名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

エーテルの風

2017-10-17 23:29:02 | 日記(学校)
まずは、こちらの動画をご覧下さい。

よくある、空気が音を伝えることを確かめる実験で

真空状態では音は伝わらないことを示しています。

教科書的にはこれで終わりですが、自分はこの話に関連して、「エーテルの風」の話を雑学として生徒達に話します。



先ほどの実験から、実はもう1つの事実が示されます。

それは

「空気が無くても光が伝わる」

ということです。

もしも、空気が光を伝えるのならば、容器の空気を抜くと、容器内が見えなくなるはずなのです。

ところがそうはならないので、光は空気以外の「何か」が伝えているのだろう、と昔の人は考えました。

そこで、昔の人は

「正体はよく分からないけれども、光が伝わるために必要な媒質」の存在を仮定し、エーテルと名付けました。

そして、それが世界に充満しているとも考えました。

(有機化学のエーテルとは別物です)

数百年前の科学者達は、エーテルの存在を仮定し、そのうち科学が進歩すれば、エーテルの正体は明かされるだろうと思っていたようです。



ところで、風とは、空気の移動のことです。

風がふいている屋外で、風と同じ方向で移動すれば追い風で、逆方向で移動すれば向かい風で走ることになり、風を感じることができます。

それを応用して、エーテルも、空気とは違うが何らかの物質なので、空気のように「風」として検知することができるのではないか、と考えられるようになりました。

それが、「エーテルの風」実験です。

19世紀の後半から、盛んに行なわれました。

注目すべきは、どれもエーテルの存在が前提とされている実験であったことです。

つまり、当時の科学者は、「エーテルが存在することは当たり前で、それがどんなものかを突き止められれば大発見である」と考えていたのです。

ところが、研究が進んでいくと、「エーテルの風」が検出されないという事態が発生しました。

すると、「実験の方法が悪いのだ」と考える学者だけで無く

「そもそもエーテルって本当に存在するのか?」

と考える学者も現れるようになったのです。



そして、書くととても長くなるし、難しくなるので書きませんが

研究が進んだ結果、「光は何もなくとも(真空でも)伝わる性質がある」ということがわかりました。

つまり、エーテル理論の

「光は何かを媒介にして伝わっている」という前提が崩れたのです。

ちなみに20世紀に入ってからで、結構最近の話です。

そのため、今日ではエーテル理論は廃れた科学理論として扱われており

当然、小中高の教科書には載っていません。

せいぜい、一部の人だけが読むような、科学史の本に登場する程度です。

しかし自分は

科学においては今まで当たり前だと思われていたことがひっくり返ることがあり得る

という好例として、紹介する価値があると思ってしゃべっています。


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