遺伝子検査会社23andMeが主導した、奴隷貿易により拡散した、アメリカ大陸とアフリカ大陸の遺伝子分布に関する研究の報告になります。
アメリカは移民の国なので、遺伝子解析により、自分のルーツを知りたいというマーケットニーズがあります。
23andMeの顧客の遺伝子情報や、公的機関と協力し、アメリカ・アフリカ両大陸の遺伝子分布を調べ、その成果がGenomeWebに紹介されていました。
https://www.genomeweb.com/genetic-research/genetic-study-validates-expands-history-transatlantic-slave-trade?utm_source=Sailthru&utm_medium=email&utm_campaign=GWDN%20Thurs%20PM%202020-07-23&utm_term=GW%20Daily%20News%20Bulletin#.Xx4MK9IzbIU
以下に研究成果のポイントを抜書きします。
・米国の黒人(アフリカンアメリカン)は、ナイジャリアの地域からの出身者が多いといわれていたが、遺伝解析の結果アンゴラ、コンゴ地域へのつながりの方が大きいことが分かった。
・セネガンビア(アフリカの西端のエリア)にルーツを持つ遺伝子が想定よりも少なかった。セネガンビアは稲作地帯であり、奴隷後も稲作に従事させられた。劣悪な住居、労働環境や、マラリアなどの影響で、多くのものが子孫を残さず、なくなってしまったのではないか。
・次世代に遺伝子を残すにあたり、アフリカ女性のほうがアフリカ男性よりも寄与が高い。これは、奴隷の男性の致死率が高いことに起因する。このバイアスは北米よりも南米のほうがより顕著である。
遠くない歴史の一場面を古文書ではなく遺伝子であきらかにするというのは、おもしろいですね。
男が遺伝子を残せず、女性が遺伝子をつないだというのも生々しいです。
この性淘汰、やっぱりちょっと不快ですよね。
2千年前におきたことと言われれば、随分遠い昔の歴史としてすんなり受け入れられますが、
これは、高々150年前(奴隷解放宣言は1860年)のことです。日本人の我々からはなかなか理解できない、
黒人と白人の間にある葛藤というのはあるのでしょう。