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冬のソナタに恋をして

不可能な家


ユジンはチンスクの家からポラリスに寄って仕事をしていた。フランスにいる間も、ポラリスの仕事を請け負いつつ勉強をしていたので、帰ってきてもすぐになじむことができていた。ユジンが設計図を見ていると、ジョンアが建築雑誌を片手に走ってきた。



「ねえ、ユジン。これを見て。これってあなたが昔設計した”不可能な家“だよね?あなたのアイデアを誰か盗んだんじゃない?設計図を誰かに見せた?」

その家は、ユジンが設計してチュンサンに会ったときに模型を渡した家だった。ごく駆け出しの頃、初めて設計をした家だったけれど、クライアントにコストが高すぎて実際に建てるのが不可能だと言われてしまった。胸のずっと奥に閉まっていた『不可能の家』


ユジンは雑誌を見ながら実際に建てられた家の美しさに目を細めて驚いた。


「オンニ、お願いがあるんだけど、これがどこにあるか調べてもらえる?」

その結果、その家は外島という島にあることが分かった。韓国の南にある釜山から1時間半ほどバスに揺られた巨済島に行き、巨済島からフェリーに乗って数十分かかるそうだ。



ユジンは隅から隅までその建築物についての記を読んだが、建物の優美さや美しさは分かったものの、誰が建てたのか記載されていないので、頭を悩ませるばかりだった。でも、本当はわかっていたのだ。これを建てられるのはチュンサンしかいないと。これは彼女が夢をチュンサンだけに語った思い出の家、愛する人の心の家なのだ。彼はいつこの家を建てたのだろう。そして、今彼はこの家に住んでいるのだろうか。彼が居てもいなくても、一目だけで良いので、どうしてもこの家を自分の目で見て見たかった。チュンサン、あなたと会わない約束はしたけど、家を見るぐらいはいいよね?あなたはどんな思いでこの家を建てたの?ユジンは思い出の中の彼に問いかけた。そしてなおもしばらく考えてからジョンアに告げた。

「オンニ、わたし明日外島に行ってみる」

突然の決意に驚いたジョンアだったが、ユジンはいつもいったん決めると梃子でも動かないタイプと知っている。ジョンアは苦笑いしながら、ユジンを送り出すのだった。

次の日、ユジンは朝一番に釜山に向けて電車に乗っていた。釜山までは4時間弱もかかった。その日の空は快晴で、まるでチュンサンたちと放送部の合宿に行った時のようだった。あのときは2人ともケンカをして口も聞かなかったな。ユジンは懐かしく感じた。そのあとは巨済島までバスで揺られた。いつものように、バスの一番後ろの席に座ってみる。チュンサンと高校時代に一緒に座ったこと、南怡島に授業をサボって行ったことを懐かしく思い出した。そのうち、早起きの疲れでうとうとしてしまい、気がつくと強い潮の匂いを感じて目が覚めた。「遅刻大魔王」と笑うチュンサンの声が聞こえてくるようだった。バスはいつの間にかフェリー乗り場に到着していた。いよいよ、外島に行けば、チュンサンとの思い出に会える、ユジンは胸の高鳴りを抑えきれなかった。

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