
チベット仏教文化圏の布類です。
民族衣装やブランケット、
十字絞りティクマ(ティグマ)などです。
既に多くの物が僕の手元から旅立ちましたが、
記録的写真として残しておきます。
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無染色の古いチュバ(チュパ)です。
チベット人の民族衣装です。
足首辺りまでの長いコート状で前で巻き込み留める仕様です。
チベット自治区の中央近辺とは作りが異なる、
西チベット・ンガリ地方の遊牧民仕様です。
通常のチュバは濃紫や黄色、濃紺など様々な色に染められますが、
珍しい無染色の手織り羊毛バージョンです。
袖も細いタイプです。



西チベットのンガリ地方のヤク毛ブランケットです。
巻いて着用も出来る様に、首元に当て布が施された遊牧民仕様です。
天然の茶色のヤク毛の色が美しいです。
ヤクの柔らかい内毛を大量に用いた、
かなりの大型で手織りです。
クルと呼ばれるヤクの内毛はフワフワで柔らかく、
服や布団、ブランケットなどに使われ、
外毛ツィッパは固くテントなどに用いられます
極めて寒い地域なのでブ厚い地で、
防寒コートや布団としても用います。
土着の雰囲気を残す、伝統的な織物です。
チベット全体の近代化が進み、
中国政府の遊牧民の定住政策が進んだ現在、
近く、完全に姿を消す物の一つでしょう。
いや、もう既に実用している人々は極稀かもしれません。


古いパンデンです。
チベット人女性の伝統的な民族衣装です。
前掛けです。
世代を跨いだ古いタイプで、
通常より大判です。
生活様式が変化した現代では、
各家庭での手織りのパンデンは少なくなりました。
どんどん姿を消します。
「今は、麓の街で物々交換して新しいパンデンを手に入れているわ」と
ランタン渓谷の奥地のおばあちゃんは言います。
一部に草木染めを用いた、
奥地ジュムラ来歴の古いパンデンです。


チベット仏教圏の十字絞りティクマ(ティクマ)の古手の布です。
美しい、とだけ言うと安っぽくなってしまいますが、
美しいティクマ紋様絞り布です。
手織りで十字紋様に絞られております。
長さゆえ、帯かと思いましたが、
おそらく古い敷物の縁取りだったのでしょう。
この年代のティクマ布も、
現地、チベット本土や東チベット、
ラダックやネパールなどでも、
すっかり姿を見なくなりました。
「次の春頃には店を辞めるよ」と言う、
老齢なチベット人店主から譲り受けました。
もう新たに良い物は中々手に入らなくなった現在、
この手の古い布を扱う業者も減っていきます。
今現在、変わって登場しているのは、
ジービーズなどを売買する若いチベタン業者です。
美しさの価値観の変化や、
金銭対価を含めた
需要の移り変わりを感じます。



以前にも紹介した、
古手のラダックの民族衣装ゴンツェです。
通称、ラダッキー・コート(ラダックのコート)と呼ばれていますが、
正式現地名称はゴンツェです。
大きなサイズですが、女性用です。
無数に十字絞りティクマが散りばめられています。
ゴンツェと一括りに言えど、
簡易的なゴンツェから、
新しい物、
古い物、
ティクマ紋様が多かったり少ない物まで様々です。
こちらのゴンツェは、長い年月を経て、
多くの物語と共にある、
素晴らしいクオリティです。
この手のゴンツェも民族衣装マントのリンツェと共に、
姿を消しつつあります。
今や若い人々は冬場にはダウンを着込みます。
手間と時間のかかる民族衣装の需要は減っていく一方です。
ラダックであっても日本も世界の何処でも同じかもしれません。
古いゴンツェは、ラダックの若い人は今や全く日常着用していないですが、
結婚式や催事時には見かけける事はできます。

インドのヒマラヤ圏ヒマーチャルの織物です。
チャダルやショールです。
チベット仏教圏である、
独自文化を持つキナウル地方の羊毛織物です。
どちらも、今では見ない古いタイプです。
個人的にはキナウル(キノール)地方の織物文化は
格好良いと感じております。
キナウル地方に行くのは時間も労力も必要で大変ですが、
美しいリンゴと大麻の森が広がっています。
右側の布は、
ヒマーチャルで長年商売を商う老齢な店主の私物でした。
天然染料で染められ織られています。
今や、機械織り化学染料の布やショールが大量生産され、
「既に人々は各家庭では造らなくなっている」と、
その老齢な店主は言います。
チョルテン(仏塔)の紋様が、
チベット仏教文化圏の織物である事を表しております。
ヒマーチャルでの織物としては、
布巻物の民族衣装パトゥも素晴らしいです。


黄金色スワスティカ紋様のチュバです。
チベット人の民族衣装です。
黄金色の絹地に卍紋様などの吉祥紋様が表され、
使い込まれて襤褸になっております。
人知れず僕が行っている、
チベット襤褸のジャンルです。
地方からやってきたチベタン行商から、
強い交渉の戦いの末、譲り受けました。
今やチベットの古い刺繍チュバは高額で取引されております。
写真2枚目は、いつかのチベタンです。
同類の黄金色のチュバを着込んでいました。
出会ったのは東チベットの奥地だったかな。
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美しい、チベット仏教文化圏での古い布や民族衣装でした。
「あの頃は有ったのに..」と思える日が近くやってくると、
毎回の渡航毎、日々感じております。
完全に姿を消す前に、
愛でておきたいです。
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