2010-02-08
5.新たな人質
悪党達が乗っている宇宙船が、ガシャンと音をさせて、こっちの宇宙船とつながるまで、どこへ逃げることもできない子供達は、身動きもできなかった。
ただ、キララだけは冷静にその様子を見ながら、他の子供達をなだめるようにこう言った。
「悪いけど、アタシは消えるよ。
自分達がどうすれば助かるかを考えて、行動してくれ!
アタシもアンタらを信じてるからネ…」
タケル以外の子供達は、だまってうなずいた。
キララは、スーッと消えた。
タケルはひとり、舌をチッと鳴らした。
『また、キララにふりまわされちまうのか・・・』
「ハッチを開けろ!」
ダミ声が響いたあと、アース・キャプテンは、あわててハッチを開ける操作をした。
「ほら、オメェ達もこんな風に縛ってやるから、じっとしてな!」
ハッチが開いて現れたのは、鎖でつながれた若い男と、その鎖を引っ張りながら、銃を抱えた人相の悪い中年男だった。
タケルは、その若い男を見て、ハッとした。
宇宙ステーションで、タケルがアニキと呼んでいたMFiエリアの技師だ。
『アニキ…何で、こんな男達に捕まったの…? 』
そんなタケルをしり目に、ぞろぞろと悪態をつきながら、仲間らしい男達が入って来た。
子供達は船の空間を利用して、最大限逃げようと試みるが、男達が2、3人がかりで押さえつけるので、抵抗しては殴られながら、鎖に縛られていった。
「おい、早くしろ! 誰が通報したかわからんが、警察が捜査を始めたらしいぞ!」
また、ダミ声が響いた。
タケルは、ヒロだと思った。やっぱりあいつは、頼りになる。
タケルは無駄な抵抗はせずに縛られたが、なるべく空気を身体に入れて、鎖につながるようにした。
悪党達は、子供達を別の宇宙船へと移した。
キララが連れてきた、アース・キャプテンと言っていたおじいさんは、悪党の前でおとなしく頭を下げて、言われるがままついて行った。
悪党達の宇宙船では、狭い空間にギュウギュウ詰めにされて、息をするのも苦しかったが、
勇敢でかっこいいパトロール隊が必ず助けてくれると、タケルは信じていた。
『それにしても、なぜアニキがこんな所に…?
キララも、いったいどこに隠れているンだ…? 』
その船が、どこかへと移動を始めたことは何となくわかったが、どこへ行くつもりなのか、見当もつかない。
遠くの方で、ボーンという音がしたようだ。
タケルには小さな音だったが、他の子供達はおびえたように、今まで乗っていた宇宙船が、爆破されたことをささやきあっているようだ。
『そういえば、ニックの奴はどうしたンだ?
あいつ、あのまま宇宙船の中でくたばっちまったのかな…?
でも、キララはあいつのことほっとくわけないし…。
キララも助ける気がありゃ、早くしろってンだ!
全部アイツが悪いんだ。アイツのせいなンだ!
オレ達をヘンなことに巻きこんで、こんな目にあわせといて…
自分だけシャシャッと隠れやがって~ 』
タケルのキララに対する怒りが込み上げてきた。