言葉の乱れが何かと話題になる今日この頃、先日渋谷のセガフレードで「やばい」会話を耳にしてしまいました。少々の「やばい」くらいでは動じなかった私ですが、「(このケーキ)まじやばくなくね?」と言われると(って私が言われたわけではないのですが)いったいそのケーキがやばいのかやばくないのか頭がこんがらがってきました。ナウいギャル(死語)が、「やばい」を多用している事を理解はしていたのですが最近はあまりにも複雑すぎる。10年近く前に映画「バブルへGO」でヒロスエがすでに言っていましたのでこの現象はもう10年くらいは経っているのでしょう。そんな言葉をはなから全否定しているわけではありません。いわゆる若者言葉の中でも、私が普通に口にしてしまうものもあります。たとえば「超(チョー)」とか「微妙(ビミョー)」とか。ただこれは言い訳させていただくと、本来の意味からはあまり逸脱していないと言うこと。特に「超」はSuperとかAboveでしょ。いまや市民権を得ていると言ってもいい。ただ私の歳になると美味しい料理を食べて「チョー美味い」と言うかもしれないけれど(言わないか・・)「やべー」とはやはり言えないのであります。ましてや「やばくなくね?」とは。
なぜ、若者がこのような言葉を連発するのか、軽く検証してみたいと思います。そこでまずは「やばい」の語源から。
もとは的屋や盗人などが捕まりそうで危ないという意味で用いた用語が一般化したもの。「やば」は「厄場(やば)」で、牢屋や看守のことを示す隠語。江戸時代には、法に触れたり、危ないといった意味で「やばなことをしでかす」と使用されていた。のちに、「やば」が形容詞化して、「やばい」になった。 (由来語源辞典から引用)
やばいとは「危ない」「悪事がみつかりそう」「身の危険が迫っている」など不都合な状況を意味する形容詞や感嘆詞として、江戸時代から盗人や的屋の間で使われた言葉である。その後、やばいは戦後のヤミ市などで一般にも広がり、同様の意味で使われる。1980年代に入ると若者の間で「怪しい」「格好悪い」といった意味でも使われるようになるが、この段階ではまだ否定的な意味でしか使用されていない。(日本語俗語辞書より引用)
そうなんです。この辺までなんですわたしの「やばい」経験は。いつから肯定的な意味で使われるようになったのか。以下のような文言を見つけました。
これが1990年代に入ると「凄い」「のめり込みそうなくらい魅力的」といった肯定的な意味でも使われるようになる。(日本語俗語辞書より引用)
なるほどですね(!??)このあたりから今の「やばい」様相を呈してきたようです。そして現在においてはこの言葉は肯定的な意味合いで使われる事の方が多くなっているように感じます。ある調査では高校生の85%はこの言葉を肯定的な意味でも使うとの結果が出ています。これで現代の「やばい」の本質はなんとなくですが分かってきました。
問題は「やばくなくね」の後半の「なくね」の部分。真意としての「これはやばい」だけですむはずのところ「やばいのではないか」もしくは「やばくないのではないか」に言い換えられていること。これは結局のところ曖昧さを残して自らを言い切っていない例の一種なのかと思います。自分で完全に断定せず、他者に最終判断の一部を委ねている状態とも言えるのかもしれません。たとえば「~みたいな」、「~なんか」「~とか」の派生系なのかと。と考えていたら以下の文言を発見。
『日本人はイエス・ノーをはっきり言わぬ民族と言われ続けて久しい。若者の間では、この傾向はもっと顕著に見える。言い回しの節々に、相手との対立を避けたがる表現が目立つ。その代表格がイエスの代わりに言う「そうですねぇ」とノーの代わりの「~って言うか」。さらに、俗に「とか弁」と言われる「何々とか」言葉と「~みたいな」「ナンカ」を乱用する。例えば 「親ナンカはそんなアルバイトやめろトカ言う」(でも、仕事には満足してるんだろ?)「そうですねぇ、って言うか、やっぱり時給がいいからやってる部分が大きい。でもそろそろやめようかなーみたいな」。』 (毎日新聞8月25日付朝刊より)
要は「やばくなくね」は、「やばい」の現代風進化系と曖昧さ表現のミックス体だったのです。要は「やばい?とか?」「やばい!みたいな?」みたいなもののようなのです(ってだんだん何言ってるのか分からなくなってきた)。まぁいずれにしてもこの事柄をもってして今の日本語は乱れきっているなどと大上段から申し述べるつもりはありません。ネット独特の用語もあり若い世代がこの手の言葉を「仲間内」で使うことは、ある意味そのコミュニティーの方言みたいなものなのかと思います。すごく美味しいケーキを食べたとき「これ、やっベー!」ってみんなが言っているのに「このふんわりした口溶けの後にしっかりとしたレモンの風味が追いかけてきてスーッと鼻に抜けていく感触と、果実の質感が十分に味わえる幻の舌触りが最高だね」って言ったら「てめーは食リポコメント研究家か!」と突っ込まれるのがオチです。
彼らが仲間内以外の社会の場にいるときに、ちゃんとした言葉と使い分けられるのかが大事なのかと思います。公の場にいるのにそのような言葉遣いをしていたとしたら、そんな時こそ知識をひけらかすのではなくさらりと教えて差し上げるのが大人としての行動かと。スマートな大人になりたいものです。
←次回は気が向いたら「させていただくに対する一考察」にさせていただきます
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