悪い。アルミ板を加工し、トランスの天井部と側面の二面を覆っています。残る側面の二面は開いたままで、覆ったアルミ板の断面も見えている。
これをどう処理したのか。
部品パーツの中に「黒のアクリル板」が2枚ありました。何処に使うのか皆目見当が付きませんでした。
電源トランスを覆うパーツでした。アルミの断面を隠す大きさにカットされたアクリル板を貼り付けるのです。シャーシーの黒漆塗りオプションを選んだ場合、見栄えは格段に上がります。
これには裏話もあります。キットでは、アルミ板は元色の銀色でした。受講生がマイアンプ製作の思いを込めて吹き付け塗装できるようにと配慮から、無塗装でした。
講習生は組み立て作業でおおわらわ。塗装まではとても手が回らない。
講師先生が受講生指導で忙しい時間の合間を縫って塗装してくれました。
シャーシーの表面は牛革貼です。
牛革は自分好みにカットして貼る。形を変えて自分流アンプに仕上げることが出来ます。
革張り理由はもう一つあります。底板の断面を隠すスカートでもあるのです。
下から覗くのは良いとして、捲らないようにして下さい。
設計者兼講師先生にお願い
キット製品では牛革の色はオプション設定で選べるようにして下さい。自分は「青」が欲しかった。愛車をオプショナルパーツで彩るに似た感覚です。
側板はなくても実用上の問題はありません。見栄えは良くなります。無垢の桜材にしたのは設計者の拘りです。
シャーシー・側板の「漆塗装」は、オプション(漆職人への特注)になっています。自分はオーダーしました。
漆塗りは乾燥時間が長く、1週間では足りない。このため、次の講習会は2週間後になりました。
外に見えるビスは錆を防ぐためにステンレス製です。
銘板(自分の場合は無銘)を止めるマイナス溝ネジは線の傾きを揃えました。
これで、マイ「麗しの真空管アンプ」の完成です。
面白い機能が付いています。
負帰還量(NFB)は3dbと6dbに切り替えができます。音色が変わります。
メーカー製品はカットアンドトライで負帰還量は決定され固定されます。
しかし、組み合わされるスピーカーとの相性がある。聞き手の好みもある。切り替えりが出来るのは面白い。
回路が読める上級者は弄れます。手作りキットならではの楽しみです。
振り返れば、負帰還量可変のアンプを使うのは、ラックスの真空管アンプMQ-68C以来です。オール管球式のマルチアンプの中音域用にモノラル仕様にして二台使っていました。懐かしい思い出です。
左:「珠玉の直熱管アンプ」 右:「麗しの真空管アンプ」