タザ記

目指せ枕草子。

オリジナル小説 冬烈火 第10話

2021-01-31 23:53:00 | 小説

〜あらすじ〜
ひょんなことから異世界へと迷い込んだ「畑崎(はたけざき)」とその部活仲間の「華日(はなか)」、「鈴望(れみ)」、「建樹(けんき)」。
その世界では「幸界(こうかい)」を目指すレース「冬烈火」が行われる。この冬烈火への参加を決意した4人は、参加者だけに与えられる特殊な力「戒(かい)」を駆使して1位を狙う。

途中、森の中で魔物と遭遇した4人。力を合わせて強烈な攻撃を叩き込むが、魔物を倒し切ることができず劣勢に立たされる。そんな中、今まで身を潜めていた畑崎が謎の行動に出る…。

「一体どうなってるんだ…?」建樹が思わず呟く。
「お前は俺に対して敵意を向けていない。何か理由があるんだろ?教えてくれ。」
俺は魔物にさらに問いかけた。
「ウグッ ガルッ…。」魔物は俺に答えるように吠えた。訳ではなかった。俺には何故かこの魔物が伝えようとしている事が理解できたのだ。

ー俺には沢山仲間がいた。みんな俺のことを大事にしてくれる奴ばかりだった。
俺も楽しかった。でも、何か心の中に引っかかるものがいつも残っていた。
それはー強さの違いからくる劣等感だった。周りの仲間達にはできることも、俺にはできなかった。仲間がどんどん成果をあげるのに、俺は全く結果も出せなかった。
仲間といるのが辛くなることはなかった。でも、みんなできるのに俺にだけできない悔しさはいつもあった。俺だってあんな風になりたいって思った。
その感情はいつしか憎しみに変わった。俺はとうとう仲間達と別れ1人孤独に生きることを選んだ。その方が楽だと思ったんだ。

だから、俺はお前を救おうとした。お前は他の3人の仲間と比べれば能力が低い。俺と同じ場所に立っているんだ。だから、お前には敵意を見せなかった。


魔物はこんな風に俺に伝えた。どうやら、3人はこの魔物の言葉は理解できないようだ。ただ呆然としていた。

さあ、お前も俺と同じように自由になろう。仲間なんて捨てて、劣等感など味わうことなく自由に生きるのだ!
魔物はさらにこう付け加えた。俺は少しの間俯いたままでいた。


「断る。俺は仲間と共に生きる。お前のようにはならない。」俺は返した。
「仲間の方が強いからそれが嫌になることも確かにある。でも、そこで逃げだしたら負けだ。自分より優れてるってことは、その分だけどっかで頑張ってるってことだろ!
だから俺だって頑張ろうって思う。ついていこうって思う。そうやってお互いを励まし合うのが仲間じゃないのか!?お前はそうしようとしたのか?仲間の姿をみて、ついていこうとしたのか?何とか追いつこうとがんばったのか?そんなこともせずに仲間を恨むなんてのは間違いだ。」
俺は必死になって訴えた。魔物は下を向いて黙っている。と、急に魔物の目の色は凶暴な赤い色に変わり、俺に襲いかかってきた。
「黙れ!お前も俺の敵だ!俺の気持ちを分かってくれるやつなんていねぇ!」
魔物の攻撃を俺は槍で必死に受け止める。
「そんなことはない!きっと分かってくれる仲間がいたはずだ!」俺は叫んだ。その間にも魔物は襲いかかってくる。
「そんな奴はいない!だから俺はこんな風になってるんだ!」
「いい加減にしろこの野郎!」
俺は魔物に槍を振るった。当たった。
俺はそこではじめて、まともに自分が戦っていることに気がついた。魔物の強烈な攻撃を受け止め、反撃を喰らわせていた。
「お前の気持ちも理解できるが、仲間はそんな扱い方をするのもじゃない。」
「まだ言うか!」魔物はさらに飛びかかってきた。俺は自分でも驚く程のスピードでその攻撃をかわした。
「天戒(てんかい) 天つ慈悲(あまつじひ)」
俺は静かに言った。
「辛かったんだな。おまえも。」
俺は槍を投げた。青い輝きを持ったその槍は鋭く、優しく魔物の胸を貫いた。
「ガウッ…」魔物はその場に倒れこんだ。
俺はそこに寄り添った。
「おやすみなさい。」俺は静かに言った。
魔物の目には涙があった。
続く…。

ご覧いただきありがとうございました😁
めっちゃ長くなってしまいました。投稿時間も遅くなった…。
疲れたので寝ます。おやすみなさい😇


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