「いっちゃんルートの譲二さん」に関しては、続編のスパハピから始まって、譲二さんが出てくる回のみの話を飛び飛びに書いてきた。
だから、全部通して読んでも話が繋がらないと思う。
もちろん、吉恋のいっちゃんルートを読んだ人対象の話ではあるから、それでもいいのかもしれないけど。
ハルくんルートや譲二さんルート(こちらはブログ名になるくらい本命だからだけど)に比べて、量が少ないのはちょっと寂しい。
というわけで、今まで書いてなかった部分も譲二さん目線で振り返ってみようと思う。
☆☆☆☆☆
頼れるみんなの兄貴として、ヒロインと幼なじみたちとの恋愛模様を応援しつつ、自分の気持ちには蓋をして、ちょっと落ち込んでみたり…。
そんなちょっと情けないけどラブリーな譲二さんを王道のいっちゃんルートでウオッチングしてみようと思う。
自分のルートのヒロインにも自分から告白できない譲二さん。
そんな譲二さんが他人のルートのヒロインに気持ちを打ち明けられるわけも無く…。
☆☆☆☆☆
譲二さんの愚痴(佐東一護本編1話)~その2
夜になって雨が降り始めた。
百花ちゃんは大丈夫かな?
まあ、傘くらい一護んちで借りて帰るだろうけど。
看板を入れるついでに外に出た。
通りの向こうから人影が二つ見えた。
差した傘は一つだ。
あれは…。
慌てて店に入り、素知らぬ顔で店の片付けを始める。
♪カラーン
百花「ただいま、戻りました」
譲二「おかえり…濡れなかった?」
百花「いえ、一護くんが送ってくれたので…」
そっか、やっぱりあの影は一護と百花ちゃんだったんだ。
百花ちゃんは俺に聞かれるまま、佐東洋菓子店でのことを話してくれる。
百花「初めての店番は結構大変だったけど、ご褒美でもらったスイートポテトはとても美味しかったです」
そう話すと百花ちゃんはにっこり笑った。
譲二「そっかぁ、良かったね」
百花「それで…、マスター」
譲二「ん?」
百花「私、明日からも一護くんの店で働くことになっちゃいました」
譲二「そうなんだ。一護の親父さんも喜んでるみたいだし、頑張ってね」
百花「…はい」
ん? 笑顔は見せてるけど、なんだか複雑な表情をしてる。
譲二「何か、気になることでもあるの?」
百花「いえ…。あの…マスター」
譲二「何?」
百花「男の子って、子供の頃遊んだこととか…やっぱり忘れてしまうものなんでしょうか?」
譲二「それって、一護のこと?」
百花「はい…。子供の頃よく遊んだ公園を通ったから、私は懐かしかったんですけど、一護くんは10年も前のことなんか覚えてないって、言ってました」
譲二「ふ~ん。そうだな…。確かに10年は長いものね。忘れてしまう場合もあるだろうね。
だけど、男の場合は子供の頃の思い出話をするのは照れくさかったり、面倒臭かったりすることもあるからね…」
百花「そうなんですか?」
譲二「うん…いやまあ…人によりけりだけど。一護の場合は照れくさいのかもね」
百花「そうでしょうか?」
譲二「だって、子供の頃のことは知らないけど、一護は素直じゃないからね。今日一緒にいて、何となくわかったでしょ?」
百花「…それは確かに、そうですけど」
譲二「例え忘れていたとしても、一緒に店の手伝いをしたりして、百花ちゃんと色々話をしてたら、子供の頃のことだって色々思い出すんじゃないかな?」
俺の言葉で百花ちゃんはちょっと救われたように微笑んだ。
良かった。
可愛い女の子の元気がないのは見てられないからね。
せっかくクロフネで一緒に暮らすんだから、百花ちゃんには楽しく過ごしてもらいたいんだ。
譲二「さあ、夕ごはんの支度は出来てるから、手を洗っておいで?」
百花ちゃんは「はい」と返事をすると洗面所に向かった。
その後ろ姿に、心のなかでつぶやく。
『これからよろしくね、百花ちゃん』
譲二さんの愚痴(佐東一護本編1話) おわり