暑さでやられた神戸マラソンから早や2週間が経ちました。ようやく、勉強する気が湧いてきました。
ということで、標記の記事をTrainingPeaksから転載します。原本はこちら。
TrainingPeaks自体は英語のサービスなので、気軽に利用するのも少々敷居が高いですが、HRVを測定すること自体はBluetoothLE対応のHRセンサー(吾輩はPolar H7センサーを利用しています)とスマホ(とアプリ)があれば簡単です。恐らくですが、R-R間隔とその標準偏差を加工して指標化したら使えるかなと思います。
暫く試行錯誤してみます。
心拍の変動性(HRV)を経時的に測定し、オーバートレーニングを回避する
Friday, November 25, 2016 / By Alan Couzens on Training Peaks
TrainingPeaksは最近、複数の心拍変動測定アプリと連携することが可能となった。この機能を活用することにより、トレーニングの負荷を新たな観点から解析することが出来る。
本稿では、心拍の変動性(Heart Rate Variability)とは心臓の拍動間隔(=R-R間隔)のバラつき具合を指す用語と定義する。例えば安静時心拍数=60拍/分である場合、R-R間隔=1.0秒と一般には考えられがちであるが、これは誤解である。実際には、健康的なアスリートの場合、R-R間隔は若干バラついている。R-R間隔=0.8秒という場合もあれば、1.2秒という場合もある。このバラつきは自律神経系の働きによるもので、ある程度バラついている方が健康である。逆にバラつきの程度が小さい場合は、
・オーバートレーニング状態に陥りつつある
・何らかの疾患を患っている
・トレーニングに拠る負荷に身体が対応出来ていない可能性がある
という兆候である。心拍の変動性を継続して測定/評価することで、オーバートレーニングに陥る危険性に関し有用な情報が得られる。
当たり前なことであるが、体が既に疲労している状態で負荷の高いトレーニングを行っても効果は薄いか、場合によっては逆効果をもたらすという調査結果が複数報告されている。なので、体が比較的フレッシュな状態の時に高負荷のトレーニングを行い、体が疲労している時は低負荷の回復トレーニングを行うよう計画するのが望ましい。この考え方は一般的ではあるが、問題は「疲労感を評価するのは難しい」ことである。やる気の高いアスリート(と指導者)ほど、疲労感を無視しがちである。彼らの名誉の為に言えば、疲労感は眠気というよりはむしろ「やる気の低下」という形で現れる場合が多い。そこで、心拍の変動性を継続して測定/評価していれば、身体全体の疲労を明確に/包括的に把握することが可能となる。
図1は、あるトライアスリートの心拍の変動性をTrainingPeaks方式で処理した数値(以下”HRVスコア”)をグラフ化したものである。
図1

彼の場合、長期的なHRVスコアの平均は9.0/標準偏差は1.0である。表現方法を変えると、彼のHRVスコアの大半(訳注:HRVスコアが標準正規分布に従うと仮定すれば、全体の68.27%)が8.0〜10.0の間(図の緑色の線に挟まれる範囲)に収まる。
HRVスコアが8.0〜10.0の範囲に収まらない場合=通常とは異なる場合であり、注意を払う必要が生ずる。特に、心拍の変動性が比較的短期間に大きく変化した場合(図では黄色い楕円で囲んだ部分)は特段の注意を払う必要がある。
肉体の疲労が神経系を介して表出されたのが、心拍の変動性の変化である。心拍の変動性が低下した状態では交感神経系優位であり、その際の心理状態は通常に比べ苛立っている一方、休養の必要を自覚しておらず、場合によっては”気合十分”なこともある。
また、この種の疲労は、TrainingPeaksが提供する身体能力管理グラフ(Performance Management Chart、以下PMC)上で短期的トレーニング負荷値として常に表現されるとは限らない。というのは、トレーニング自体に直接関連しないストレス源はPMCに反映されないからである。
図2

図2は、図1と同じ期間のPMCである。図1及び図2それぞれで黄色線の楕円で囲んだ部分は、同一期間である。図1で心拍の変動性が低い期間、疲労度(ピンク色の線)は低く、健康状態(黄色の線)は良好(+25〜+30)であった。図2のみからは、彼は疲労していないと判断される。しかし図1からは明らかに、彼は疲労していると判断される。実際筆者らは、図1の結果から、標準(≒一週間)より長い回復期間が必要と判断し、HRVスコアが通常の範囲内(8.0〜10.0)に安定的に収まる迄トレーニングの負荷を軽くした。このケースでは、心拍の変動性が疲労状態の先行指標として有効であったと考えられる。
筆者の経験からは、オーバートレーニング/故障の原因となるのは、偶発的な高負荷トレーニングではない。逆に、既に疲労した状態の身体に課せられる負荷がそれこそボクシングのジャブのように影響を及ぼし、最終的にオーバートレーニング/故障の発生につながる。なので、心拍の変動性に常に注意を払うことで、アスリートがオーバートレーニング/故障に陥ることが予防出来、ひいては安全/適切に必要なトレーニングを実践することが可能となる。
【心拍の変動性の”使い方”】
① まずは測定する。(理想は)TrainingPeaksと連動するアプリを用い、通常のトレーニング/日常生活を
実践している一ヶ月間の心拍の変動性を測定する。
② ①の測定データから、心拍の変動制の「正常な変動範囲」を算出する。標準偏差(=σ)を用いるのが
適切である。
③ 心拍の変動性の経時変化をグラフ化し、日々の心拍変動が②で設定した「正常な変動範囲」内に収まって
いるかどうか確認する。心拍変動が「正常な変動範囲」から逸脱する場合、その期間が短期であれば
トレーニングの負荷を軽くして様子を見、長期になりそうなら思い切って休養する。
筆者の指導者としての経験からは、心拍変動を測定/評価することで、アスリートがどの程度のトレーニング負荷を許容出来るかがかなり明確に分かる。持久力系競技の場合、長期に渡って安定/継続してトレーニングを実践することが競技力向上の鍵となるので、故障/疾病/オーバートレーニングの発生を回避するのに役立つ指標を使いこなすことも大切となる。
ということで、標記の記事をTrainingPeaksから転載します。原本はこちら。
TrainingPeaks自体は英語のサービスなので、気軽に利用するのも少々敷居が高いですが、HRVを測定すること自体はBluetoothLE対応のHRセンサー(吾輩はPolar H7センサーを利用しています)とスマホ(とアプリ)があれば簡単です。恐らくですが、R-R間隔とその標準偏差を加工して指標化したら使えるかなと思います。
暫く試行錯誤してみます。
心拍の変動性(HRV)を経時的に測定し、オーバートレーニングを回避する
Friday, November 25, 2016 / By Alan Couzens on Training Peaks
TrainingPeaksは最近、複数の心拍変動測定アプリと連携することが可能となった。この機能を活用することにより、トレーニングの負荷を新たな観点から解析することが出来る。
本稿では、心拍の変動性(Heart Rate Variability)とは心臓の拍動間隔(=R-R間隔)のバラつき具合を指す用語と定義する。例えば安静時心拍数=60拍/分である場合、R-R間隔=1.0秒と一般には考えられがちであるが、これは誤解である。実際には、健康的なアスリートの場合、R-R間隔は若干バラついている。R-R間隔=0.8秒という場合もあれば、1.2秒という場合もある。このバラつきは自律神経系の働きによるもので、ある程度バラついている方が健康である。逆にバラつきの程度が小さい場合は、
・オーバートレーニング状態に陥りつつある
・何らかの疾患を患っている
・トレーニングに拠る負荷に身体が対応出来ていない可能性がある
という兆候である。心拍の変動性を継続して測定/評価することで、オーバートレーニングに陥る危険性に関し有用な情報が得られる。
当たり前なことであるが、体が既に疲労している状態で負荷の高いトレーニングを行っても効果は薄いか、場合によっては逆効果をもたらすという調査結果が複数報告されている。なので、体が比較的フレッシュな状態の時に高負荷のトレーニングを行い、体が疲労している時は低負荷の回復トレーニングを行うよう計画するのが望ましい。この考え方は一般的ではあるが、問題は「疲労感を評価するのは難しい」ことである。やる気の高いアスリート(と指導者)ほど、疲労感を無視しがちである。彼らの名誉の為に言えば、疲労感は眠気というよりはむしろ「やる気の低下」という形で現れる場合が多い。そこで、心拍の変動性を継続して測定/評価していれば、身体全体の疲労を明確に/包括的に把握することが可能となる。
図1は、あるトライアスリートの心拍の変動性をTrainingPeaks方式で処理した数値(以下”HRVスコア”)をグラフ化したものである。
図1

彼の場合、長期的なHRVスコアの平均は9.0/標準偏差は1.0である。表現方法を変えると、彼のHRVスコアの大半(訳注:HRVスコアが標準正規分布に従うと仮定すれば、全体の68.27%)が8.0〜10.0の間(図の緑色の線に挟まれる範囲)に収まる。
HRVスコアが8.0〜10.0の範囲に収まらない場合=通常とは異なる場合であり、注意を払う必要が生ずる。特に、心拍の変動性が比較的短期間に大きく変化した場合(図では黄色い楕円で囲んだ部分)は特段の注意を払う必要がある。
肉体の疲労が神経系を介して表出されたのが、心拍の変動性の変化である。心拍の変動性が低下した状態では交感神経系優位であり、その際の心理状態は通常に比べ苛立っている一方、休養の必要を自覚しておらず、場合によっては”気合十分”なこともある。
また、この種の疲労は、TrainingPeaksが提供する身体能力管理グラフ(Performance Management Chart、以下PMC)上で短期的トレーニング負荷値として常に表現されるとは限らない。というのは、トレーニング自体に直接関連しないストレス源はPMCに反映されないからである。
図2

図2は、図1と同じ期間のPMCである。図1及び図2それぞれで黄色線の楕円で囲んだ部分は、同一期間である。図1で心拍の変動性が低い期間、疲労度(ピンク色の線)は低く、健康状態(黄色の線)は良好(+25〜+30)であった。図2のみからは、彼は疲労していないと判断される。しかし図1からは明らかに、彼は疲労していると判断される。実際筆者らは、図1の結果から、標準(≒一週間)より長い回復期間が必要と判断し、HRVスコアが通常の範囲内(8.0〜10.0)に安定的に収まる迄トレーニングの負荷を軽くした。このケースでは、心拍の変動性が疲労状態の先行指標として有効であったと考えられる。
筆者の経験からは、オーバートレーニング/故障の原因となるのは、偶発的な高負荷トレーニングではない。逆に、既に疲労した状態の身体に課せられる負荷がそれこそボクシングのジャブのように影響を及ぼし、最終的にオーバートレーニング/故障の発生につながる。なので、心拍の変動性に常に注意を払うことで、アスリートがオーバートレーニング/故障に陥ることが予防出来、ひいては安全/適切に必要なトレーニングを実践することが可能となる。
【心拍の変動性の”使い方”】
① まずは測定する。(理想は)TrainingPeaksと連動するアプリを用い、通常のトレーニング/日常生活を
実践している一ヶ月間の心拍の変動性を測定する。
② ①の測定データから、心拍の変動制の「正常な変動範囲」を算出する。標準偏差(=σ)を用いるのが
適切である。
③ 心拍の変動性の経時変化をグラフ化し、日々の心拍変動が②で設定した「正常な変動範囲」内に収まって
いるかどうか確認する。心拍変動が「正常な変動範囲」から逸脱する場合、その期間が短期であれば
トレーニングの負荷を軽くして様子を見、長期になりそうなら思い切って休養する。
筆者の指導者としての経験からは、心拍変動を測定/評価することで、アスリートがどの程度のトレーニング負荷を許容出来るかがかなり明確に分かる。持久力系競技の場合、長期に渡って安定/継続してトレーニングを実践することが競技力向上の鍵となるので、故障/疾病/オーバートレーニングの発生を回避するのに役立つ指標を使いこなすことも大切となる。
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