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冬のソナタに恋をして

発覚



サンヒョクは漆黒の闇の中を走り続けているような気分だった。車のハンドルを握る手は、関節が浮き上がるほど強く握り締められており、歯を食いしばらないと叫びたい出したくなるほど、激しいショック状態に陥いっていた。
 

それは、数時間前彼がユジンと別れで自宅に帰宅したときに起こった。サンヒョクが父親のジヌと話そうと書斎を訪れた時、彼はチュンサンとのDNA鑑定書をデスクに並べて考え込んでいた。そこには確かに2人の間に親子関係がある、と書かれていた。ジヌはこの事実をどう妻と息子に話そうか、悩みに悩んでいた。そこに息子が帰ってきて、思いがけない話を始めたのだった。
「僕、ユジンとやり直そうと思ってるんだ。彼女は今、チュンサンとのことでとても傷ついている。そんな彼女を支えてあげたいと思っているんだよ。きっとお母さんは反対すると思うから、父さんは僕の味方になって欲しい。」
ジヌはサンヒョクの思いに驚き言葉に詰まってしまった。のタイミングでサンヒョクになんといえばいのだろうか。
「、、、ユジンはやり直すことに賛成してるのかい?」
「いいえ、彼女はチュンサンのことを忘れられないんです。それでもいいから、僕はそばにいてあげたいと思ってます。」
「じゃあ、彼女はチュンサンのことをまだ愛してるってことなんだな?」
「、、、はい」
「反対にチュンサンはどうなんだ?彼も同じ気持ちなのか?」
「、、、そうですね」
サンヒョクは仕方なく答えた。
「、、、それなら、、、それなら私はお前に協力することはできないよ」
「父さん?」
するとジヌは目をそらし、うつむいてしまった。ここで息子に真実を告げなければ今以上に傷つけてしまう。部屋の中を永遠とも思えるような沈黙が支配した。やがて意を決したジヌが、小さく息を吐いて話し始めた。




「それならユジンはチュンサンの元にいかせなければいけないよ」
「父さん?」
ジヌは顔をしかめて天を仰いだ。早く、早く言わなければ。
「違う、全部誤解だったんだ」
「誤解?」
「、、、全部間違いだったんだ」
「父さん?」
父はいったい何を言いたいんだろう?サンヒョクはジヌをじっと見つめた。
「彼は、、、彼は、、、私の息子なんだよ」
ジヌの目には涙が浮かび、唇はワナワナと震えていた。サンヒョクは今聞いた言葉が信じられず、呆然と父親は見つめていた。しかし、いくら見つめていても、父親はそれ以上何も言わず、ただただ涙をこぼすだけで何も答えてくれはしなかった。サンヒョクは今聞いたことを信じたくなくて、今しがた降りた車に飛び乗ると、ふたたび夜の街を疾走しはじめた。
 ジヌも慌てて息子を追いかけて、外に飛び出し
たが、息子の車は遥か彼方に走り去っていた。ジヌは肩が落として、家の中に入ると、そこには、鬼の形相の妻のチヨンが立ち尽くしていた。


チヨンは飛び出していくサンヒョクを見送ったあと、夫の書斎に息子が飛び出したことを告げに行った。すりと今度は夫も息子を追いかけて、外に出て行ってしまった。彼女は書斎に一人きりになったため、ふとデスクの上の書類に目を止めた。それは夫とカンジュンサンの親子関係を示すDNA鑑定書だったのだ。
 チヨンは鑑定書を片手に持ったまま泣きわめき始めた。
「あなた、これはどういうことなのよ?!」
ジヌは泣きわめきながら自分を叩き続ける妻をなだめすかすしかなかった。自分のした一度の過ちで、家族全部が壊れてしまったのだ、と思いながら。
 その頃、サンヒョクはあてもなくソウル市内を走っていた。人気のない道路に車を止め、何時間も何時間も考え込んでいた。左手の婚約指輪を見つめたり、空を仰いだり、タバコを吸ったりしても、一向に気分は晴れなかった。自分の父親とカンミヒが付き合っていた?いったいどういうことなんだ?サンヒョクの頭は大混乱していた。チュンサンとユジンが兄妹でないから、これでふたりの結婚を阻む壁は一切なくなってしまう。そして父親が同じだから、自分とチュンサンは異母兄弟になる。愛するユジンと義弟の立場で一生付き合わなければいけないなんて、今の自分には耐えられそうになかった。そして、何時間も考えた後、かれは一つの結論に達したのだった。すべての元凶はチュンサンにある、チュンサンが生まれたことで、10年まえの秋に春川第一高等学校に転校したことで、そして今年の冬にミニョンとしてユジンの前に現れたことで、それですべてが狂ってしまったのだと。全部、全部チュンサンのせいだ、ユジンとの仲も、家族の仲も、全てがめちゃくちゃになってしまったのだ、、、。サンヒョクは彼に対して今までで一番強い憎しみを覚えていた。そして夜が白々と開け始めた頃、決意を新たにどこかに車を走らせるのだった。
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