約3週間ぶりのホッとくつろげる朝です。
はぁ~
コトは3週間前の木曜日、突然の電話で始まったのでした。全く唐突に、緊急で日本語を教えないか、という話が来たのです。全くゼロの状態から2週間でサバイバルレベルまで持っていく、というので、「とても無理」と一度はお断りしたのですが、その後何故か断り切れない状況になり、もう心臓が縮み上がる思いで教科書やら参考書やら資料一式を地下室から引っ張り出し、日本にいた頃の先輩や同僚(笑)にも電話やメールで助けを求め、必死の日々が始まりました。
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それからの2週間は、寝ても覚めても日本語のことで頭がいっぱい、夢の中にも教案が追いかけてきました。これホント。眠れなかったですよ。その段階段階で習う文型や新しい単語、表現をどうやって現実の生活で使えるようにしていくか、がカギになるので、とにかく常に頭の中に例文が浮かんでは打ち消され、書き留めては吟味して、という状態。
それとは別に文型や文法の導入の仕方、スムースにドリルへ持っていく流れの作り方も常に頭の中をぐるぐると渦巻いていました。すっかり錆び付いていた頭の中、どの課でどんな単語や文型が出てくるのか、この文型がその後何課でどのように発展していくのか、そんなことも見事に忘れていました。
しかも、日本で使っていた教科書と今回指定された教科書は違うもの…。文法が出てくる順番も違うし、基本になる助詞の使い方もちょっと違う。不安でバクハツしそうでした。
以前の教科書と今回の教科書を照らし合わせて、必要な項目を整理するだけでも軽く2日、その後各課の教案を組み立て、更に2週間で、ある程度動詞の活用ができるところまで持って行く(「…と一通りの応用が効くわよ」と日本の先輩にアドバイスを受けて「なるほど!」と思ったのです)となったら、本当に必要なところと、時間をかけずスキップしていくところをよく把握しておかなくてはいけない。時間が飛ぶように過ぎていきます。
当然、準備に余裕ができるはずもなく、初日を迎えてからはまさに自転車操業でした。その日と翌日分の教案だけはかろうじて作り、翌々日からの分は授業が終わって、その日の様子を見ながら組み立てていく…。立ち止まる余裕が全くない、文字通りの自転車操業の日々が始まったのでした。
そして緊張の初日。現れた生徒さんは、今月末から日本へ行くと言うのに、本当に何の誇張もなく日本語の知識がゼロの状態。
アメリカ人のお約束 「コニチワ!」 はどうした!?
「オハイオ!」(オハヨウのつもり) くらいは知ってるでしょう、普通(涙)。
…と一瞬泣きたくなったのですが…しかし…逆に考えればこれが強みにもなるのです。まっさらな状態から余計な情報なしでキチンと積み上げていける、ということだから。実際、この生徒さんの場合、乾いた砂が水を吸うようにものすごい勢いで知識を吸収し始めたので私の方が慌てるくらいでした。
1日目は、日本へ行く事情や、日本についての基礎知識、日本で行きたい場所や楽しみにしていることを英語でおしゃべりした後、教科書を渡して授業に入り、日本語の発音の特徴や文字の種類、五十音のしくみ、自己紹介や挨拶ことば、教室ことばや、「はい/いいえ」の使い方など、そして1~20の数字を教えて、電話番号を読み合う練習をしました。
翌日、なんと生徒さんは前日に教えたことをほぼ全部きちんと覚えて来たのです。自分でフラッシュカードを作って勉強したと言います。教科書の予習・復習も完璧!学生時代以来の勉強がとてもエキサイティングだと言ってくれるので教える側の意欲が一気に高まってしまいました。
前日のレビューをしつつ、大きい数字や時間の表現、カレンダー用語などを勉強しました。数字は4と7と9が要注意です。場合によって、よん/し なな/しち きゅう/く、と読み方が変わるので。そして百の単位になると今度は「さんびゃく」「ろっぴゃく」「はっぴゃく」とまた例外が出てきます。千の単位は「さんぜん」と「はっせん」が例外。数字をチャートにして例外のところを色分けで強調してあげるとわかりやすい。
時間の表現も1時、2時、3時、4時…4時だけ「よんじ」じゃないのですよね。それに5,15,25…と5のつく数字は「ふん」だけど10、20、30…と10の単位は「ぷん」 しかも、1~10分までの間の「ふん」と「ぷん」の読み分けは大変に複雑です。2週間のサバイバルでここまで完璧にするのは無理なのでノートにチャートを書いて、余力があったら自分で練習できるようにします。
この日は、基本的な場所の名前(病院、銀行、スーパー、デパート、レストランなど)も導入して、「病院は何時から何時までですか?」「午前9時から午後5時までです。」という会話を練習、そして自分に当てはめて「仕事は○時から○時までです。」「今日、日本語のクラスは○時から○時までです」といえるところまで練習しました。ここで間違っても、教える側が「今日の○時から○時までが日本語のクラスですね。」なぁんて、習っていない文型で言ってはいけません。慣れるまではこういうところが結構大変なんですよー。
その翌日は、更に数字の練習や、分数、小数も導入、丁寧にしつこく(笑)ドリルを繰り返していきます。疲れてきたあたりで「箸の使い方を練習しましょうか」と喜ばせておいて、箸でマシュマロを箱から箱にうつしながら、「ひとつ、ふたつ…」と数える練習。ここで、このひとつ、ふたつ、みっつ…の数え方でカレンダーの「ついたち、ふつか、みっか…」を思い出せたら大成功、うまくいきました。そうそう、ちゃんと共通点があるのですよー。
このあたりから、生徒さんは日本語を「なんてロジカルな言語なんだろう」と言うようになり(いや、実はこの段階ではそう思えるようにうまいこと誘導されているだけなんだけど)、ひとつひとつの手がかりが頭の中で繋がるたびに感心していました。教える方も嬉しくてたまりません。その後も授業は順調に進み、新しい表現が入るたびに否定形や過去形、助数詞(一本、一枚、ひとつ、など)を含んだ数の表現をドリルしながらレストランの注文会話の練習もしました。
一通りの基本単語や表現が出てきた後でようやく動詞の練習に入ります。いきなり動詞を入れてもそれを使いこなすだけの語彙が入っていないと練習が身に付かないのです。でもここまできれいに文型が入っていれば大丈夫。
初級最初の山場(?)
「スミスさんは2005年の8月にアメリカから日本に(へ)来ました」
の文型。この一文のなかに助詞が5つも入ってます!しかも、[去年/先週/昨日]のように、時を数字で限定しない場合助詞の[に]は入りません。これを間違いなく使えるようにするのは大変!と思っていたのですが、お見事!よく仕組みを理解してくれて応用も効いてきました。すごい!
ところがここでやはり初級の、いや日本語教育の山場、【[は]と[が]の違い」】が出てくるんです。
「誰が田中さんのうちに来ましたか?」
ね?今までの疑問文は「これ[は]何ですか?」だったのです。
この段階ではあまり引っかからずにサラッと通り過ぎて欲しかったのですが、さすがにきちんと勉強しているだけあって、突っ込まれてしまいました。
仕方なく(笑)、一応こういう違いがあるのだけど…と、念のために準備しておいたたくさんの例文を紹介し、英語の説明文も何種類か見せたのですが、この段階でこれが完璧に理解出来る人がいたら大天才です。というか、あり得ません。とにかく今は慣れて!と先へ進みました。そういうことも含めて(今は突っ込んじゃいかんと)よく理解してくれる生徒さんで助かりました~。
それにしても、
「病院は9時[から]6時[まで]です。」
なのに、どうして
「スミスさんはカナダ[から]日本[まで]来ました。」
じゃないの?
というような「よ、よ、よ、よく気がつきました(ひゃぁ~、現段階でそこまで気付かないで欲しかった!)」ということにもよく気付いてくれたので本当に私にも良い勉強になりました。そうそう、切符売り場では、「名古屋[から]東京[まで]の切符」を買うのよねぇ、日本語って。今度からここはもうちょっとうまく(気付かれないように)流さなくては。(つまり「~に来ました」の導入があまりうまくいっていなかったということかな)
下の記事「サバイバルコース2週間を終えて(後編)」に続く
TAMAさん、お疲れ様でした。日本語のネイティブスピーカーのはずの私、日本語がそんなに複雑に分類できるとは脱帽です。
それにしても一向に、上達しない私の英語力って?!まぁ一番難しい言語を習得してるんだもん。
それで十分?!
素晴らしい生徒さんばかり これも凄~い。
やっぱり いい先生には いい生徒が
真剣な先生には 真剣な生徒が・・・
って事ですよね。。。
クッキーの視線に気付いてくれてありがとう。
そう、ネイティブスピーカーだからこそ気付かないんですよ。
#マグネットまだ発送してません。ごめんなさいねー。気長にお待ち下さい。
わーい、お久しぶりでーす!
そうですね、日本語は複雑で難しいです。でもでもでも、たぶんどの言語も同じく複雑で難しいんじゃないのかなあと思いますよ。だってそうじゃなかったら10年以上英語を勉強し続けて(いるはず!)尚、日々苦しんでいる私の立場が…(涙)。
ち、ちがいますよ、たまたまです。偶然良い生徒さんが当たっただけです~。いつもこういうわけにはいかないと思いますよん。
あ、でも日本でも生徒さんには比較的恵まれていたような気がする(笑)。すっぽかされたりすることもたまにはあったんですけどね。ああ、悲しいボランティア。
二週間ですよ。少なくとも6年間英語を学校で習う日本人のレベルと比べたらきっと100分の1くらいの知識です。日本人は本当は英語が話せないはずはないのです。話し方を教わっていないだけで。
私も今回は本当にびっくりでした。もっとも、日本で本格的にちゃんとした日本語教師がサバイバル集中コースをしたらもっとずっとしっかりと進むらしいので、人間ってすごいものだなーと思います。
でも並大抵の努力ではないことは確かです。