降臨。

おとといは、打ち合わせ兼ねがね
お酒を頂いてた。

お相手は巨匠。もっとも親しい仲
間内ではこう呼ばせて頂いている
のがその筋では名の通った本物の
巨匠。前回から少々時間をおき
いつもの小料理屋にて二人ではじ
めた。

今日の巨匠は何か違う。そう、い
つもにまして饒舌かつ熱気がする
どうも、ここしばらくの間にこれ
までの案件についてお考えがまと
まりつつあるようだ。そして目が
変わったこれは巨匠の目だ。どん
なにご立派になっても常人には到
底たどり着くことはありえないな
い本当の巨匠の証。
こうなるともう、羨望の眼差しな
どではその傍らにすらいる事も叶
わない。ほんの一瞬でも気を許せ
ばこちらがやられてしまう、その
気迫。ついに来た、ここからが本
番。いっそう気を引き締めてかか
らねば。

そういえば、巨匠は私が喋ってい
ると肴の手をぴたりと止めて頷き
ながら聞き入っていた。この時の
目も更に気迫がこもっていた。
きっとここで力を使い果たした為
に病魔にやられてしまったのだろ
う。まだまだ修行が足りない。