名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

確約制度について~出願時に合格が決まっている!?~

2018-11-24 21:58:56 | 教育に関する私論
高校入試の合格が、出願時にすでに決まっている……

そんなこと、あり得ないと思いますか?

「え、そんなの、裏口入学じゃ無いの?」と思いますか?

いいえ、実際にあり得ていますし、裏口入学でもありません

今日は、そんなお話の暴露です。



一部の地域には、「確約制度」というものがあります。

これは何かというと、生徒がある条件を満たした状態で、その高校に出願し、試験を受ければ、合格を出す事を約束するという物です。

その条件というのは、たいていは評定です。

例としては

確約条件「2学期の評定で、9教科の評定合計が27以上、かつ評定に1が無いこと」

みたいな感じです。

この場合、2学期の通知表がオール3の子は、この高校に出願すれば、ほぼ確実に合格することができます

(「ほぼ」確実と書いたのは、そもそも試験を欠席したり、不正行為を行なったりした場合は流石に不合格になるからです)

確約を行なうのは、私立高校ですね。

公立高校で確約制度を採用しているという話は、筆者は聞いたことがありません。

そして、同じ高校でも、公立の併願先として受験する場合と、その高校のみに出願する場合では確約条件が変わります。

当然と言えば当然ですが、後者の方がよりゆるい条件となります。



さて、この確約制度には、2種類あります。

公然と行なわれる場合と、高校・中学校間の密約として行なわれる場合です。

この記事では、前者を公然型確約、後者を密約型確約と呼ぶことにします。

公然型は、高校側が確約条件を公表し、生徒が条件を満たした状態で保護者が高校に申請をすれば確約となると言うものです。

これは筆者は比較的健全なものだと思っています。

問題は密約型です。

もしも、このブログの読者の方で、「確約なんて聞いたこと無いぞ」という方がいれば

あなたの住む地域は、確約がそもそも存在しない地域か、確約が密約として存在している地域かのどちらかであると言えます。

密約型の地域では、中学教師や高校関係者は、生徒や保護者に何か聞かれても「そんなものは無い」としらを切るわけです。



なぜ、公表せず、密約型確約制度を採用する地域があるのでしょうか?

それは、確約制度を明るみにすると、中学校現場が大変になってしまう可能性があるからです。

たとえば、A高校を志望する太朗君がいたとしましょう。

太朗君の1学期の評定は25です。A高校の確約条件は2学期の評定が26以上。

そうなると、親も子も何とか1上げたい、と思いますよね?

当然、必死になって勉強しますが、太朗君は絵がへたくそで、美術の2が足を引っ張ります。

へたくそでも一生懸命授業に取り組んでいる、何とか3にならないものか……

そう思いましたが、太朗君の美術は2から上がらず、確約条件を満たすことが出来ませんでした。

通知票を受け取った保護者は、美術の担当教師に、なぜ3がつかなかったのか、説明を求めることにしました。

こんなストーリーが、多くの学校で頻発すると予想されます。

そうなっては、学校現場がパンクしかねません。

それを恐れる中学校が多い地域は、高校との密約という道を選ぶわけです。



密約型確約制度をとることによって、誰がどんなメリットを得るのでしょうか?

まずは中学校教師。

確約制度によって、生徒の進路を最低限1個は確保できます

大学入試と違い、浪人させるのは容易なことではありません。

進学を望む生徒に、最低1つの進学先を確保することは、とても重要です。

次に、私立高校。

私立高校の競合先は、公立高校です。

極論言えば、生徒がすべて公立高校に流れれば、私立高校は立ち行かなくなります。

確約制度があることで、ある程度の生徒確保になるわけです。

公然型確約制度でも同じメリットを得られますが、中学校が先ほど述べた、成績に関する問い合わせが増えるかも知れないというリスクを背負います。

私立高校は、中学校からの評判をとても気にするので、中学校がいやがると、私立高校はそれに従います。



では、今から、筆者の考える密約型確約の問題点を書きます。

ちなみに、筆者の勤務する地域では、多くの私立高校が密約型確約を採用しています。

私は日々、おかしいなぁ、気持ち悪いなぁ、と感じながら、進路指導をしています。

まず何より、評定というものが生徒の進路を大きく左右してしまうことに強い疑問を感じます

評定を高校入試の合否判断材料にすることに筆者はそもそも反対の立場です。

その理由は以前の記事で書いたので省きますが

確約制度の場合、評定が合否に影響するどころか、評定で合格が決まってしまうわけです。

特に、密約型確約の場合、そんなことが生徒・保護者の関知しない水面下で決まっているのです。

これおかしくないですか?

次の問題点は、努力が報われなくなる可能性があることです。

例えば、中3の夏くらいまで全然勉強してこなかったため、評定が悪い生徒がいるとしましょう。

その子が秋くらいから必死に勉強し、実力をつけて、試験当日とても良い点数を残したとしましょう。

しかしその子は、評定が悪かったため、確約条件を満たしていませんでした。

この場合、確約条件を満たす子に優先して合格が出されるため、確約条件を満たす子の数と定員数次第では、その子はとても良い点数だったにもかかわらず、不合格になる可能性があるわけです。

そのような合否判定が行なわれていると、はじめから公開されているならともかく、それが水面下の判定だなんて、私には気持ち悪いことだとしか思えません



確約制度自体はあって良いと思います。

高校入試は、大学入試と違い、15歳の少年少女が行なうのです。

「合格校が1つも無い」という現実を突きつけるのは、残酷すぎます。

しかし、その確約を評定で決めるのはどうかと思いますし

ましてやそれを水面下の密約ですすめるのは、健全なことだとは思えません。

では、どうするべきでしょうか。

私は、県教育委員会が主催して、県統一の1次試験を行うということを提案します。

イメージとしては、センター試験です。

私立高校は、その1次試験で何点以上取ったら確約、というのを併願の場合と単願の場合に分けて、公表します。

それを踏まえ、保護者は、必要に応じて私立に確約を申請し、私立高校と家庭で約束を交わします。

それで終わりの子もいれば、確約は無いけど私立の当日試験で勝負をかける子も出るだろうし、確約のある私立を併願先として公立を受験する子も出るわけです。

公立高校入試は、従来の学力検査が2次試験になります。

1次試験と2次試験の点数を総合して合否判定します。



長くなってしまいました。

私の意見を箇条書きでまとめます。

・高校入試の合否判定材料に評定を用いることにはそもそも反対。
・進路保証の観点から、確約制度はあっても良いが、確約条件を公開した上で行なうべき。
・確約条件に、評定を入れるべきでは無い。
・県教委主催の、県統一1次試験を行なえば良いのでは。




某医科大学の入試不正問題では、性別で不適切な合否判定が行なわれていました。

果たして、密約型確約における合否判定は、適切でしょうか?

ちなみに、私の勤務する県の進路指導は、密約型確約が根底にあります。

密約型確約が御法度とされたら、システムが覆ります。

ですから、私がどこの県の人間なのかは、聞かないで下さいね。



番外編です。



この記事・番外編を踏まえ、ご意見をお聞かせ下さい。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (mihoko)
2019-02-11 11:40:59
北辰テストかな?
他県民からすると、変な入試ですね。
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Unknown (筆者)
2019-02-11 17:32:05
コメントありがとうございます。

筆者が話題にしたのは、北辰テストの事ではありません。
ちなみに筆者は、北辰テストは比較的健全だと考えています。
なぜならば、県下の中学生の多くが受けるテストの偏差値が確約条件になるからです。
私が記事で提案した「統一の一次試験」に近いものだと考えています。
(もちろん、それが外部模試であると言うことは問題ですが)

筆者の勤務する県では、ほとんど評定で確約が決まります。
繰り返しになりますが、私は評定なんて現場教師のさじ加減一つなので、合否判定材料に用いるべきではないと考えます。
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