NGS後の世界

NGSが普及したあとの世界がどうなるのか、診断業界の変化を中心として情報発信をしていきたいと考えています。

家庭用の採血器具スタートアップ17 M USD(18億円)の増資

2020-07-30 19:43:27 | 日記

米国にシアトルにある、家庭用採血キットの販売をしているスタートアップ、

Tasso が18億円の増資に成功しました。今までの総計を合わせると、38.6 M USD(40億円)とのことです。

https://www.finsmes.com/2020/07/tasso-raises-17m-in-series-a-financing.html

普通、在宅採血キットというと指先からの血をとることが普通ですが、これは2の腕から採血するタイプとなります。

(Tasso社のホームページより引用)

 

穿刺部に緩やかな陰圧がかかり、専用のチューブに採血されるとのことです。

新型コロナウイルスの影響で、家庭での検査需要も高まっていることも紹介しました。

 

https://www.finsmes.com/2020/07/tasso-raises-17m-in-series-a-financing.html

(これはコロナの採取で血液ではありません)

 

対象は、治験の薬剤効果モニタリング、がん診断、慢性疾患モニタリングと

幅広い血液検査の需要をカバーしたいとのことです。

 

このようなメーカーが30億円も資金を獲得できるというのも夢がありますね。

今後の動きに注目です。

 

 

 


インフルエンザワクチンはアルツハイマー病の発症リスクを低下させる

2020-07-29 20:12:09 | 日記

今日は、コロナを離れて別の話題です。

NPRのニュースから、インフルエンザワクチンはアルツハイマー病の発症リスクを3割減少させるというニュースを紹介します。

https://www.npr.org/sections/health-shots/2020/07/27/894731147/flu-shot-and-pneumonia-vaccine-might-reduce-alzheimers-risk-research-shows
 
 
 インフルエンザの予防接種はアルツハイマー病をなりやすくするという都市伝説がありました(あったそうです)。

これは、実は逆で、インフルエンザの予防接種はアルツハイマー病の予防になるのではないかという報告です。

Alzheimer's Association International Conference(AAIC)というかなりしっかりした学会で大きく取り上げられたニュースなので、サイエンスのバックグランドはかなりしっかりした報告なのだと思います。

以下に、要点を記します。

・病院の記録(メディカルレコード)から、9000人を抽出し調べると、予防接種を受けた人のほうが優位にアルツハイマーになっていない。

・アルツハイマーに関連するパラメーター(糖尿病、肥満など)を調整してもなおかつこの優位性は変わらない。

・予防接種の接種回数が増えれば、発症しにくくなる傾向がみられた。

・他の研究では、肺炎のワクチンも同様の効果をもたらす。

 

これらが分かったこととなります。一方で、この事実に関してどのように解釈するか、まだまだ時間をようするようです。

・従来は、脳内の炎症反応がアルツハイマーのリスクと考えられていた。予防接種は炎症反応を起こすので発症を促進すると考えられていた。

・予防効果の一つの解釈として、インフルエンザも肺炎も脳にダメージを与える。これら疾患を予防することがアルツハマー病の要望にもつながっているのではないか?

・免疫機能が低下することで、細菌・ウイルスが脳に侵入しやすくする。この免疫機構をワクチンで活性化することが、アルツハイマー病の予防に役立っているのではないか?

 現在は、他のワクチンにも予防効果があるか、検討されているとのことです。

 

感想です。AAICで大きく取り上げられているので、統計的な観点や、サイエンスの観点からは事実なのだろうと思います。インフルエンザにもかかりたくないし、ついでにアルツハイマーの予防につながるなら、まー、毎年、うけてもいいかなと思ってしまいます。

 

アルツハイマー病の原因が細菌・ウイルスを原因としているのではないか?というのもこの分野で根強く支持されている一つの仮説です。もし、アルツハイマー病・細菌ウイルス説が正しいとすると、従来の疾患概念が大きく変わるので、大変に興味深いです。

 

欧米に胃がんは少なく、日本・アジアで多いというのも長らく食生活や民族の違いではないかと考えられてきました。

しかし、ピロリ菌という感染症(風土病)で説明できるのではないか?という仮説に対し、大きなショックを受けたの覚えています(そしてそれは正しかった)。

アルツハイマー病も感染症の文脈で語れたら、大きなブレイクスルーです。本当かどうか知りませんが。


下水を使ったコロナの疫学調査

2020-07-28 19:42:06 | 日記

人間の便に含まれるコロナウイルスを用いて町のコロナウイルスの流行状況を

把握しようという取り組みです。ゲノムウエブの記事で特集されていたので紹介します。

https://www.genomeweb.com/pcr/coronavirus-pandemic-jumpstarts-wastewater-based-epidemiology?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Mon%20AM%202020-07-27&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.Xx9e2NIzbIV
 

下水を使ったコロナの疫学調査のコンセプトはシンプルです。感染期の患者の便にはコロナウイルスが含まれているので、下水に含まれるウイルス量を調べれば、町ごとの流行状況が正確に把握できるのではないか?ということです。

このコンセプトはコロナ以前にもあり、研究段階ではありますが、以下の取り組みが行われていました。

・ポリオや肝炎の流行状況を確認するため、2001により取り組みが始まっている。

・麻薬の蔓延を調べる手段として。コカインの分解産物を調べる試みがイタリアで、2005に行われた。

・このコンセプトのもと、オピオイドの蔓延状況を調べるため、アメリカでも試みられた。

 

このような背景のもと、新型コロナのモニタリングにも下水検査を用いることができないかと、現在検討が行われています。コンセプトはシンプルでも、実現するためには様々な困難があるようです。

記事ではアリゾナのチームの取りくみとそのチームメンバーである、Rolfさんのコメントを紹介しています。

・18万5千人規模の街を対象にコンセプトを検証している。全米に適応できれば、疫学調査に費やす10億ドル(1000億円)を削減できる見込みがある。

・大都市の疫学調査を短時間で(リアルタイム)、低コストで実施するのには画期的な方法。

・下水に多くウイルスがいるならば、検出すること自体、大きな問題はない。

・困難なポイントはとプロトコルの測定の標準化である。

・下水の温度は、コロナウイルスの分解にどのような影響を与えるか?ウイルスRNAの分解や検出に影響与える因子は?などを制御することが大変に困難。

 

測定自体は臨床検査で用いられるPCRが広く使われているとのことです。また、濃縮工程には負電荷のメンブレンを用いて収集しているようです。やっぱり、サーベイランスとして使うためには、外部因子をいかにコントロールするかが重要となるようです。また、アメリカはどうか知りませんが日本であれば雨が降れば下水に雨水が混入し、ウイルス濃度は変わってしまいます。

 

いろいろと困難はありそうですが、サーベイランスに求められる精度もよくわからりません。感染爆発はべき乗で起こる現象なので、もしかしたら擾乱要因なども内部コントロール(この場合では便に含まれる菌のDNA総量などになるのでしょうか、、、)を設定したらよいのかもしれません。

 

いろいろな方法でコロナと戦うのは重要なことと思います。

 

 


遺伝子解析による奴隷貿易の解明

2020-07-27 20:32:14 | 日記

遺伝子検査会社23andMeが主導した、奴隷貿易により拡散した、アメリカ大陸とアフリカ大陸の遺伝子分布に関する研究の報告になります。
アメリカは移民の国なので、遺伝子解析により、自分のルーツを知りたいというマーケットニーズがあります。
23andMeの顧客の遺伝子情報や、公的機関と協力し、アメリカ・アフリカ両大陸の遺伝子分布を調べ、その成果がGenomeWebに紹介されていました。
 

https://www.genomeweb.com/genetic-research/genetic-study-validates-expands-history-transatlantic-slave-trade?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Thurs%20PM%202020-07-23&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.Xx4MK9IzbIU


以下に研究成果のポイントを抜書きします。
・米国の黒人(アフリカンアメリカン)は、ナイジャリアの地域からの出身者が多いといわれていたが、遺伝解析の結果アンゴラ、コンゴ地域へのつながりの方が大きいことが分かった。
・セネガンビア(アフリカの西端のエリア)にルーツを持つ遺伝子が想定よりも少なかった。セネガンビアは稲作地帯であり、奴隷後も稲作に従事させられた。劣悪な住居、労働環境や、マラリアなどの影響で、多くのものが子孫を残さず、なくなってしまったのではないか。
・次世代に遺伝子を残すにあたり、アフリカ女性のほうがアフリカ男性よりも寄与が高い。これは、奴隷の男性の致死率が高いことに起因する。このバイアスは北米よりも南米のほうがより顕著である。
 
 
遠くない歴史の一場面を古文書ではなく遺伝子であきらかにするというのは、おもしろいですね。
男が遺伝子を残せず、女性が遺伝子をつないだというのも生々しいです。
 
この性淘汰、やっぱりちょっと不快ですよね。
2千年前におきたことと言われれば、随分遠い昔の歴史としてすんなり受け入れられますが、
これは、高々150年前(奴隷解放宣言は1860年)のことです。日本人の我々からはなかなか理解できない、

黒人と白人の間にある葛藤というのはあるのでしょう。

 


COVID19:FDAがプール検査を承認へ

2020-07-26 16:26:09 | 日記

先週のQuestに引き続き、LabCorp(米国検査会社大手)にたいしても、COVID19のプール検査に対しても、FDAがEUAを与えたということです。ちなみに、Quest とLabCorpは米国の検査の大手2社となります。

https://www.genomeweb.com/regulatory-news-fda-approvals/fda-reissues-eua-labcorp-molecular-sars-cov-2-test-asymptomatic#.Xx0rbxNxfIU

プール検査は複数の検体を一つのチューブにいれてPCRを行うものです。

チューブが陰性であれば全員陰性、陽性がでれば、だれが陽性のもとになったのかをテストする検査となります。

 

承認の内容は以下の通りです。

・従来は医師等の推奨や、感染が疑われる場合などの限定があった。今回は、そのような制限が外され無症状でも望めば検査を受けることが可能。

・秋冬の第二波に対して、十分な検査体制を確立することが目的。

・無症状の人へのテストもO.Kとして、承認を与えるのは初めて。

 

いいか、どうかわかりませんが、不安に思っている人には全部PCRができるようにする体制を、

アメリカは頑張って構築しているようです。

防疫目的という新しい検査の概念です。続きが気になるところです。