「洋梨の肖像」15×15cm
「テンペラとは?」
西欧絵画古典技法と私の技法について
この1ページを読むだけで、絵画技法の根本が全てわかる!
全ての絵の具の原料は、顔料と呼ばれる色の粉です。
その顔料を油で溶いたものが、油絵具、卵で溶いたものが、テンペラ絵の具です。
ルネサンス時代に油絵具が発明されましたが、それまでは、テンペラ絵の具が主流でした。
ボッティチェリの「春」や「ヴィーナスの誕生」はテンペラ絵の具による作品です。
ルネサンス時代の作品で油彩となっているものも、実はテンペラを併用している場合もある様です。
テンペラは不透明で速乾性、油絵具は透明で乾きが遅い特徴があり、
併用することによって、 より自由な表現が可能になります。
当然、当時の多くの画家が併用したと思われます。
当時の油絵具は自作、またはお弟子さんが師匠独自の調合で作ったわけですから、
今の油絵具と違って、乾きの比較的早い、緻密な描写も可能な調合であったと思われます。
レオナルド・ダ・ヴィンチは油彩を好んだようですね。
19世紀の産業革命により、油絵具は工業生産されるようになりました。
テンペラ絵の具は今でも画家が毎回自分で作ります。
私は白のみテンペラ絵の具を使用し、着色は市販の油絵の具を使用しています。
油絵具の油や、テンペラ絵の具の卵は、画面への接着の役割をしていて、転色剤と呼ばれます。
水彩絵の具の転色剤はアラビアゴム、アクリル絵の具の転色剤はアクリル樹脂です。
日本画では岩絵の具と言って日本独自の色の粉を使っています。
希少で高価なものも多く、転色剤は膠(にかわ)です。
西洋の顔料で特に高価だったのはラピスラズリー(青)で、
当時、金より高価でした。(現在もですよね? )
フレスコ画は壁画に使われるため、転色剤を使わずに描きます。
それは漆喰の壁が漆喰の機能を失わないため、また剥離を防ぐためです。
漆喰は湿度が高いと湿度を吸い、湿度が低いと湿度を放出します。
漆喰を部分的に塗り、水で溶いた顔料で、漆喰部分が乾かないうちに描き、
乾くと漆喰と顔料が一体になります。
部分的に計画的に描いていきます。
最終的にテンペラで加筆することもあったようです。
レオナルド・ダ・ヴィンチはフレスコ画の表現力に満足できず(たぶん)、
湿気の多い場所の壁面に、油絵具で描いてしまったため、
「最期の晩餐」は完成して10年以内に剥離が始まったとか・・・。
修復を重ねて現在に至っています。
私が、なぜテンペラと油彩を使用し、
下地から古典技法に近い方法を用いているかというと、
その伝統的な技法こそが、私が描きたいものを描きたいように描ける唯一の技法であり、
実際に500年の時を超える堅牢さを持っているからです。
鎌倉伊織 URL http://www.kamakura-iori.net
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