皆さまこんばんは。いつもご訪問ありがとうございます。今日から20話の前に創作話を入れていきます。主に前からリクエストをいただきだいていたミヒ、ヒョンス、ジヌ、ギョンヒの日々を書いてみました。本編のセリフをもとに、分からないところは推測で書いてますので、実際のところは分かりませんが、どうぞよろしくお願いします。
その後のストーリーで、アイデアをありがとうございます😊2年前に書き始めたときは一人きり、それが皆さまに支えられて今になりアイデアまでいただける!なんて素晴らしいブログ生活でしょう。感謝感謝です。チュンサンは双子だったとか、実は失明したふりをしてた(笑)とかでも良いです。アイデアをお待ちしてます。
写真は主に韓国の旅行会社の春川近郊の風景写真をお借りしてます。ありがとうございます😊美しいですね。いつかまた旅行に行きたいと思います。
カンミヒは春川では有名な旧家の一人娘として生まれた。時代は朝鮮戦争の休戦から日は浅く、その日の食べ物にも困る家庭もあるほど、まだまだ貧しい時代だったと言える。そんな中、ミヒは何ひとつ不自由なく蝶よ花よと育てられた。幼い頃からバイオリンや朝鮮舞踊などやりたいと思うことは何でもやらせてもらえた。ミヒは幼少から非常に美しく、賢い子供だった。いつしか彼女は自分のことを万能で望むものは何でも手に入る人間だと思うようになっていた。
そんなミヒが雷に打たれるようにすぐに夢中になったのが、ピアノであった。ある日ラジオから聴こえる物悲しげな曲に心を奪われてしまったのだ。やがてそれはベートーヴェン作曲の『月光のソナタ』という曲だと知り、幼いミヒは両親にピアノをせがみ、やがてレッスンを受け始めるようになった。そしてすぐに才能の片鱗を見せ始めると、両親は非凡な我が子に狂喜乱舞した。しかし、春川という片田舎ではピアノのレッスンを受けるのは容易ではなかった。そこで両親は春川の家の他に、ソウルにもう一軒家を購入して、ソウルでレッスンを受けるべく両方の家を行き来する生活を始めた。その結果、ミヒはあっという間にコンクールで賞を獲得するようになり、天才児の名をほしいままにするのだった。
月光のソナタ
それでも春川に生活の基盤を持っていたミヒは、ある年の3月に春川第一高校へ入学した。そして、春のうららかなある日、ミヒはチョンヒョンスと出会ったのだった。その日ミヒは音楽室でピアノを弾いていた。それは教師から校歌の伴奏を頼まれたからだったが、しかしあっという間に間に弾けるようになったミヒはつまらなくなり、こっそりと『月光のソナタ』を弾きはじめた。そして視線を感じてふとピアノから目を上げると、そこには小柄なニキビ面の少年が、まんまるな目をして自分を見つめて立っているのだった。どうやら彼は掃除の途中に、ピアノの音色を聞きつけて入ってきたようだった。少年は手にほうきを持ったままおずおずと話し始めた。
「それなんて曲?」
「何だと思う?」
ミヒは挑戦的な目で少年を見つめた。
「わかんないや。だってピアノの曲を聴くの、初めてなんだから。」
「ふーん。この曲好き?」
少年は小首を傾げた。
「、、、うーん。分からない。でも、なんだか悲しい曲だと思う。」
少年はそう言うと、くるりと向きを変えて去って行った。ミヒは率直で優しい目をしたその少年の事を、なぜか気になって仕方がなかった。
ミヒとヒョンスは一緒のクラスではなかったが、出会い以降いつも目で追うようになっていた。不思議なことに、ヒョンスは特別格好がよいわけではなかったが、いつもみんなの中で目立っていた。それは、常に穏やかで優しい彼の周りには自然と人が集まってきたからだった。さらによく見ると、彼はとても率直で誠実なのであった。誰隔てなく親切にして、常に気を配っている様子が見てとれた。ミヒはそんな彼に好感を持ちはじめた。やがてヒョンスも、音楽室でピアノ音が聴こえると、時々足を運ぶようになった。はじめは部屋の隅に立っているだけだったが、やがて少しづつ近づいてくるようになり、やがてはピアノのそばで熱心に耳を澄ますようになった。ミヒはそんなヒョンスにいろいろな曲を弾いて聞かせるようになった。ヒョンスはミヒが弾く曲を何一つ知らないようだったが、「今日は楽しそうな音色だ」「今日は悲しいことがあったの?音が悲しい」「この曲はあまり好きじゃない。もう少しテンポよく弾いたらどうか」などいつも率直な意見を聞かせてくれるのだった。やがてミヒとヒョンスはお互いに好意を持ち合うようになるのだった。
しかし、ミヒとヒョンスの関係はそう簡単ではなかった。ミヒはピアニストになる目標があり、しょっちゅう春川とソウルを行き来して、音大に入る準備をしていたし、ヒョンスは貧しい木工所の長男として、4人の弟妹を食べさせるべく、放課後はすぐにうちに帰って家業を手伝わなければならなかったのだ。二人は学校でのわずかな時間におしゃべりを楽しんで、愛情をはぐくんでいくのだった。
やがて、穏やかな高校の3年間は終わり、卒業した二人は別々の道を歩むことになった。ミヒはソウルの有名音大へ、ヒョンスは春川で実家の木工所を継いで、大工を目指そうと頑張ることになった。ミヒは生活の基盤がソウルに移った。
ソウルでの大学生活は希望と刺激に満ちていた。大学の友人は音大に行けるほどの両家の子女ばかりだった。そのため、おいしいものを食べたり、ブランド物の洋服で着飾ったり、やはり同じような両家の子息と遊びに行ったりして、春川では考えられない生活を満喫していた。その一方でピアニストになるべく、必死に練習をする一面もあった。かたやヒョンスの毎日は生活に追われていた。ほぼ年子で生まれた4人の弟妹のために、ヒョンスは必死で働いていた。4人ともどうにか高校を卒業させたかったため、遊ぶ暇もなく必死で毎日働くしかなかった。
そんなすれ違い生活だったが、ミヒとヒョンスは手紙や電話でやり取りをして、ミヒが春川に帰ってきたときには街中を散歩するなど、素朴なデートを重ねていた。ミヒが都会生活で疲れると、ヒョンスはいろいろな愚痴を優しく聞いてくれた。彼女はたとえ生活スタイルが違っても、彼を深く愛していた。ミヒの周りには、美しい彼女を射止めようとする青年たちがたくさんいたが、ヒョンスのように純粋に自分を愛してくれる青年はいなかった。都会では皆が打算的で利己的に見えて信用出来なかった。ミヒはますますヒョンスを心の拠り所にするようになっていった。ミヒはソウルでピアニストとして成功するために、しのぎを削って他人と競争していたので、ヒョンスのような安心できる居場所が必要だったのだった。
しかし、田舎の春川では、貧しいヒョンスと旧家のお嬢様のミヒがデートしていることがうわさになり、ついにはミヒの両親が知るところとなってしまった。当然ながらミヒの両親は貧しい一族の出身であるヒョンスとの交際を猛反対した。ミヒはそんな両親を黙らせるべく、ヒョンスに結婚しようと持ちかけた。ヒョンスは『弟妹が高校卒業するまでは結婚は待ってほしい』と告げた。二人は話し合って、『婚約』と言う形をとった。ヒョンスは木工所の仕事のほかにもう一つバイトを掛け持ちして、ミヒに小さなダイヤモンドの指輪を贈った。そして二人でミヒの両親にあいさつに行くのだった。