恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

それぞれの道~その6~その10

2014-10-10 09:16:36 | ハル君ルートで茶倉譲二

ハルルートの譲二さんの話の続編
『再会』でヒロインとハル君が結ばれてしまった話の続き

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それぞれの道~その1~その5の続き

それぞれの道~その6
〈美緒〉
 譲二さんと別れて7年経った。



 ハル君は弁護士事務所を立ち上げ独立し、私も市の福祉課に勤めている。



 幼なじみたちもそれぞれ頑張っている。



 一護君は3年前に有名なパティスリーから引き抜かれ若手パティシエとしてがんばっている。

 りっちゃんによると決まった彼女はいないけど、モテモテらしい。

 剛史君は陸上での実績をいかしてトレーナーになった。

 剛史君は大学時代のマネージャーと付き合っていて、りっちゃんによると結婚もそう先のことではないようだ。

 


 リュウ兄は母校の高校教師になって頑張ってる。生徒の面倒見もいいらしい。

 親分肌のリュウ兄には天職かも。



 そのりっちゃんは大学卒業後、もう少し音楽を勉強したいとフランスに留学した。

 今は演奏活動で、日本とフランスを行ったり来たりしている。お父さんとも時々共演しているらしい。

 りっちゃんとは女友達みたいに仲良くしてもらっている。



 未だに2日に1度はメールのやり取りをしている。

 

相変わらずりっちゃんは馴れ馴れしいので、時々ハル君がヤキモチをやくくらいだ。

 りっちゃんは吉祥寺で過ごす時間が一番少ないはずなのに、みんなの情報を一番握っていて、私にも色々教えてくれる。

 だから、幼なじみの近況もほとんどりっちゃんに教えてもらったものだ。


 譲二さんは…、あれから間もなくクロフネを閉めて実家に帰った。

 傾きかけた茶堂院グループの経営を助けるためだったそうだ。

 譲二さんがあの写真の人とお見合いしたかどうかは知らない。でも、未だに独身らしい。


 その譲二さんがまたクロフネを再開するらしい、という情報を教えてくれたのもりっちゃんだ。



理人「この間、僕のコンサートにマスターが来てくれたんだけどさ。

楽屋まで訪ねて来てくれて、懐かしかったから色々話し込んだんだ。」



美緒「ああ、この間のコンサート、私たち行けなくてごめんね。」

理人「ああ、それはいいよ。その前の時には2人して来てくれたじゃない。」

美緒「譲二さん、元気そうだった?」

理人「うん。元気そうだったよ。

髪もきちっと撫で付けてあって、いかにも青年実業家って言う感じ。


でも、そんなに老けた感じはしなかったな…。

だからね、10年経って僕らが年取った分、マスターに追いついたような感じがしたよ。」 


美緒「そうなんだ」


 譲二さんの姿を思い浮かべる。

 かすかな心の痛みとともに、とても懐かしい気持ちが込み上げて来た。



理人「その時にね、『そろそろクロフネを再開したいな』って言ってたよ」

美緒「え? クロフネを?」

理人「危機だったグループの経営も軌道に乗って、マスターがそんなにタッチしなくてもうまく行きそうだから、『そろそろ自分が本当にしたいことをしたいんだ』って言ってたよ。」


 譲二さんが吉祥寺に帰ってくる。クロフネに帰ってくる。



理人「それでね、マスターの歓迎会を僕らでしてあげたらどうかと思うんだけど。


リュウ兄なんかも乗り気でね。


美緒ちゃんはマスターと色々あったから…、

ちょっと複雑な気持ちかもしれないけど…、

よかったら歓迎会の準備を手伝ってくれないかな?」


美緒「うん。いいよ。譲二さんともまた会いたいし」

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それぞれの道~その7

〈譲二〉

 実家のダイニングでコーヒーを前にぼんやりしていると、兄貴に声をかけられた。

 


紅一「譲二、本気でクロフネのマスターに戻るつもりなのか?」


譲二「ああ。グループの方は俺がいなくても、もう大丈夫だろ?」


紅一「クロフネは美緒さんとの思い出がいっぱいあって、辛かったんじゃないのか?」


 俺はため息をついた。



譲二「それは確かにある。その思い出に耐えられなくなったのも、クロフネを閉めた理由の一つだったからな。」

紅一「それならどうして?」

譲二「今までがむしゃらに働いて来たけど、この頃やっぱりクロフネのマスターをやっていた頃が一番充実していたなと思うんだ。」

紅一「お前はもう結婚はしないのか?」

譲二「さあね。今までしなかったのも、単に相手がいなかっただけだし…」

紅一「見合いで気の合う相手もあったじゃないか。なぜ、断った?」


譲二「俺は3年間、自分の愛情を全て美緒に注ぎ込んで来た…。


美緒が去った時、そういうものはすべて枯れ果てた。


だから、今の俺は単なる残りかすでしかない。


気の合いそうな女性であればあるほど、そんな残りかすの相手をさせるには忍びなかった。」


紅一「お前って奴は…。何でも小器用にやりこなすくせに、恋愛に関してだけはどうしてそんなに不器用なんだ。」

譲二「どうしてかな?


 だけど、俺は結婚するなら本当に大切な女性としたいとずっと思ってた。


だから、そういう女(ひと)が現れなければ、一生独身でもいいと思ってるよ。」


 俺にとって本当に大切な女性は美緒一人だった。

 でも、美緒にとっての大切な人は俺ではなくハルだった。

 あれから7年経ったのだから、もうそろそろ忘れてしまってもいいだろうとは思う。

 実際心の痛みはずいぶん薄らいだ。だから、クロフネにも戻る気になったのだ。

 ただ、彼女を愛する気持ち、彼女を求める気持ちは未だに心の奥でくすぶり続けている。

 今は単にそれを無視するのが上手になっただけだ。

 


☆☆☆☆☆

それぞれの道~その8

〈美緒〉
 譲二さんの歓迎会をする。

 といっても、場所はしばらく使っていなかったクロフネなので、準備は譲二さんも一緒にすることになった。

 朝から来れたのは私とリュウ兄、剛史君、今は充電中と称しているりっちゃん、そして譲二さんだけだった。

 一護君とハル君はそれぞれの仕事を済ませて遅れてくることになっている。

 まず、店中の窓を開け、埃を追い出し、掃除をする。

 7年も閉めていたにしては店の傷みはあまりなかった。

 それを剛史君が指摘すると、

譲二「実家に帰ってからも月一くらいで、風通しに帰って来ていたからね。ここは俺にとって大切な場所だから」

 譲二さんは愛おしむように言った。

 譲二さんと食材を洗ったり切ったり仕込みをする。

 りっちゃんとリュウ兄に足らないものの買い出しに行ってもらう。

 掃除の終わったソファーに座り込んだ剛史君は漫画を読み始めた。

譲二「美緒ちゃん。二階に一緒に行ってみる? 二階も窓を開けて風通しをしておこうと思うんだ。」

美緒「そうですね。行ってみたいです」

 2人で二階に上がり、まず私の部屋に入る。

 私が昔住んでいた時のままだった。机をそっと撫でる。7年も放っておかれたようには見えない。

 譲二さんが窓を開け放つと春の暖かい風が吹き込んだ。

譲二「これでよしと…。懐かしい?」

美緒「はい。もしかして、この部屋はずっと掃除をしてくれていたんですか?」

譲二「ああ。毎月、クロフネに戻るたびにね。
ここを美緒ちゃんが出て行った時のままにしておけば、明日にでも美緒ちゃんが戻ってくるつもりになれてね…。
さてと…。
俺の部屋も窓を開けてくるか。
美緒ちゃんはこっちの部屋でゆっくりしてるといいよ。」

美緒「…譲二さんの部屋も見てもいいですか?」

譲二「俺の部屋? 美緒ちゃんが平気なら別にいいけど…」

美緒「譲二さんの部屋も懐かしいから…」

 譲二さんは優しく微笑むと何も言わずに隣の部屋に行った。

 窓を開け、ドアも開けたままにすると、風が通って気持ちがいい。

 譲二さんの部屋は机とベッドだけでがらんとしている。

 本棚や入りきらなくて床の上にあった本はなく、以前机の上を占めていたパソコンもなかった。

譲二「本もパソコンも実家に持って行っちゃったからね。何にもないでしょ?」

美緒「そうですね。なんだか寂しい…」

 この部屋で、譲二さんと私はいつも愛し合っていた。

譲二「ちょっとだけ、2人で話をしてもいい?」

美緒「はい?」

譲二「以前、というより随分前だけど、ここを訪ねてくれたことがあったろ? その時2人だけであまり話ができなかったからさ。」

美緒「そうでしたね。お客さんもいたし、すぐにりっちゃんたちが来てみんなでワイワイ話しましたっけ?」

譲二「あの時は俺も冷静じゃなかったから、百花ちゃんに色々話したいことはあったけど、うまく気持ちを伝える自信はなかった。
手紙を書こうかとも思ったけど、今更別れた男から手紙をもらっても、美緒ちゃんが怖がったり嫌がったりするんじゃないかと思うと書けなかった。言い訳だけどね」

美緒「あの時、譲二さんはメールでも『怖がらないで』って書いてあったけど、私が譲二さんを怖がることなんてありません」

譲二「そう? ならくよくよせずに、書けば良かったかな?」

 譲二さんは寂しそうに笑った。

譲二「ハルとはうまくいってるの?」

 少し迷ったが、思い切って言うことにした。

美緒「はい。ハル君も独立したし、そろそろ結婚しようかとプロボーズもされました。
まだみんなには話してないですけど…」

譲二「そうなんだ。とうとう美緒ちゃんも結婚するのか…。
お幸せにね」

美緒「結婚式には譲二さんも来てくださいね。」

譲二「それは…。遠慮しとくよ。
好きな女性の花嫁姿は自分の結婚式以外では見たくないし。
…花嫁を式場からさらって行ってしまうかもしれないからね。」

 譲二さんは冗談めかして言った。

 そうか、譲二さんはやっぱりまだ私のことを好きなままなんだ。

 しばらく沈黙が続いた。

譲二「…ごめん。変なことを言ってしまって…。
俺は美緒ちゃんには幸せになって欲しいと思っている。
だから、美緒ちゃんがハルと結婚すること自体は、よかったなと思っているんだ。
さすがに嬉しいかと言えば微妙だけど。」

美緒「私も譲二さんには幸せになって欲しいです。」

譲二「本当は俺も可愛い嫁さんと可愛い子供の2、3人つれて来て、美緒ちゃんの前で見せびらかしたいところだったんだけど…。
なかなかそう都合良くはいかなくてね。」

 譲二さんの笑顔はなんだか痛々しかった。

譲二「ハルにプロポーズされたんだったら、指輪ももらった?」

美緒「指輪はまだ…。今度一緒に選びに行くことになってます」

 私は顔を赤らめた。

譲二「そっか。…そうだ、これ」

 譲二さんは何かを思い出したように机の引き出しを開け、小さな箱を取り出した。

美緒「指輪?」

 蓋を開けるとダイヤの指輪があらわれた。

 窓から差し込む光を反射して輝いている。

美緒「きれい…」

譲二「もし…、俺と付き合っていた頃にこれをあげたら喜んでくれた?」

美緒「え? もしかして私のために?」

譲二「君と別れる前にこっそり注文していたものなんだ。
君を喜ばそうと思って…。
美緒ちゃんが二十歳になったから、ご両親に挨拶して結婚を認めてもらうつもりだった。
もちろん、式は大学を卒業してからのつもりだったけど…。」

美緒「譲二さんがそんな風に思ってくれていたなんて…」

譲二「いまさらだよね。ごめん。」

 この部屋で2人で話していると7年という月日が過ぎたことが嘘のように思えてくる。

 会話が途切れて、2人で見つめ合う。

 なんでこんなにドキドキするのだろう?

 譲二さんの手が私の頬に触れ、そっと撫でる。

 大きくて優しくて…そして懐かしい手。

譲二「美緒は7年経って、大人の女性になったね。
そして、ますますきれいになった…」

 譲二さんの顔が近づいて、私は反射的に目をつぶった。


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それぞれの道~その9

〈美緒〉


 あと少しで唇と唇が重なるという時、外からドヤドヤと話し声が近づいて来た。

 そして、ドアのチャイムが鳴って階下に大勢が入ってくる気配がした。

譲二「リュウたちが帰って来たみたいだな。さあ、先に下に降りておいで。

俺は二階の窓を全部閉めてから降りるから」

 譲二さんは何事もなかったように、指輪の小箱を片付けると窓を閉め始めた。

 私ははじかれたように階段を駆け下りる。胸がドキドキして苦しい。

(私、もう少しで譲二さんとキスするところだった…。もう譲二さんのことは何とも思っていないはずなのに。)

 店に出ると、りっちゃんが剛史君に話しかけている。

 リュウ兄は一護君と…あっ、ハル君も来てくれたんだ。

春樹「美緒! 遅くなってごめんね。
仕事がやっと片付いて、ちょうど一護と一緒になって話しながらクロフネに向かっていたら、店の前でりっちゃんとリュウ兄にバッタリ会ったんだ」

美緒「それであんなに賑やかだったんだね」

一護「今日のために特別製のケーキを持って来たぞ」

剛史「一護のケーキを食べるのは久しぶりだな」

竜蔵「ハルに会うのも久しぶりだな。同じ町に住んでいるのに…」

理人「ハル君は忙しいから仕方がないよ。ね、美緒ちゃん」

美緒「そう。私でも毎日は会えないんだから」

春樹「でも、会える時にはなるべく会ってるだろ」

 ハル君が少し拗ねたように言う。

一護「結局、のろけか…」

理人「あれ? マスターは?」

美緒「二階の風通しをしてくれているよ。

 

みんなが来たからそろそろ降りてくると思うよ」

 その時譲二さんが姿を現した。

 私は顔が赤くなりそうな気がして、目をそらした。

譲二「やあ、今日は俺のためにみんなで集まってくれてありがとう。
料理の仕込みはしてあるけど、今から作るから…一護、すまないけど手伝ってくれ」

一護「ああ、いいよ」

美緒「私も何か手伝いましょうか?」

譲二「ありがとう、それならそこに出してある食器を洗って拭いてくれると助かる」

 料理は私も手伝った方が早くできるだろうけど、譲二さんはハル君に気兼ねして私を遠ざけているらしい。

 私が食器を洗い始めると、ワイシャツの腕をまくったハル君が隣に来て手伝ってくれる。

美緒「仕事帰りで疲れているのに…。あっちで休んでくれていいよ。」

春樹「せっかく美緒の隣でいられる理由があるのに、それを使わない手はないだろ?」

美緒「ありがと…」

 見上げるとハル君はにっこり笑ってくれた。

 ハル君の頬は少し赤い。

 ハル君、やっぱり大好き。

 私は譲二さんのことを心の片隅に追いやった。


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それぞれの道~その10
〈譲二〉
 7年ぶりに会った美緒はすっかり大人の女性になっていた。

 今まで俺の中では可愛いだけのイメージだったけど、清楚で美しい女性になった美緒に俺の心はまた虜になった。

 そう…10年ぶりにこのクロフネで高校生の美緒に再会した時と同じように。

 胸の動悸を隠して、みんなと一生懸命働いた。

 厨房で一緒に食材の仕込みをしている時は俺の心臓の鼓動が美緒に聞こえているのじゃないかと不安になったほどだ。

 一護とハルは遅れてくるということで、身勝手な俺はそれを喜んでいた。
 

☆☆☆☆☆

 美緒と2人きりになるチャンスが訪れた。

 リュウと理人が買い出しに行き、タケが漫画を読み始めたので、美緒に2階へ行こうと誘った。

 俺の部屋に入るのは嫌がるかなと思ったが、意外にも「見て見たい」と言ってくれた。

 何もしないつもりだったけど、保険のつもりで、窓だけでなく、扉も全開にして風を通す。
 

☆☆☆☆☆

 久しぶりに美緒と話をした。

 最初は硬かった美緒の表情も次第に打ち解けて来た。

 でも、覚悟はしていたものの、ハルにプロポーズされた話は俺を動揺させた。

 そして、あの日の目を見ることのなかった指輪を美緒に見せてしまった。

 あの指輪は実家に持って行く気がしなくて、机の引き出しに入れたままだったのだ。

 ハルとのことがなければ、俺は美緒と婚約するつもりだった。

…それを知った美緒はかなり驚いたようだ。



 言葉が途切れ、2人で見つめ合った。



 7年という時はまるでなかったように思え、俺は手で美緒の頬に触れた。


 柔らかくスベスベした頬。7年ぶりの感触。


譲二「美緒は7年経って、大人の女性になったね。そして、ますますきれいになった…」

 言うつもりのなかった言葉が口をついて出た。

 そして…俺は自分を抑えられなくなった。

 美緒の柔らかそうな唇に顔を近づける。美緒が目をつぶった。



 彼女の唇にもう少しで触れるというとき、ドヤドヤと大勢の話し声が近づいて来るのが聞こえた。

(ああ、リュウたちが帰って来たのか…)

 魔法は解け、俺は我に返った。

譲二「リュウたちが帰って来たみたいだな。
さあ、先に下に降りておいで。
俺は二階の窓を全部閉めてから降りるから」

 俺は心の動揺を美緒に悟られないように願いながら、指輪の小箱を片付けると窓を閉め始めた。

 美緒が階段を駆け下りる音が聞こえた。



 美緒の部屋の窓も閉めた後、ベッドの上に座り込んだ。

(俺はなんてことをしたんだろう。手を出さない自信はあったのに…。いや、まだ未遂だったからよかったものの。)

 もし、あの時、リュウたちが帰って来なかったら…。

 俺は美緒にキスをして、思い切り抱きしめてしまっていただろう。

 そして、そんなことをしたら、また美緒を苦しめることになっていた…。

(これからは美緒と2人きりにはならないように気をつけよう。)


☆☆☆☆☆


 パーティが始まった。リュウが乾杯の音頭をとってくれる。

一護「マスター、それで店を再開するのは何時になるんだ?」

譲二「そうだなぁ。実家での仕事の引き継ぎに、まだひと月くらいはかかるだろ。
その間にクロフネの改装をしておこうと思ってる」

剛史「改装って、模様替えをしてしまうのか?」

譲二「いや、さすがに7年も放っておいたので、傷んだところを修理しておこうと思って。
壁紙も違和感ないようなものに貼り替えたりね。」

理人「そうなんだ」

譲二「それで、実家の後始末が終わったら、ここに引越してきて早ければ二ヶ月後には再開できるかな」

竜蔵「二ヶ月後には昔のようにクロフネで集まれるってことだな」


 一護が思い出したようにハルに聞いた。


一護「ところで、お前らはどうなってるんだ?」

春樹「順調だよ。ちょうどいい機会だから、みんなにも報告するよ。美緒いい?」

 美緒が少し顔を赤らめて頷いた。

春樹「俺たちは結婚することに決めた。美緒もOKしてくれたし。
両親への挨拶はまだなんだけど」

 みんなの歓声があがる。

 みんな口々に「ハルはずるい」とか、「美緒ちゃんを独占するなんて」とか言っているが、幼なじみの幸せを喜んでいるのはよくわかる。

 俺も微笑んで、「おめでとう」と言った。

 ちゃんと言えたと思う。不自然なところはなかったはずだ。



『それぞれの道』おわり

続きは『秘密』になります。

 


 

 





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