NGS後の世界

NGSが普及したあとの世界がどうなるのか、診断業界の変化を中心として情報発信をしていきたいと考えています。

アメリカ COVID19で血漿療法を推進

2020-08-04 20:11:14 | 日記

血漿療法に関して、以下の記事を書きました。

https://blog.goo.ne.jp/kevery/e/3cb44d3fe7734a7bb4270082adbe557e

この血漿療法に関し、米国はさらなる投資をして、COVID19の治療法を確立したいと考えているようです。

Washington Postの記事を紹介します。

https://www.washingtonpost.com/opinions/2020/08/03/4-former-fda-commissioners-blood-plasma-might-be-covid-19-treatment-we-need/#click=https://t.co/Q4AouUxD8w

 

先週、トランプ大統領は、COVID19から回復した患者を訪問し、献血をお願いしたとのことです。この献血を用いて、COVID19に有効性をもつ抗体を精製し、重症患者に対する有効な治療法を確立していくと記事は報告しています。

この血漿療法の歴史は古く、1918のインフルエンザのパンデミックや、SARS, エボラでも治療法の開発が試みられました。"アメリカは血漿を用いた製剤を世界に供給している、グローバルサプライヤー。そして、今は、コロナウイルスの供給に関してもトップを走っている。もし、血漿療法が成功すれば、コロナパンデミックのリスクを抑えることができる”

 

ちょっと、このコメントはジョークなのか、真面目なのかわかりませんが、本当にそうですね。日本では

やはり患者数が少ないので血漿療法の開発には不向きと思います。

 

一方で、臨床適応までにはいろいろとハードルが多いようで、今日・明日という話ではないようです。

ワクチンもそうですが、効果的な標準治療が確立するだけで、人々の恐怖や経済活動の影響もぐっと減ると考えられます。

 

ワクチン、予防として検査だけでなく、いろいろな取り組みをし続けるアメリカの懐は深いですね。


COVID19: 徹底的な検査により大学を再開する

2020-08-03 19:55:51 | 日記

攻めのPCR。言葉はわかりますが、どのような検査を、どのような対象に、どの程度実施するか、具体的にはよくわからない言葉です。

検査のスペックを明確にし、どのような頻度で検査を実施すれば大学の構内(キャンパス)にて

感染を制御できるのか、定量的な論文がゲノムウエブで取り上げられておりましたので、紹介します。

 

https://www.genomeweb.com/infectious-disease/frequent-covid-19-testing-may-enable-campus-reopenings-logistics-are-challenging?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Fri%20PM%202020-07-31&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.XyeS0IozbIV
 

このブログでは、①防疫に求められる検査の仕様(性能)は誰にも分らない、

②マーケットが求めるなら、良い悪いではなく、その目的にあわせたキットを供給することが重要、

という立場をとっております。その結果、検査用いて、防疫するというコンセプトをが確立されるのか、

やっぱり、「無意味だったね」という風になるのか、注意深く、紹介したいと

考えています。私が知る限り、防疫に求めらる検査のスペックを具体的に記した初めての記事となります。

シミュレーションの仮定:

・5000人の生徒、最初に10人の陽性患者、80日間の学期(セメスター)を想定。

・検査の感度は7割、特異度は90%, 98%, 99.7%の3つのケースを想定

・検査頻度は毎日、1日おき、3日おき、一週間に一回を想定。

・検査陽性者はすみやかに隔離

・再生産数は2.5(ちょっと大きいかなというのが感想です)、毎週10人他で感染してくる

 

結果:

・70%の感度、98%の特異度で、毎日検査した場合、抑制の効果により162人の感染者を生み出す。

・一日おきの検査の場合、243人の感染者を生み出す。

・1週間に一回の場合は1000人以上

・コストに関しては、一日おき$910、一日おき $470, 一週間に一回で$129

 

結論としては、一日おきの検査であれば感染を十分にコントロールすることができるとしてますが、検査のデリバリー

やコストの観点から現実的ではないとしております。

 

今後、どのようにすすむのでしょうか。

 


家庭用の採血器具スタートアップ17 M USD(18億円)の増資

2020-07-30 19:43:27 | 日記

米国にシアトルにある、家庭用採血キットの販売をしているスタートアップ、

Tasso が18億円の増資に成功しました。今までの総計を合わせると、38.6 M USD(40億円)とのことです。

https://www.finsmes.com/2020/07/tasso-raises-17m-in-series-a-financing.html

普通、在宅採血キットというと指先からの血をとることが普通ですが、これは2の腕から採血するタイプとなります。

(Tasso社のホームページより引用)

 

穿刺部に緩やかな陰圧がかかり、専用のチューブに採血されるとのことです。

新型コロナウイルスの影響で、家庭での検査需要も高まっていることも紹介しました。

 

https://www.finsmes.com/2020/07/tasso-raises-17m-in-series-a-financing.html

(これはコロナの採取で血液ではありません)

 

対象は、治験の薬剤効果モニタリング、がん診断、慢性疾患モニタリングと

幅広い血液検査の需要をカバーしたいとのことです。

 

このようなメーカーが30億円も資金を獲得できるというのも夢がありますね。

今後の動きに注目です。

 

 

 


インフルエンザワクチンはアルツハイマー病の発症リスクを低下させる

2020-07-29 20:12:09 | 日記

今日は、コロナを離れて別の話題です。

NPRのニュースから、インフルエンザワクチンはアルツハイマー病の発症リスクを3割減少させるというニュースを紹介します。

https://www.npr.org/sections/health-shots/2020/07/27/894731147/flu-shot-and-pneumonia-vaccine-might-reduce-alzheimers-risk-research-shows
 
 
 インフルエンザの予防接種はアルツハイマー病をなりやすくするという都市伝説がありました(あったそうです)。

これは、実は逆で、インフルエンザの予防接種はアルツハイマー病の予防になるのではないかという報告です。

Alzheimer's Association International Conference(AAIC)というかなりしっかりした学会で大きく取り上げられたニュースなので、サイエンスのバックグランドはかなりしっかりした報告なのだと思います。

以下に、要点を記します。

・病院の記録(メディカルレコード)から、9000人を抽出し調べると、予防接種を受けた人のほうが優位にアルツハイマーになっていない。

・アルツハイマーに関連するパラメーター(糖尿病、肥満など)を調整してもなおかつこの優位性は変わらない。

・予防接種の接種回数が増えれば、発症しにくくなる傾向がみられた。

・他の研究では、肺炎のワクチンも同様の効果をもたらす。

 

これらが分かったこととなります。一方で、この事実に関してどのように解釈するか、まだまだ時間をようするようです。

・従来は、脳内の炎症反応がアルツハイマーのリスクと考えられていた。予防接種は炎症反応を起こすので発症を促進すると考えられていた。

・予防効果の一つの解釈として、インフルエンザも肺炎も脳にダメージを与える。これら疾患を予防することがアルツハマー病の要望にもつながっているのではないか?

・免疫機能が低下することで、細菌・ウイルスが脳に侵入しやすくする。この免疫機構をワクチンで活性化することが、アルツハイマー病の予防に役立っているのではないか?

 現在は、他のワクチンにも予防効果があるか、検討されているとのことです。

 

感想です。AAICで大きく取り上げられているので、統計的な観点や、サイエンスの観点からは事実なのだろうと思います。インフルエンザにもかかりたくないし、ついでにアルツハイマーの予防につながるなら、まー、毎年、うけてもいいかなと思ってしまいます。

 

アルツハイマー病の原因が細菌・ウイルスを原因としているのではないか?というのもこの分野で根強く支持されている一つの仮説です。もし、アルツハイマー病・細菌ウイルス説が正しいとすると、従来の疾患概念が大きく変わるので、大変に興味深いです。

 

欧米に胃がんは少なく、日本・アジアで多いというのも長らく食生活や民族の違いではないかと考えられてきました。

しかし、ピロリ菌という感染症(風土病)で説明できるのではないか?という仮説に対し、大きなショックを受けたの覚えています(そしてそれは正しかった)。

アルツハイマー病も感染症の文脈で語れたら、大きなブレイクスルーです。本当かどうか知りませんが。


下水を使ったコロナの疫学調査

2020-07-28 19:42:06 | 日記

人間の便に含まれるコロナウイルスを用いて町のコロナウイルスの流行状況を

把握しようという取り組みです。ゲノムウエブの記事で特集されていたので紹介します。

https://www.genomeweb.com/pcr/coronavirus-pandemic-jumpstarts-wastewater-based-epidemiology?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Mon%20AM%202020-07-27&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.Xx9e2NIzbIV
 

下水を使ったコロナの疫学調査のコンセプトはシンプルです。感染期の患者の便にはコロナウイルスが含まれているので、下水に含まれるウイルス量を調べれば、町ごとの流行状況が正確に把握できるのではないか?ということです。

このコンセプトはコロナ以前にもあり、研究段階ではありますが、以下の取り組みが行われていました。

・ポリオや肝炎の流行状況を確認するため、2001により取り組みが始まっている。

・麻薬の蔓延を調べる手段として。コカインの分解産物を調べる試みがイタリアで、2005に行われた。

・このコンセプトのもと、オピオイドの蔓延状況を調べるため、アメリカでも試みられた。

 

このような背景のもと、新型コロナのモニタリングにも下水検査を用いることができないかと、現在検討が行われています。コンセプトはシンプルでも、実現するためには様々な困難があるようです。

記事ではアリゾナのチームの取りくみとそのチームメンバーである、Rolfさんのコメントを紹介しています。

・18万5千人規模の街を対象にコンセプトを検証している。全米に適応できれば、疫学調査に費やす10億ドル(1000億円)を削減できる見込みがある。

・大都市の疫学調査を短時間で(リアルタイム)、低コストで実施するのには画期的な方法。

・下水に多くウイルスがいるならば、検出すること自体、大きな問題はない。

・困難なポイントはとプロトコルの測定の標準化である。

・下水の温度は、コロナウイルスの分解にどのような影響を与えるか?ウイルスRNAの分解や検出に影響与える因子は?などを制御することが大変に困難。

 

測定自体は臨床検査で用いられるPCRが広く使われているとのことです。また、濃縮工程には負電荷のメンブレンを用いて収集しているようです。やっぱり、サーベイランスとして使うためには、外部因子をいかにコントロールするかが重要となるようです。また、アメリカはどうか知りませんが日本であれば雨が降れば下水に雨水が混入し、ウイルス濃度は変わってしまいます。

 

いろいろと困難はありそうですが、サーベイランスに求められる精度もよくわからりません。感染爆発はべき乗で起こる現象なので、もしかしたら擾乱要因なども内部コントロール(この場合では便に含まれる菌のDNA総量などになるのでしょうか、、、)を設定したらよいのかもしれません。

 

いろいろな方法でコロナと戦うのは重要なことと思います。