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「僕たちもう一度やり直さなか」
サンヒョクの口から思いもかけない言葉を聞いたユジンは、みるみる顔を曇らせて、黙ってしまった。二人は暗闇の中でしばらく立ちすくしていたが、やがてサンヒョクが促して、車の中に移動するのだった。かつてのように、運転席と助手席に二人が座ると、サンヒョクはぽつりぽつりと話し始めた。
「君がつらいのはわかってる。君が一生チュンサンを忘れられないのも知ってる。でも、君とチュンサンは決して結ばれない運命なら、黙が君を守りたいんだ。チュンサンを忘れなくていい。でも、つらいときは僕を信じて頼ってほしいんだ。君が一人きりで苦しむ姿を、もう見たくないんだよ。ただそばにいたい、、、」
しかし、ユジンは静かなまなざしでサンヒョクを見つめて言った。
「サンヒョク、そういってくれて本当にありがとう。でも、それはできないのよ。」
「ユジン、今決めなくていいから。」
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サンヒョクは必死のまなざしでユジンを見つめている。しかし、ユジンは今度こそきちんと断らなければ、サンヒョクにも自分にも良い結果に決してならないとわかっていた。ユジンは視線をそらさずに言った。
「ごめんね。サンヒョク、今はチュンサンのことしか考えられないの。」
しかし、サンヒョクはなおもあきらめなかった。
「ユジン、急ぎすぎたようだね。でも、今の言葉が本心なんだ。ちょっと考えてみてくれ。僕はいつまでだって君を待っているから。」
ユジンはそんなサンヒョクにため息をついた。いくら言葉を尽くしても、サンヒョクはあきらめてくれない。やはりこのままフランスに留学して、サンヒョクの目の前からも消えた方がよいだろう。そうすれば、自分のことなど忘れてくれる、ユジンはあらためて韓国を去る決意をするのだった。
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そんな二人の会話を、木の陰からそっと聞いている人物がいた。チュンサンだった。会話のすべては聞こえなかったが、二人の様子から、やはりサンヒョクはユジンのことがまだ好きなんだ、と切ない思いで彼を見つめていた。ここに来るまでは、ユジンに兄妹ではないことを打ち明けてしまいたかった。しかし、ユジンにとっては、命に係わる病気を持っている自分と過ごすよりも、前途有望で優しいサンヒョクと一緒になった方がよいのかもしれないと感じていた。チュンサンはユジンに会うのをあきらめて、そっとその場を後にするのだった。