「黎明期のラックレコードの音を聞こう!!」 で、出番があるらしい。
久しぶりに 「LUXMAN PD350 」の点検と調整を行いました。
○LUXMAN PD350
LPレコード最盛期を過ぎ、世の中がCD時代を迎えた時代に生まれたラックス製LPプレイヤーです。
1980年代、オーディオメーカー各社はそれまで培ってきた技術を結集した製品を出していました。今振り返れば、オーディオ最盛期だったと思います。
ラックスはそれまでも斬新な発想でデザイン性の高い製品を出していました。
自分もラックス製LPプレイヤーを何機種か使用した後にこの機種に辿り着き、今も愛用しています。
LUXMAN PD350
LUXMAN PD350
ターンテーブルの引き抜き
ターンテーブルの重量は約10kg。容易には外せない。
取り外し、取り付け時の専用治具があるのですが見つからない。
ターンテーブルの空気吸い込み口が2穴ある。穴の内部は雌ネジ状の溝が刻まれている。この溝に合う長い雄ネジをホームセンターで見付け自作しました。
LUXMAN PD350はLPレコード再生に必要な回転を担う「ターンテーブル」です。
これにトーンアーム、カートリッジを取り付けて、LPレコードプレイヤーとして完成する。
ターンテーブルに求められる役割はLPレコードをしっかり固定し、正確な回転をすることです。
ターンテーブルを如何に正確に回転をさせるか。回転ムラ(ワウフラッター)を減らすか。
これまでもレコードプレイヤーメーカー各社はターンテーブル、駆動方式等いろいろな工夫をしてきました。
○PD350の特徴
①ベルトドライブ式
重量級のターンテーブルの外周にベルトを掛けて、そのベルトを直流サーボモーターで駆動するベルトドライブ式。
高い慣性力で、回転ムラ(ワウフラッター)の発生を抑えている。
②LPレコード吸着式
薄いゴム板が貼られたターンテーブルの内周と外周には柔軟性のあるゴム製のシーリングベルトがある。LPレコードの外周と内周はこのシーリングベルトに一致する。LPレコードは内周と外周で支えられ空中に浮いた不安定な状況。LPレコードが共振しかねない。
ターンテーブル、LPレコード、二つのシーリングベルトの四面に囲まれた空気を抜けば、LPレコードは薄いゴムシートを介してターンテーブルに張り付き一体化する。
③12インチLPレコード専用プレイヤー
10インチLPレコード、ドーナッツレコードの外周は完全に浮いてしまい、肝心の吸着システムは活用できない。
ターンテーブル 表
ちょっと寄り道
LPプレイヤー動作時のターンテーブル上のLPレコードを観察すると、LPレコードの個体差はあるが、その外周は上下に波打ち、カートリッジも上下に動いている。カートリッジに余分な負荷を与えている。
ステレオLPレコードの溝は縦振動の信号を含んでいる。ステレオカートリッジはこの縦信号を正確に拾わねばならない。カンチレバーには追従性の良い柔軟性の高い細めのものが向いている。
トーンアームの縦うねりに対応するには、追従性能の良い軽量アームが向いている。
カートリッジ本体は上下左右に振れずに、カンチレバーの先の針先(ダイヤモンドチップ)がレコード溝を正確になぞることが理想です。
LPレコードは厚い方が音が良いものが多いと言う話を聞く。波打が少なく、カートリッジの縦ブレが小さく、歪みが少ないからでしょう。
LPレコードは軽い。ターンテーブル上に単接点で置かれている状態はかなり不安定。LPレコードの上に重いスタビライザーを載せて荷重を掛けることがある。
LPレコードの内周を抑えても外周部はフリー、その効果は限定的でしょう。ターンテーブルの慣性力を高める効果も少ないでしょう。
軽量ターンテーブル用に設計された軸受には荷重増のストレスが生じる。重量級スタビライザーは諸刃の剣。お勧めしません。ゴムチャック式の軽量スタビライザーが良いと思います。
寄り道終了
内側シーリング材近くにある二つの穴の役割 LPレコードを載せて、この穴から空気を抜く。この空間は大気圧以下になり、LPレコードは大気圧によりターンテーブルにに張り付く。
点接触が面接触(正しくは多点接触)になるのです。LPレコードの縦方向の歪みの矯正される。カートリッジの縦方向のふらつきは抑えられることになります。
ターンテーブル 裏
外観はアルミ製ですが、その裏側には真鍮が埋め込まれています。
真鍮製ターンテーブルはマイクロ製品に多く見られます。アルミ製ターンテーブルに比べて質量が大。慣性力が高い。その一方、軸受けへの荷重が大きいのが難点です。
PD350の場合、異種金属を貼り合わせたところの意味があります。金属にその大きさ(重さ)で特通の固定振動数が生じる。ターンテーブル用シートは厚手のゴムシートが使われることが多い。ターンテーブルの鳴きを抑える効果もあると考えます。
異種金属を貼り合わせれば、その固定振動がうち消しあう可能性があります。試行錯誤で決められるのでしょう。そこに挑戦しているようです。
ラックス製LPプレイヤーではこの機種だけのようです。
軸受
ターンテーブル軸受部かなりしっかりした構造です。空気漏れがないようにシーリング構造になっています。
この軸の内部を通って、空気は外に吸い出される構造になっています。
再度、寄り道
ターンテーブルマットの多くはゴム材質です。ターンテーブル鳴きを減らすに適しているのでしょう。
これまで、鹿皮、ガラス板、カーボン等を試しましたが、結局、ゴムに落ち着きました。
電源ユニット
この電源ユニットで交流から直流に変換し、LPプレイヤーのDCモーターの電源となります。
LPプレイヤーの電源は通常は本体に内蔵されています。
微弱な信号を扱うLPプレイヤーは、極力、外部撹乱要素は取り除きたいのラックスの意図が見えます。
この電源ユニットにはレコード吸着システムが内蔵されています。残念ながら、故障し、動作不能です。マイクロ製のような常時可動のコンプレッサー式ではなく、振動の少なく、空気圧が下がった時だけに動作する間欠型。現在、修理不能のようです。
この状態不良は当たり前の状態になっている。このため、レコード吸着式を諦めて、内・外のシーリング材を除いて使っている方もいるようです。
それにしても、レコード吸着式を生かしてこそが、PD350の真骨頂でしょう。
熱帯魚飼育用エアーポンプを使い、自作しました。
熱帯魚飼育用エアーポンプ
これで、エアー抜きをします。このままでは吸着力が強すぎる。動作音が大きい。
このため、外部降圧電源を噛ませて、電圧を落としています。事実上、気にならないまでになりました。
○トーンアーム SAEC WE-407/23
PD350にはオプションとして、各種トーンアームベースを用意しています。
PD350に合うデザインのトーンアームはこれでしょう。
SAEC WE-407/23
○SAEC WE-407/23
今回の催しでは古いレコードを掛けます。カートリッジはモノラルレコード再生に向いているSHURE M447を選びました。これに合わせて、ラテラルバランス、インサイドキャンセラー、針圧を調整しました。