旅する骨董屋 喜八

チベット圏を中心にアンティークや古民芸・装飾品を旅をしながら売買する喜八の、世界の様々な物や人その文化を巡る旅のブログ。

美しいラダックの民族衣装ティクマ・ゴンツェ

2024年10月29日 | チベットもの



たまには物の紹介です。

ラダックまたはザンスカールの民族衣装です。

日本や欧米では通称ラダッキー・ドレスとも呼ばれますが、
現地での名称はゴンツェ(ゴンチェ)です。

その圧倒的な迫力から、
美術館などでも展示されている事でも知られております。

僕も今まで数多く扱ってきましたが、
すぐに旅立つ人気商品でござる。

今回は極めて良い、古手のゴンツェ(ゴンチェ)です。

ちなみに、
現地では、ティクマが絞られていない民族衣装もゴンツェと呼ばれます。

だから、正確には、ティクマ・ゴンツェとなるのかな。

なお、
無地のゴンツェは、ラダック・スタイルとザンスカール・スタイルは異なり、
生地の厚みや起毛具合、色味が異なります。

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サクサク行きます。





無数に散りばめられたチベット仏教圏の十字絞り「ティクマ」

美しい












擦り切れた青地

羊毛を染められております。

荒い見た目ですが、
着込まれ柔らかさもあり、
温もりも感じます。

今や数が激減した古手です。

美しい雰囲気がございます。












袖やスカート部分に無数に現れるティクマ






大きさもあり、迫力あります。

裏地は撮ってませんが、
擦り切れた、良き雰囲気です。

実物はイカつい迫力があります。


なお、ティクマ・ゴンツェは通常、女性用です。
老齢な方々が冬場や、
祭事時に着込みます。

夏場はあまり着ません。

若い人も、ほぼもう日常着ません。




ある有名美術館の元学芸員の方が、
このゴンツェを見て、
「某民藝館の物より素晴らしい」と仰っておりました。

そーかもしれません。

今や、この手との出会いは運次第です。

そして、
ワシやで。

人知れず、
長年、
「チベット民藝」をやっている、
キハチやで。

日本では、今、ワシくらいじゃないかな。
この手の古さのティクマ・ゴンツェを定期的に扱えるのは。

ゴンツェと一言にいえど、
雰囲気や質、
ティクマ絞りの数や古さは、
多種多様です。

ティクマのゴンツェは現存すれど、
古く良い物は少ないのです。

三年前も
二年前も
ラダックへ渡航して、
欲しいと思えるゴンツェには出会えなかったが、
今年は出会えました。

しかも意外にも、あっさりと。

縁ってのは不思議です。


今では、ラダックもザンスカールも
着ているのは現代の服が多いです。

民族衣装を着ていても、
無地のゴンツェとなります。
僕のラダックでの定宿はラダック人経営ですが、
その宿のおばあちゃんも、今や無地のゴンツェしか持っておりません。


近いうちに消えゆく、
美しい服飾文化


ティクマ・ゴンツェでした。





コメント

美しいラダックの頭飾り「ペラク」

2024年08月10日 | チベットもの



「ペラク」に関してです。

ペラクとは、
インド最北の地、ラダックまたはザンスカールで、
チベット仏教を信仰するラダック人またはザンスカール人が、
結婚式等で女性が盛装する時に頭に被る「頭飾り」です。

英語だと、ラダッキー(またはザンスカーリー)・ヘッド・ドレスとか言われております。

ラダックとは詳しくは説明しないけど、
インドのジャンムー・カシミール州の地域の名称です。

インド最北部ですな。

すぐ東にはチベット(中国領)、
西にはパキスタンと国境を接しております。

地理的な事から軍隊が常駐していて、
アーミー・キャンプ(基地)も沢山あります。

国際的にはインド領ですが、
チベット仏教圏であり、
地元民達は、
自分達の事をラダック人と自認していて、
他のインド人の事を「インディアン(インド人)」と分けて呼び、
かつてはラダック王国でもあったので、
独自のアイデンティティを持っております。

そして、ラダック人はチベット仏教を信仰してます。
結構、真面目に。

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その頭飾り「ペラク」

欧米の民族装飾品の愛好家の一部では、
知られた存在です。

単なる民族衣装の装飾品ではなく、
その圧倒的な存在感と、
親から子へと伝世する、
特別な位置付けとなる装飾品です。

無数のターコイズが付くのが特徴です。

盛装時には、
顔の両サイドに「耳」(正式な名前を聞いたが忘れてしもた)と呼ばれる、
羊毛の平坦状の飾りを着用します。
そして、その耳部分に銀製のジュエリーなどを垂らします。








実際に着用しているのは、
こんな感じですな。

頭に乗せているのがペラク。

中央の写真奥の女性たちが付けている、
顔の両サイドの黒い羊毛部分が耳。

ペラクと言っても、
デザインが異なる地域もある。

上の写真はラダックでのお祭り用の簡易的なペラク、
真ん中と下の写真はザンスカールの結婚式の様子。

新婦は布でペラクと顔を隠す。

頭上から反り出した見た目から、
欧米では「コブラ・ヘッド・ドレス」とも例えられるスタイル。

これらが通常のペラク。

ただし、
中央の写真の女性たちが彼女達が着用しているのは、
それほど古くはないペラク。

ターコイズも新しい物が付いてたりする。

そう

例え、
正式な結婚式でのペラクであっても、
今では新しいペラクが着用されております。

伝世されるべき、オリジナルのアンティーク・ペラクは、
既に、
換金価値の対象として手放している場合もあります。

古いオリジナルのペラクでも、
一見、見た目は良いが、
よくよく実物を見ると、
チベタン・ターコイズの質が良くなかったり、
古くないターコイズが付いていたり、
ターコイズではない物も混じっていたりするペラクもあるのです。

ぱっと見の迫力自体があるペラク

でも、よくよく見ると色々と違いがあるのです。

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今回、僕が手に入れたペラク。



迫力がある。

写真で見ると小さいが、実物は、
頭を覆いかぶさり肩まで垂れる大きさ。

チベタン・ターコイズ、一個一個も大きさのあるターコイズ。

上部がフラットなのは、チャンタン地方のスタイル。

チャンタン地方と言えば、
遊牧民や古い伝統的なスタイルが残る地域です。

因みに、チャンタンのカシミアは世界的に有名。
超品質が良い。
世界的な某トップ・ブランドも、
チャンタンのカシミア(パシュミナ)を用いていると聞く。


さて、そのチャンタンのペラク。
今では、オリジナルは数が少ない。

これは地布も古いオリジナル。

通常、赤系の布を用いる事の多いペラク。
チャンタンのオリジナルはベージュ色の布を使っている。








圧巻

びっしりと、良いアンティーク・チベタン・ターコイズが付く。
その数、120個。
小粒ではなく、全てそれなりの大きさがある。

全部が古い、アンティーク・チベタン・ターコイズ。

ディープ・グリーンからエメラルド・グリーン、
青緑、青みを感じる色、
雰囲気の良いターコイズから、
艶々パティナのターコイズまで様々。

何より、全部がナチュラルでアンティーク。

因みに、上述の着用写真を見ても分かるように、
新しいペラクには、
明るい青色のターコイズを好んでつけられます。
今では、明るい青色ターコイズの新しい物が手に入るからですな。

でも、元々のオリジナルのペラクは、
青緑またはグリーン系のターコイズが多いのです。

また、
これらはペラクを作った時に、
アンティークの石を一つ一つ選んで縫い付けたので、
ターコイズ自体は、ペラク本体より遥かに古い、
数百年レベルのチベタン・ターコイズが付いております。

ペラク自体の年代は1914年製のシルバーコインが付いているので、
その辺の時代だろう。




この上部の装飾にも僕は惚れた。

大型の銀製のフラットな装飾部品と並行して、
繊細な貝や、
真珠などのビーズが連なって飾られている。

こういった細かい、こだわり的な部分が、
伝世する事を目的として生まれたオリジナルの証。

そして、
並べられたチベタン・ターコイズも、
一個一個が個性的で美しいクオリティ。






ガツーンと付く、メイン・ピース。
大きさも、かなり大型。

名前があるのだが、忘れてしまった。
もちろん、これもシルバーのオリジナル。

彫りと打ち出しが施されて美しい。
これだけでも価値がある。

通常版のペラクは、
ラダック・スタイルのガウを中心に持ってくる。
チャンタンのこのペラクは、
ヘッド・ピースが大型のシルバー装飾品。




写真中央に並べられた物は、
ロックショ(ク)という名前の装飾品。

円形が基本で、
周囲をチベタン・ターコイズで飾られ、
中央にはカーネリアン。
新しい物ではなく、時代を経た、アンティーク・ロックショ。

ヴィンテージのロックショ単体で売られているのも目にするが、
一個だけでも意外に高かったりする。
それが複数付く。

周囲のチベタン・ターコイズの質を見ても惚れる。
良いレベルの物が嵌められている。

商売的な事を言うと、
バラして売った方が効率的だろうが、
このペラクに関しては、僕はしない。

最下部に二段ほどに、
もっとターコイズがあった痕跡があるが、
元々の持ち主が換金のために売ってしまったのだろうか。
不明である。

なお、
新しいペラクは、形の整った台形ターコイズを綺麗に並べるが、
古いペラクは、わざわざ一個一個選ぶので、不揃い。



耳を添えてみました。

耳を付けたこのスタイルが盛装スタイル。

耳というより羽根だろうか。

別で手に入れた耳部分は、
チャンタン地方から行商に来ていたオバチャンが持っていた、
新しい耳部分のみを譲り受ける。

ペラクの耳だけが売られているのは、
今まで見たことがなかった。

ペラク本体のみ手にしていたので、
まさに偶然。




ペラクの耳

意外と大きいです。




前回の投稿にも登場した、野菜売りのオバハン。

ハンド・スピニングの羊毛糸で、
補修してもらいました。



「あら、ペラクの耳ね」
とでも言っているのだろうか。
地元のオバハン連中で話題のネタとなっていました。

オバハン達、
スター・ウォーズとかに出てきそうな容姿だ。

---

このペラク

表に出ていなかった物で、
昨年11月頃に誰かが手放し、
ラダックで商いをする僕の知人が買い取ったらしい。
確かに、去年の9月時点では彼は持っていなかった。
今年、それを僕は手に入れた流れです。

手に入れるのも物語があり、
最初の彼の言い値は、僕が買える値段ではなかった。

しかも、
別の地元の業者が狙っているのも耳にしていた。

まぁ、
詳細は省きますが、
店主も流石に粘り、
僕も圧力をかけ、
最終的に店主は現金化を望みましたな。

結果、交渉は成立した。


・・・と言うことで、
個人的に10年以上前から欲しかった、
オリジナルのペラク。

しかもチャンタン・スタイル。

ついに、手にできました。

日本で売れるか売れないかは、
もはや気にしてませんでした。

個別のチベタン・ターコイズを見ると、
お得感は凄くあるだろうが、
金額的な事より
僕にとっては、
見送ることのできない品でした。

アンティーク・チベタン・ターコイズが高騰している現在、
このペラクはコレクションにしておいても、全く構わないんです。

オリジナルの古く良いペラクは、
本家ロンドンのクリスティーズでも出品されていた逸品。
価値がなくなる物ではないし、
そもそもが、もう数に限りがある美しい物である。

良い物を手に入れられました。


終わり


---

おまけ



渡航中、同時期に出会ったペラク

通常のコブラ・スタイルのペラク

地布は新しく、
オリジナルではないが、良いターコイズが多く付いてる。
新しくペラクとして作られた物だろう。

最上部に、一際大きな、
チベタン・ターコイズが付いているが、
これらが、トップ・ピースまたはヘッド・ピースと呼ばれる特別なターコイズ。

シェイから来た人が持っていた。

お金に余裕があれば、
これも手にしたとこだけど、
僕は古いオリジナルの、
特別な物が欲しかったので見送った。


以上

美しく圧倒的な存在感のあるペラクの話でした。




コメント

アンティーク・チベタン・ターコイズの話

2024年07月28日 | チベットもの



古いチベタン・ターコイズの話題です。

僕自身も大好きな、ターコイズ。

個人的には、
世に無数に存在する、
古い石やビーズの中で、
「一番好きな石」と言っても良いかな。

現地を旅すれば旅するほど、
仏塔や仏像を見たり、
チベタンまたはラダックの人々に触れれば触れるほど
ターコイズ好きは加速して行きました。

個人的にも集めております。

そのチベタン・ターコイズ。
もはや詳しくは説明しません。

チベット語で「ユゥ」ですな。

良いターコイズは、数は激減しました。
行くたびに感じます。

正確に言うと、
ターコイズの数自体はまだ存在しています。

そこそこのクオリティならば、
まだ残っております。

一般市場に
「古く良いターコイズは、流通量が減った」と言う方が、
正確かな。

とは言え、
絶対的な数も少なくなったのは事実でしょう。

チベタンの友人も、
「色々な所から、良いのを一個、二個、買い集めているよ」と言うくらい、
良いターコイズを手に入れるのは難しくなりました。


そして、今、僕は胸騒ぎがしてます。

ドキドキ


なぜかって?

それは海外、現地、含め、
友人、知人たちが買い集めているからです。

彼らは、
単なる旅行者ではありません。

副業の業者でもありません。

今、買い集めているのは、
業界歴、20年、30年、40年級の、
プロ業者やコレクターの猛者たちです。

目ざとい中国人バイヤーも買っています。

もちろん、
以前から買い集めていた人は多いですが、
最近、その速度・規模感が加速しています。

それらは、
値段が、
より上がる可能性を示唆してる気がするのです。


実際、既に、昨年ネパールで、
トップ・クオリティ(中国人好み)のターコイズは、
何と、1グラム単価、金より高かったです。
それでも速攻で、3日もかからず売れていました。

そして、
古いチベタン・ターコイズに関して、
一部の間では、
「ラスト・ワン・ピース」だとも言われています。
「最後の一品」という意味ですな。

チベット物で、
ジービーズ(ズィビーズ)の値段が超爆騰し、
次に、
珊瑚(コーラル)が値上がりし、
その後に、
琥珀、と
値上がりは続きました。

小粒のブッダ・チッタ(鳳眼菩提樹の数珠)も、
数十万円単位になりました。

仏画(タンカ)や仏像は、
元々、高いです。
古くから欧米などでも美術的観点で評価されてきましたし。

「ラスト・ワン」と言うのは、
今、最後に光が当たるのを待つのは、ターコイズのみ、という意味です。


正確に言うと、
ラスト・ワン、または、ラスト・ピースと噂されてますが、
代表的な物を対象とした比喩的表現です。

実際には、
古いチベット物は多種多様で、
他にも、
多くの種類の数珠や、
素晴らしいガウ、家具、
護符、銀・銅・ブロンズ製品、
経典や色々なビーズなど多数あります。

それらも総じて値上がりしてますが、
「短期間で一気に値上がりする可能性がある」との意味で
「ラスト・ワン」と言う事ですな。

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上記の20年以上の経験を持つ人たちは、
良い物は売りに出さず、「キープする」と
口を揃えて言います。

フランスのアフィヨンやクリスであっても、
ラダックのSであっても、
イギリスのNであっても、
チベット人のSであっても、

既にすごい量を持っている彼らでさえ、
今、皆、必死にチベットのターコイズを探しております。

僕も必死に探しております。

表に出ている物はもちろん、
表に出ていないターコイズからも選び抜き、
知人、友人、地元民に声をかけ、
レー以外の地から持ってきてもらったりしてもらいました。

近隣の村々にコネクションを持つオババに
「良い物なら買うから集めてきて」と頼みもしました。

これが大変で、
「明日、持ってくるわ」と言われても、
実際に持ってくるのは、5日後だったりします。

ババァ、遅えよ

ジービーズの写真を送ってくる暇があったら、
ターコイズを探しやがれ。

「古いターコイズ、オンリーだ!」と
何度、言った事か。

しかも、
いつ、誰が、何を、
現地の骨董屋等に持ち込むかは運次第となります。

時間と運と労力が、必要となります。

いずれにせよ、
探しまくり手を尽くしました。

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大量です。
全て古く、色も質も良い。

合計で200個以上は買った。

金も労力も時間もかかったが、
可能であれば、
まだまだ欲しい。

偶然、同じ日にラダック入りした友人業者も買いまくっていた。
共通の友人のチベタンが「まだ買うのか?」と引くほどに。




実はでかいターコイズたち。

写真では浅い色に写ってますが、
実物は深みがある濃い色をしてます。



激烈に古い。
何百年経てば、こうなるのかしら。
十字に紐穴の痕跡が交差した「ティクマ」紋様のチベタン・ターコイズ。
勝手に見立ててますが。





良い。
銅で巻かれた大型のチベタン・ターコイズのペンダント。

エメラルド・ブルーグリーンの湖を彷彿とさせる色だ。
魅力的。
たまにある小型でなく、大型です。



大型です。
美しい。



裏面。
ナチュラルな古さ。
友人の売主が売りたがらなかったターコイズ。
スカイブルーも内包し、
色も質も良く、古いさも大きさもある。



全部、古い。
数百年もの。
この手は、1000年経っていると記載がある時もが、それは分からん。
ダーク・グリーンで肌質も古い。
トロトロを通り越して、
枯れている物もあります。

僕的には、
チベットの古い物での、
たまに出会える、
この「枯れ感」が大好物です。





すごく大きいコロンとしたターコイズ。

実は、このタイプはめちゃくちゃ数が少ない。
一般的には平面的な形が多い、アンティーク・チベタン・ターコイズ。
古くて厚みがある、コロンとした大型は意外と少ない。

色や質は好みが分かれるが、
数多く、色々見ていると、愛着が湧くタイプ。

これは私物にした。



通称「スネーク・スキン」

蛇柄に例えられる、チベタン・ターコイズ。
もちろん、アンティークである。

紛れていると見過ごしがちだが、
魅力的なデザイン。

下の物は私物にした。






選び抜いた、小粒たち。
飴ちゃんに見えてくるが、
全部、質が良いチベタン・ターコイズ。

良い小粒は探すのに手間がかかる。
最高品質となると本当に数が少なく、
見つけるのはマヂで大変なのです。

因みに、
表面をポリッシュ(研磨)してあると、
見た目は格段に良くなります。

ポリッシュされたターコイズは、
キラキラ輝いていたりします。

逆に、ナチュラルだと、乾いてしまうと、
見た目(写真写りも含めて)がイマイチになります。

ただ、古いターコイズは、
本当の質の良さは失われていないので、
油分(顔の油とか)を塗るとすぐ、
輝くパティナ(古色)が
姿を表ます。

現地では、
乾いている古いターコイズに、
鼻や頬の油を付けてパティナを確認したりします。



ラダックの「ペラク(頭飾り)」のヘッド・ピース。
コブラ・ドレスとも例えられる、
頭飾りの先端に付けるターコイズ。

単なる、マトリックスの美しい、
平面で大型のターコイズだけではなく、
実は、ペラクのヘッド・ピース。
意味のあるターコイズなのです。

売主の妹が店番をしてて、
値段を間違えて売ってたので、
秒殺で手に入れた。






こんなのも有ります。

ターコイズの装飾品。
稀に見かけます。
シルバーの側面、銅の底面で固定されている。

ピアス用の花形ターコイズの装飾品もあり、
固有の名称があるが、忘れてしまった。
伝統的なイアリングの「アローン」とは異なります。



他の地から買付・売買に来てた友人のチベタン・ディーラーが持っていた、
シャンカ(法螺貝)型のターコイズ。

個人的には初めて見た。




艶々で、
濃く深い色味のターコイズたち。
素晴らしいクオリティだと思う。

この珠達は、
仕入れの値段が他の何倍もしたが、
良いので諦める訳にもいかず、
苦渋の選択で手に入れた。

全部私物用にキープです。




ターコイズのリングたち

古いオリジナルのラダッキー・リング

この手の指輪は、
「もうあまり手に入らなくなった」とラダックの友人は言う。

左奥の指輪のみ、
新しいターコイズの指輪。
ネパール来歴だろう。
あまりにも良いターコイズが付いてたので、仕入れてみた。

中列の左と、右奥のリングはチベタン・スタイル。

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ここで紹介したのは、
ごく一部のチベタン・ターコイズになります。

200個以上は数が多いです。

一個一個が全て、魅力と個性があるターコイズです。

でも、
力の限り、可能な限り、
まだまだ集めるつもりです

値段が上がるかどうかではなく、
単に、
僕はチベタン・ターコイズ自体に魅力を感じているからです。


愛でて良し、
触って良し、
身につけて良し、
ファッション目線でも良し、
集めて良し、
金銭価値も良し。

伝統も歴史もあり、
認知度も広くあり、
見た目や色、模様、
形など種類も豊富で、
広くチベタンにも愛され、
今はまだ、値段も現実的です。

僕が知る限り、
そんなチベット物は、
今では他に、多くありません。

そう、

チベットのターコイズは魅力的な石と思えます。

ただし、
ハマると沼です。
中毒性も強いです。

僕の様に、
現地で毎日毎日、探し買い求めていると、
道端の砂利がターコイズに見えてくるほど、
おかしくなってしまいます。

でも、
まだまだ集めたいと思っております。


以上

美しい、アンティーク・チベタン・ターコイズでした。


コメント

チベットの十字刺繍ティクマの襤褸

2024年04月04日 | チベットもの



『チベット襤褸』という価値観を、
人知れずやっております。

しかも、
十字の紋様ティクマと襤褸が合わさった物は、
極めて美しい布だと僕は思っております。


日本の藍染の古い野良着や布団等の襤褸は、
英語では、
「BORO」と表記され、
今や、その価値観は欧米で評価と認知がされてます。

個人的には、
その襤褸の価値観は、
日本の藍染等の襤褸に限らず、
世界の様々な布、織物に共通する価値観だと思っています。

中東などの古いキリムや絨毯にも、
朽ちた物や、
修復が重ねられた物は見られ、
それらは「フラグメント」と呼ばれ、
評価もされている。

一方で、
チベットの襤褸

僕が知る限り、
一部を除き、ほぼ認知されてこなかった。

日本では特に。

これはチベットの織物や布自体の、
認知度が低いからでもあると思う。

6,7年くらい前かな

ネパールのチベット圏で、
チベットの襤褸の布、
刺繍された古い民族衣装の端切れなどが、
一斉に姿を消した時期があった。

知人のチベット人業者に聞けば、
中国人が買い漁っているとの事だった。

中国人の間では、
以前から、
古い布類や刺繍布に価値(美的価値・金銭価値)を見出してきて、
既に、チベット本土または東チベット、
北京などの中国都市部でも高額で需要があった筈だったが、
それとは異なる理由で姿を消したのだった。

彼ら中国人業者、
または、
中国本土での買い手は
美しさを改めて見出した訳でもない。

理由は明快だった。

偽物のタンカ(仏画)の表装に使うとの事だった。

掛け軸でいう所の、
天地や中廻し、柱と呼ばれる、
絵の周りを額装する生地に使うのですわ。

つまりは、
絵は新しく描いて古加工し、
額布部分の生地に古いオリジナルを使って、
偽物を作る手法だ。

そうすると、
全体的に古く見えて、
偽物であったとしても、
超高額で売れるというカラクリである。

その時期にネパールでは、
チベットの龍柄などの端切れ布であれば、
中国本土より安く手に入れるのも可能だったので、
まとめて買われた、との事だった。

ただし、
上記の真偽や本当の理由は分からないし、
その時期には、
中国人富裕層向けの高額オークションでも、
古い布類は多く出品されていた印象もある。

ただ単に、
需要が多くなったのかもしれない。
分からないっす。

いずれにしても、
良くも悪くも、
実に中国人らしい理由だ。

その後、古いオリジナルの襤褸の値段は、
何十倍にもなったかな。

昨年、ネパールで、
古い刺繍ハギレ(良い刺繍の柄であった)が4,5枚に、
15万ルピー(約16万円)の値段がついていた事も見かけた。

アホやん。

---

それはさて置き、
僕も以前から襤褸や、
ティクマをひたすら扱ってきたが、
あまり評価されんかったよね、これが。

僕のやり方が悪かったのだろう。

僕が無名の行商であるからかもしれない。

でも、
最近、よーやく認知されかけてる気がする。

以前から、僕は骨董市で、
チベットのティクマや、
チベット仏教の襤褸布を頻繁に売っておりました。

最近、推し始めたと思われがちですが、
そーではござらん。

なんなら、この仕事を始める前から、
チベットの襤褸や、ティクマは好きでござった。

当時、骨董市の僕のブースで売ってるのは、
ほぼ全部ティクマの物とか、
布は全部、ボロボロの襤褸とかで、
全力で売っていた事もあるけど、

「あら〜、知ってるわ、日本のお茶道具よね〜」とか
「そんなダメージが多い布、値段、つかないでしょ」とか

勘違いや、失礼な言われ方もされてきました。

売っていた場所がマッチしなかったのかもしれない。
東京以外の骨董市で売ってたりしたので。

ごく一部の有名美術館関係の学芸員さん達や、
僕の価値観の趣向を理解されてくれた方々、
博学な方や、
見聞を広く求める開かれた心をお持ちの方々などには、
評価されていたかな。

それらの方々以外は、
全スルーでしたね、ぶっちゃけ。

例え、素晴らしいと言ってくださっても、
「実際に買っていかれる人」は
多くはなかったです。


さて、
泣き言などはここまでで、
当時、僕が扱っていたティクマの襤褸でござる。

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正方形のティクマの布。
長い年月を経た襤褸です。

座布団の表布ですな。
僧侶が使います。
名前は忘れてしまった。






良い味である。

日本の古い布で、リキと表現される、
力強さ、説得力がある。








特筆すべきは、
十字紋様が刺繍である事です。

よく見ると、
十字紋様ティクマが、「刺繍」で表現されておるのです。

正確には、織りと刺繍の中間。
織りの隙間に糸を通している。

「結び」となるのかな。

便宜的に刺繍としてます。

多くのティクマ(ティグマ)は、
絞りや押印(スタンプ)がマニアには知られるとこだが、
実は、刺繍での十字ティクマも存在します。

絞りの上に、刺繍で十字を表現しております。

某織物研究者の文献には、
ティクマに関して、
刺繍は触れられていないらしいけど、
実際には、チベットのティクマ紋様は刺繍も存在します。








襤褸の雰囲気が良き

色は褪せ、
生地は劣化している。

海外のサイトでは、
ティクマの布を、19世紀と一概に記載している場合も多いが、
確かに、19世紀と思われる物も存在する。
ただ、僕は、
大抵は20世紀中頃から前半位と、時代を聞かれれば言う事が多い。
物にもよるが、概ね、80年くらいかしら。
あえて若く言っている場合もある。
根拠は、布や色の質感(文献等とかと比較している)等に加え、
状況での見解となる。

この座布団に関しては、100年位は経っているとは思えます。
それ以上かも。正確には分からんが。








十字紋様が満載です。

渋い赤紫色と青色のコントラストも佳き。












裏面

裏面には絞りが表れている。
表面とは異なった雰囲気の顔をしております。

色は色褪せた表面に比べて、濃く残っている。






実は、このティクマの座布団

もう一枚、同じ物を対で持っていた。

もうだいぶ前に売ってしまったのです。

この一枚は、
刺繍での十字ティクマの襤褸なので、
参考資料として手元にずっと残しております。

襤褸でない、
厚手のティクマの座布団バージョンも何枚も持っていたが、
今では手元に一枚もない。

見識のある方々の元に、
旅立ったのです。

もちろん僕は、
商売の売り手としての側面もありますが、
無知で無学で稚拙な僕ですが、
単に、
チベットのティクマ、
チベットの襤褸、
その無類の美しさ、
現地の風土や人、
興味深い文化を感じて扱っているつもりなのです。


「チベットの襤褸とティクマ」


チベット仏教文化を表す、
『美しい布』と僕は思っておりやす。


そして、僕は、
それを追い求めているのでござる。



(写真掲載のティクマの襤褸座布団は、個人コレクションです)




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チベットの十字絞りインディゴ・ティクマ

2024年03月29日 | チベットもの



さて、チベットの十字絞りティクマ(ティグマ)の事です。

しつこく発信して恐縮です。

推しの人ならぬ、
推しの物です。

もう散々、今までもティクマ(またはティグマ)に関して、
書いてきました。

今後は、古手の物は、
もう多くは手にできないであろうのを感じ、
記録的要素として残しておきますのです。

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古いホース・ブランケット「タ・ケップ」です。

チベット語で正確に言うと、
ニンバ・ティクマ( ティグマ)・タ・ケップですな。

十字絞りの名称のティクマに関して、
ティ「グ」マと呼ばれていたり、または記載しているのは、
多くの英語表記だと「ク」の表記が、「g」(tigma)となるからだけど、
実際のチベタンのチベット語の口語表現だと、「ク」(音聞き)になる場合が多く、
僕は、ティ「ク」マと、メインに表記しております。

さて、早速。




蒼いインディゴの地です。

良い色をしております。

ティクマの布類または織物には、
絞りを入れる「地布の色」は、
青や赤、紫や白、黄色、緑など、多彩な下地の色がありますが、
個人的に青という色が好きです。




美しい十字紋様が明確に表現されてます。

輪郭に薄い黄色が現れています。




全体像。
物としての美しさ、完成度が素晴らしい。

上部部分の赤色が鮮やかに撮れてしまっているが、
実物は、燻んだ赤をした古色です。






古手ですな。
本当に古いです。






無数に表現された十字紋様。

所々、十字紋様が紅い色でも表現されている。

以前、他の店の知人でないチベット人業者で「十字の数」なるものを言う人も居たが、
個人的には、それは売り文句であろうと感じている。
十字紋様ティクマの数の意味や、
数による価値の有無は、
今まで納得できる理由を聞いたことがない。






白黒にしてみました。
十字紋様が惹き立つのです。






問答無用に美しいチベット民藝と個人的には思っています。
安易に、民芸または民藝という言葉は使えないけど。

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以前も書きましたが、
ティクマ(またはティグマ)のホース・ブランケットと言えど、
多種多様で、
サイズ・年代・裏地の素材や色、などなど、様々な種類がございます。

チベット本土はもちろん、
ラダックやザスカールなどでも目にするティクマ

民族衣装や、祭事衣装、
靴や帽子、
座布団、馬具や法具類にも表現されている、
チベットの十字絞りティクマ紋様

古くは、
ネパールにもチベットから渡ってきたティクマの織物たち。

ネパールでも、10年前位には目にする機会も今よりも多く、
値段も比較的買いやすかった。

チベット本土ラサとか東チベットには、
今や、じぇんじぇん無いよ。
いや、ほとんど無い、と言った方が正確かな。

ラダックであっても
ザンスカールであっても、
古く、十字紋様が多く表現された質の良い民族衣装ゴンツェやリンツェは、
もう、だいぶ少なくなった。

8年前位だったかなー

いつだったかなー

真偽と理由は知らんが、
フランス人の間で一気に人気になったらしく、
凄い勢いで値段が急騰し、
今では、数は激減しました。

ラダックで、
大量に古い十字絞りのリンツェを持っていた店が有ったが、
店の経営を父親から息子が引き継ぎ、
昨年の夏には、
ティクマ関連は、ほぼ無くなっていたよね。
なんなら店も新しくしてたし。

ネパールであっても、
めっちゃ高い物が高級店に幾つか残っているのを、
今ではわずかに目にするのだけど、
その値段は、
僕の売値より遥かに高かったりするほどです。

ラサや東チベットに至っては、
ティクマの物を見つけるのすら大変の上、
行くのが面倒すぎる。
手間もお金もかかってしまう。

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この投稿のホース・ブランケットは、
普段、店を開けない知人のチベタンの店に有った物。

前々から彼が持っていたのは知っていたけど、
古いズィ・ビーズとか扱ってるし、
「めっちゃ良いけど、高いんだろうなー」と思って見ていた。

今回、もう多くは手に入らないのを改めて痛感し、
他の店で僕が見送ったホース・ブランケットも滞在中に売れていた。

以前もブログで書いた、
白地の同手のティクマのホース・ブランケットは手に入れたが、
可能な限り、もっと手に収めておきたい。

そこで、
英語がほぼ話せない彼の店で、
お茶をしてるついでに値段を聞いてみた。

「やっぱ、高けぇ」

そう思ったよね。

しかし、
むっちゃ良い。

よく見せてもらったが、
問答無用に良い。

あー、もう、やんなっちゃうよ。

店主も
「これ、めっちゃ良い」
とか
「本当に古いぜ」
とか
「もう入ってこないんだよね」とか
あんま良く分からんチベット語と、
おぼつかない英語まじりで言っている。

まぁ、たぶん事実よね、これに関しては。

俺が「高いよ、値引きしてよ」と言うと、全然割り引かず、
「安いよ!」と言い、
奥から、センゲェ(雪獅子)柄の、
大きく古いオリジナルのチベタン・ラグを出してくる。

「これなんか、〇〇万ルピーだよ」と、
チベタンの親父は言う。

超高いー

でも、相場的には安い部類なんだろう、とも感じた。

ニューヨークとか持っていったら、
いくらの値段がつくか分からん。

超欲しいー

同時に、
このホース・ブランケットの「物の美しさ」は、
個人的には、その超高額なラグに劣る物ではないと感じた。

状態も申し分ない。
十字絞りティクマも複数表現されていて、
大きさもある。
裏地も良い。
古さもある。
何より、好きなインディゴ・ベースだ。
色も良い。

この先、また出会いのは簡単ではないだろう。
出会えるかもしれないし、
出会えないかもしれない。
出会ったとしても、いつになるのかは分からない。

僕は決めた。

「分かったよ、買うよ。金、持ってくるから待っとけ」

そう言うと、僕は現金を取りに帰った。


1000ネパール・ルピー札(約1100円・1000ルピーがネパーでは最高額紙幣)の、
分厚い札束を持って戻ると、
僕は買い取った。


あー、もー、やんなちゃうな


でも、良いもの買えた。


そんな思い出。



現状、私物(個人コレクション)



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