「戦争は実に人を禽獣化するものであります。」(内村鑑三) この言葉は少しおかしいと思う。第一、禽獣は戦争はしないし、個体間で争いがあったとしても、同種間で殺し合うことはほとんどない。種の保存本能が働くためである。先の大戦や、今回のウクライナ戦争で、ますます人間の理性は信用を失ったと思われる。カントも言うように、理性は暴走しがちであるし、フランクフルト学派が言うように道具的理性に成り下がることもある。禽獣は理性によって戦争をしないのではなく、本能によって戦争をしないのである。本能には深い知恵が隠されている。理性は時に浅はかである。自分の知恵だけで全てが分かると錯覚する。理性が正しく、本能は間違っていると考えるのは、少し違うのではないかと思う。
荒井公康