連れずれの記

声なき者の叫びを映す(思い上がりのたわ言)

まひるの情景Vol.1

2024-03-24 13:21:34 | 夢の中の話
  春白昼(はるまひる)ここの港に
  寄りもせず 岬を過ぎて行く船のあり

「 若山牧水 」

  歌集「別離」の巻末の歌

 無学で本も読まず、流浪して下田の町を
 さまよい暮らしていた頃に、知り合いの
 経営する喫茶スナックで額にはいっていた
 此の短歌が50年たっても覚えている。
 何ともないような下田の情景だが、海岸沿いの
 ホテルで、エセバンドマンだった時に春の午後
 けだるいような五階の窓からの情景が
 此の「歌」にぴったりだった。きっと
 易しい文面が読みやすく、暗記できたのだ。
 初めて、日常をさらりと詠んだ「歌」に
 惹かれたのだろう。啄木や賢治のような詩人、
 作家と違う空気感が人間らしさを、共感させて
 くれたから、心に残ったのだろう。


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