2014-04-05
4.地球を目指す理由
「オレ達が、地球へ行くって話か?」
「…タケルだっけ。それより、オマエはこれからどースンだよ? 」
「オレ達、一応、自己紹介してたンだけどな…。
オマエ、聞いてなかったろ! 」
「てか、耳悪くて、聞こえてなかったンじゃねーの? コイツ」
大きい少年達が、まるでケンカでもふっかけるような雰囲気で、タケルを挑発し始めた。
「オレたちゃなぁ。地球にいられなくて、家族で宇宙に出てきた奴らばっかりなンだ」
「まぁ家族旅行なンて、テイサイのいいこと言ってたけどさ。
家族ごと地球にいられなくて、出てきたのさ。
親に地球で仕事がないから、借金して宇宙で仕事見つけようってね。
正直、宇宙ステーションに戻って家族に会ったところで、先が見えねンだよな。
警察に、オレらがやってたことがバレたら、
子供でも、監獄みたいなトコに入れられるらしいし…」
「たとえ、そこから出て来れてもな。
親に会えるかわかんないし、借金できるかわかんないけど、
金があったら、親を探して旅を続けるしかないってわけさ。
でも、ウィンディが地球に帰ろって言うから、
オレ達だけで地球に戻ってでも、生きてくとこ見つけたらいいジャンって、
ちょっと期待してたンだ。
だけどなぁ…。
オレ達だけじゃ、信用ないよな…。
何しても、海賊みたいに疑われるだけだし…」
「親に暴力振るわれて、一緒にいたら命だってあぶねぇ奴もいるンだ。
家族が他のトコに移って、オイテケボリの奴もいるし、
誰かが、メンドウ見てやンないとな…」
最初は、威勢よく話し始めた少年達に、またケンカが始まるのか、とビビッていたタケル。
本音を聞いてみると、みんな悩みをかかえ、不安に思いながらも、仲間を助けようと思っていることがわかって、ちょっとホッとした。
「そうか。みんなも、先のことわかンないンだよな…。
オレだって、いつ耳が聞こえなくなるンだろうって、
それが不安で、気が狂いそうだった…。
でもさ…。
オレ、自分の耳が聞こえないことばっか心配してたけど、
オレの知らない世界で、もっとひどい目に遭ってる子がいるンだよな…。
オレと同じくらいの年の子が、大人に好き放題ヤラレテ、挙句に殺されるなンてな…。
何だか、耳が聞こえないくらいで悩ンでるのって、ちっぽけな気がしてきた。
オマエら、これから宇宙ステーションに帰って、どうするンだ?
オレ…、オマエらに、何かできることないか…? 」
タケルの問いかけに、少年達はそれぞれに思いをめぐらせた。
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