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二人はユジンのアパートに向かって最後のドライブをした。二人とも口を利かず、ユジンは呆けたような顔をしてうつむいていた。アパートに着くと、チュンサンはノロノロと車を降りて助手席のドアを開けた。ユジンがゆっくりと車を降りると、チュンサンは一つため息をついて車を降りた。
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「、、、明日は空港に見送りに来ないで。君を置いていくのはつらいから。」
チュンサンは涙ぐみながら話した。
「、、、わかったわ」
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ユジンも目に涙を浮かべながらも、チュンサンの顔をまっすぐに見て応えた。
「それからどこにいてもちゃんと食べてしっかり寝てね。そして強く生きると約束して。」
ユジンはけなげにうなづきながら
「わかったわ。約束する」
と答えたが、今にも泣きだしそうだった。
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「それから、僕たちもう会うのはやめよう。あの日の海辺の思い出だけを最後に、良い思い出だけを覚えておこう。約束できる?」
そういうと、チュンサンは両目からぽろぽろと涙を流した。それにこたえるように、ユジンも涙を流し始め
「わかった、約束する」と強くうなづいた。チュンサンもユジンも、生涯この約束を守ろうと決めていた。チュンサンは力なく
「よかった、、、」
とつぶやき、心を決めたように小さく息を吸うと
「もう行くね」
と言った。
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その時、ユジンはチュンサンの左腕をぎゅっとつかんだ。声にはできなかったが、本当は行かないでと言いたかった。しかし、チュンサンの悲しそうな顔を見ると、力なくその手を放して
「元気でね」
とささやくような声で言った。チュンサンは重い足取りで車に乗った。そんな彼をユジンは見送らず、振り返ることなくアパートに入っていった。今振り向くと「行かないで」と泣いてしまいそうだったから。でも、それでは何の解決にもならない、どんなに好きでも彼と自分は兄妹なのだから。
チュンサンもまた、力ない足取りでアパートに入っていくユジンをじっと見つめていた。本当は「僕たちは兄妹ではないんだ」と言って抱きしめたかったが、彼にはそれができなかった。なぜなら、自分は死にゆく人間であり、死ななくても障害を負ってしまうのだから。これ以上ユジンを苦しめることはできなかった。ユジンはもう十分苦しんだのだ、彼女には幸せになってほしい、チュンサンは意を決して車を走らせるのだった。
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ユジンはチンスクを起こさないようにそっと自室に入り、ドアを静かに閉めた。すると、さっきから我慢していた悲しみが一気にあふれてきた。もはや立っていることさえできないくらいの悲しみがあふれてきて、崩れ落ちるように座ると、延々と泣き続けるのだった。そんなユジンの様子を、窓の外から月だけがやさしく照らしていた。こうして二人の最後の夜は更けていった。