「いっちゃんルートの譲二さん」に関しては、続編のスパハピから始まって、譲二さんが出てくる回のみの話を飛び飛びに書いてきた。
だから、全部通して読んでも話が繋がらないと思う。
もちろん、吉恋のいっちゃんルートを読んだ人対象の話ではあるから、それでもいいのかもしれないけど。
ハルくんルートや譲二さんルート(こちらはブログ名になるくらい本命だからだけど)に比べて、量が少ないのはちょっと寂しい。
というわけで、今まで書いてなかった部分も譲二さん目線で振り返ってみようと思う。
☆☆☆☆☆
頼れるみんなの兄貴として、ヒロインと幼なじみたちとの恋愛模様を応援しつつ、自分の気持ちには蓋をして、ちょっと落ち込んでみたり…。
そんなちょっと情けないけどラブリーな譲二さんを王道のいっちゃんルートでウオッチングしてみようと思う。
自分のルートのヒロインにも自分から告白できない譲二さん。
そんな譲二さんが他人のルートのヒロインに気持ちを打ち明けられるわけも無く…。
☆☆☆☆☆
譲二さんの愚痴(佐東一護本編5話)~その2
翌日、百花ちゃんが学校で使うものを取りに帰ってきた。
階段の踊り場に積み上げた本のダンボールをすり抜けて、部屋に行ってもらう。
譲二「ごめんね。通りにくかったでしょ?」
百花「いえ、なんとか通れましたから…。でも、マスターは通れるんですか?」
俺は苦笑しながら答えた。
譲二「うん。カニ歩きで通ればなんとかね」
百花ちゃんが吹き出した。
百花「カニ歩きですか?!」
ああ、やっぱり百花ちゃんは笑顔が可愛いな。
譲二「せっかく来たんだから、コーヒーでも飲んで行ってよ」
百花「でも、お店を手伝わないと…」
譲二「コーヒー一杯飲むくらい大丈夫だよ…。あ、コーヒーよりもココアにする?」
百花「はい。じゃあ、ココアで…。最初の日に淹れてもらったココア、なんかいい匂いがして美味しかったです」
譲二「そっか、気に入ってもらえてよかった。あれはね、ちょっぴりラムが入ってるんだ」
百花「ラム?」
譲二「うん。ラム酒のこと。うちのココアはかなり甘ったるいから、ラム酒を入れるとちょうどいいんだ」
百花「そうなんですか」
☆☆☆☆☆
百花ちゃんはココアを一口飲むと呟いた。
百花「美味しい…。それにこの香り…、これがラムなんですね」
譲二「百花ちゃん、あれから一護とは話せたの?」
百花「はい…。一護くん、手伝いせずにゲームセンターに行ってたらしいです…」
譲二「一人で?」
思わず聞いて、「しまった」と思った。
百花ちゃんの顔が曇ったからだ。
百花「プリクラ撮るって約束したからって言ってました…」
一護とプリクラ撮りたがるのは、きっと女の子だよな…。
譲二「そっか…」
だけど、行ってみて、一護が一番後悔したんじゃないかな…。
きっと、百花ちゃんといた方が楽しかった、と思ったことだろう。
百花ちゃんがポツリと言った。
百花「一護くん、商店街のことが嫌いなのかな…」
譲二「一護がそんなことを言ってたの?」
百花「『今時、商店街とか、はやんねーだろ?もうショッピングモールの時代だろ』なんて、言ってました…」
譲二「そっか、でも、それが一護の本心って言うわけでも無いんだろうしね」
百花「倫護おじさんがケーキ作りを見せてくれようとしても、すぐに出て行くし。一護くんのお母さんもケーキ屋が恥ずかしいのかもって言ってました」
百花ちゃんが小さな溜息をついた。
譲二「前にハルが言ってたけど、学校でケーキを作る機会があった時に、何やかんや言いながら、一護は上手に作ってたらしいよ」
百花「一護くんが…?」
譲二「素直になれないだけで、本当は倫護さんのケーキ職人の腕とかも自慢に思ってるんじゃないかな」
百花「そうでしょうか?」
譲二「倫護さんは職人気質だから、一護に対しても厳しいんだろうけどね」
百花「そうなんです」
譲二「でも、百花ちゃんは手伝ってて楽しいんだろ?」
百花「はい。倫護おじさんのケーキ作りは見てるだけで面白いです」
譲二「だったら、百花ちゃんが手伝ってたら、そのうち一護も少しずつ覗きに来たりするんじゃないかな」
百花「だったらいいんですけど…」
譲二「きっと大丈夫だよ」
一護が百花ちゃんを好きな事は間違いない。
だから、百花ちゃんが佐東洋菓子店を手伝うことで、ぎくしゃくしている一護と倫護さんの間が少しずつ上手く行くようになればいい。
俺は安心させるように百花ちゃんに微笑んだ。
譲二さんの愚痴(佐東一護本編5話)おわり