前にも書いたけど、吉恋本家の譲二ルートの3年後編には色々と不満がある。
久しぶりに吉祥寺に帰ってきた譲二さんとのラブラブな話のはずなのに、新キャラの紹介に使われてたり、色々とモヤモヤするものがあって、私の思う『勝手に3年後編』を書いちゃいました。
『譲二の勝手に3年後編』の始めの部分は本家の『譲二3年後編』とほぼ同じです。
そして、時々本家のエピソードに重なるものも入れながら、少しずつ離れていき、玉の緒ワールドの譲二さんの話になってます。
航くんは出てきませんが、本家の『譲二3年後編』では出てこなかった、懐かしいあの人とかあの人とか出てきます。
だから、ネタバレも少々あるものの、譲二ルートの3年後編とはまた別のお話と思って下さい。
☆☆☆☆☆
揺れる心~その7
〈譲二〉
玲「所有権のことはよく分かってるわ。了承してもらえるなら、きちんと書類も交わすつもりよ」
玲「アタシ、今まで勤めてたところではトップを張ってたから、言い値で現金払いだって出来るわよ」
譲二「別にお金に困ってるわけじゃないですから」
有栖川さんはフッと笑った。
玲「あら?そう?失礼だけど、時々様子を見せてもらった限りではあんまり流行ってないようだから、てっきりお金に困ってマスターが別なところで働いてるのかと」
百花「あの…マスターが働いてるのは…!」
譲二「百花ちゃん!」
俺は興奮した百花ちゃんの肩をそっと叩いた。
譲二「それで…有栖川さんがやりたいのはどういうお店なんですか?」
玲「そうね…アタシがやりたいのは夜の店だから、今までと雰囲気は変わると思うけど」
百花「夜の店…」
理人「クロフネは喫茶店だよ!」
玲「そうね。でも、アタシには喫茶店は出来ないわ。その代わりお酒を出すし、アタシがママになってお客さんの相手をするの」
玲「今まで勤めてた店の常連さんも、アタシが独り立ちしたらぜひ来たいって言ってくれてるし。だから、どうしても譲って欲しい」
譲二「有栖川さん、お気持ちはよくわかりました。だけど、この店は俺にとっても大切なものですし、みんなにとっても…」
百花「そうなんです!クロフネに来るのを楽しみにしてる常連さんだってたくさんいるんです!」
理人「そうだよ! 僕らもクロフネの雰囲気が好きだからよく来るんだ」
百花「みんなここが大好きで…だからクロフネの雰囲気が変わってしまうなんて」
有栖川さんがポケットから何か取り出した。
写真だ。
少し色褪せている。
玲「これ…小さい頃のアタシと兄と…それに父です」
譲二「うわ、本当だ。俺が知ってる先代だ!」
そこには懐かしい先代マスターの浦賀さんが写っていた。
俺が知ってる頃よりかなり若くて、シワもなく、くたびれた感じもない。
若々しいお父さんだ。
でもあの優しい笑顔は同じだった。
この笑顔に何度救われたことだろう。
それに一緒に写った兄弟…。
二人とも寄り添って楽しそうだ。
その姿は俺たち兄弟と重なった。
こんな可愛い子供達がいたのに疎遠になったって…。
浦賀さん、いったい何があったんですか?
ふと…気づいた。
もしかして…。
先代マスターが俺を可愛いがってくれたのは、俺にこの兄弟の姿を重ねていたのかもしれない。
その8へつづく