恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

茶倉譲二エピローグ3

2014-06-02 12:50:58 | 吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二

吉祥寺恋色デイズ 茶倉譲二の妄想小説。譲二目線からエピローグのお話を眺めてみました。
ネタバレありです。
 

☆☆☆☆☆
茶倉譲二プロフィール 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg
血液型:O型 特技:歴史語り


 特徴:歴史オタク
ヒロインの初恋の人。公園でサンドイッチをもらったり、抱っこしてもらったりしてた。
本編最終話でヒロインの恋人に。

☆☆☆☆☆
エピローグ3その1
 どこにデートに行くかは百花ちゃんに任せて何も考えてなかっから、とりあえず、俺が観に来たかった『魅惑の三国志展』に滑り込んだ。

譲二「良かったー。ギリギリ間にあったー」
譲二「表参道の『縄文式土器展に』は5時までだったんだけどさ。こっちは遅くまでやってるから、なんとかなるかなって思ってさ」
百花「『魅惑の三国志展』?」
譲二「そう」
譲二「これさ、すごい観たかったんだよねー」
百花「あの…もしかして、六本木や表参道によく来るのって、こういうのを観るために?」
譲二「そうだよ。この界隈は、美術館や博物館がいろいろあるからね」
譲二「あっ!ちょっ…ヤバい。これ、魏書の版本‼︎」

 俺は大好きなものに囲まれて、ちょっと興奮気味だ。

百花「…魏書?」
譲二「ほら学校で習わなかった?『魏志倭人伝』とか。アレとか載ってんの!」
譲二「って言っても、別に三国志正史の中に『魏志倭人伝』ってのがあるわけじゃなくてね…」
譲二「あ!」
譲二「その前に『三国志』と『三国志演義』の違いは分かる?」
譲二「『三国志』は歴史書で、列伝形式。でも『三国志演義』はそれを元にしたフィクションでね」
譲二「だから、たとえばほら…あの有名な赤壁の戦いでもさ、孔明は東南の風なんか起こしてなくてね」
百花「…」

 百花ちゃん、微妙な顔で固まってる…。
 もしかして、引かれた?

譲二「あ…ごめん。さすがに俺、興奮しすぎだよね?」
百花「いえ…ちょっとびっくりしただけで…」
譲二「ごめんね」
譲二「あー、もう…ホントにごめん!」

 頭を抱えてしまう。
 百花ちゃんを喜ばせるためのデートなのに…。

譲二「せっかくのデートなのに、何やってんだろ…俺…」
百花「でも、今日のマスター…何だか可愛いです」
譲二「かわ…っ!?え?なにそれ!?」

 思わぬ百花ちゃんの言葉に俺は混乱した。

百花「なにって、そのままの意味ですけど…」
譲二「ええっ?」
譲二「困ったな…この年になって『可愛い』なんて」
百花「でも、さっきのマスター、遊園地に行った時のリュウ兄みたいでしたよ…」
譲二「それって、つまり『はしゃぎすぎ』ってことだよね…」
譲二「…なんかもう、ホントにいたたまれなくなってきた…」
百花「そんなことないですよ」
百花「それより、コレは何ですか?」
譲二「ああ、それはね!」

 百花ちゃんは、俺を立てるように色々質問してくれる。
 質問されると滔々と話し続けてしまうわけで…、順路に従い、展示内容をガイドして回った。
 百花ちゃんは俺の説明に上手に相槌を打つので、俺はいい気分でしゃべり続けた。


☆☆☆☆☆

 『魅惑の三国志展』といいながら、絵は戦国時代の鎧兜や掛け軸なんかがみえてる。(`∀´)
 譲二さん歴オタと言いながら、三国志ばっかりしか出て来ないのは(一部幕末もあるけど)シナリオの人、三国志しか知らないのかな?

 ま、私が三国志をあまり知らないだけだけど。


☆☆☆☆☆
エピローグ3その2
 『魅惑の三国志展』を出て、反省する。

譲二「…なんかごめんね。結局、俺ばっかり楽しかったみたいで」
百花「そんなことないです。楽しかったですよ」
譲二「そう?」
譲二「でも、百花ちゃんとしては、オシャレなお店とかにいきたかったんじゃない?」
百花「…え?」
譲二「ごめんね。俺、そのテのお店はホント苦手でさ…」
譲二「でも、全然わからないわけじゃないから」
譲二「百花ちゃんが行ってみたいなら、今度考えとくよ…」

 今回は準備不足だったからな…。次回こそリベンジしないと…。

百花「そんな…いいです」
譲二「でも、こういうところ…百花ちゃんとしては、あまり楽しくないでしょ?」
百花「そんなことないです。いつもとは違うマスターを見られるし…」
百花「それに…マスターと一緒にいられるだけで楽しいから」

 そういうと、百花ちゃんはぎゅっと俺の手を握ってくれた。俺も彼女の手を握り返す。
 小さくて柔らかい手…。

譲二「百花ちゃん…」

 そうだ。吉祥寺の夜景を百花ちゃんに見せてあげたくなった。

譲二「じゃあさ、もう吉祥寺に帰ろっか?」
百花「え?」
譲二「本当は、すぐそこの展望台にでも行こうと思ってたけど…」
譲二「もっととっておきの場所が、吉祥寺にはあるから」

 吉祥寺の夜景を眺めるビュー・ポイントに立つ。優しい夜風が百花ちゃんの髪の毛をなびかせている。

百花「綺麗な夜景…」
譲二「なかなかの穴場でしょ。ここ」
譲二「あの、ちょっとキラキラしているのが吉祥寺の駅前」
譲二「もう少しこっち側が、俺たちのいる商店街」
譲二「もちろん、都心の夜景と比べると全然地味なんだけどね。その分、ちゃんと人が生活してるなーって感じがして…なんだか、ホッとするんだよね…」

 百花ちゃんが黙って俺を見つめているのに気付いた。

譲二「ん?百花ちゃん、どうかした?」
百花「なんか…ヘンな感じです」
百花「たった数時間で、マスターのいろんな顔を見た気がします…」
譲二「そう?どんな顔?」
百花「子供っぽい顔とか。今みたいな大人の人だなぁって顔とか…」
譲二「大人の…ひと…かぁ」
 百花ちゃんの髪の毛を優しく梳く。この髪の毛に、頬に、唇に口づけたい…。
譲二「ねえ、百花ちゃん」
譲二「もう少しだけ、大人っぽいこと、してみてもいい?」
百花「…え?」


☆☆☆☆☆
 歴オタのデートコース、私的には楽しいんだけど、興味ない人には苦痛だろうな。
 でも、ヒロインの「いつもとは違うマスターを見られるし…」というのはよくわかる。好きな人のいろんな顔を見られるのはうれしいことだよね。
 特に大人の男性だと思ってた人の少年のようにはしゃぐ姿は新鮮だと思う。



☆☆☆☆☆
エピローグ3その3
譲二「ちょっとだけ…本気出してみてもいい?」
百花「…いいですけど」

 その言葉を聞くと、百花ちゃんの手をぐいっと引きよせた。そしてその唇にキスをする。
 そっと優しく…。
 でもその柔らかい唇から離れることができない。
 百花ちゃんは俺にされるがままになっている。もしかして、ファーストキス?
 思い切って聞いてみよう。

譲二「…百花ちゃん?」
百花「は、はい…」
譲二「あの…こんなこと聞くのもなんだけど…その…もしかして、初めて?」
百花「…わかるくせに…、マスターはイジワルです」
譲二「…」

(やっぱり…!)

百花「マスター?」

 ついニヤけてしまう口元を隠しながら百花ちゃんから目をそらせた。

譲二「…すげー嬉しいなんて…」

 百花ちゃんのファーストキスの相手は俺なんだ!!

 なんだか…全世界に向かって叫びたい!

譲二「なんか、俺、変態かも」

 そして、キスだけじゃなく、百花ちゃんを抱くのも俺が初めての男に…なんちゃって。

譲二「ダメだ。ダメダメ」

 邪な考えよ、去れ!!

譲二「ごめんね。当分もうしないから」

百花「え…」
譲二「すごいイケナイ気分というか…背徳感というか…不道徳というか…」
譲二「ていうか…百花ちゃんが悪いよ」
譲二「そんな拗ねた顔も可愛いなんて…」
百花「そんなこと言われても…それに、私はイヤです…」
譲二「え?」
(今のって?)

百花「マスターは、もう…私にキスしてくれないんですか?」
譲二「…」
百花「そんなの…寂しい」
譲二「潤んだ瞳…上目遣い…赤らめた顔…」
百花「?」
譲二「なんだ、この天然小悪魔…」
譲二「神様、我慢しなくてもいいってことですか?」

 百花ちゃんの頬をそっと撫でた。なんて可愛いんだろう。

百花「マ、マスター?」
譲二「他の男にそんな顔しちゃダメだからね」
百花「そんな、ってどんな顔ですか?」
譲二「男を誘う顔」
百花「ええ!?」
譲二「というか…今日はキスまでで許してあげるけど、次は覚悟してね」
百花「わっ、マスター待って…」
譲二「無自覚でも、今度は我慢してあげないから…」

 そして、俺は彼女を抱きしめると何度もキスをした。


☆☆☆☆☆

 自分がヒロインのファーストキスの相手だと気づいて喜ぶ譲二さん。
 有頂天で…
譲二「なんか、俺、変態かも」
譲二「ダメだ。ダメダメ」
譲二「ごめんね。当分もうしないから」

だなんて、ヒロイン目線で見ていた時にはえらく動揺してるなとしか思わなかった。
 でも、譲二さん目線で見てみると…キスだけでなくそれ以上のことも想像してしまって、それであんなに慌てていたんだね。


☆☆☆☆☆
エピローグ3その4
 翌日、クロフネでは百花ちゃんにいつものごとく理人がじゃれついている。
 理人は盛んに百花ちゃんから俺とのことを聞き出そうとしている。
 百花ちゃん動揺しすぎだよ。ばれちゃうよ。

理人「もしかして、マスターと何かあった?」
譲二「え!?」

 不意に言われて、持っていたコーヒーを落としてしまう。

譲二「うわあっ、コーヒーこぼしちゃった!ぞうきん、ぞうきん」
理人「…マスター、動揺しすぎ」
譲二「ちょ…動揺なんてしてないよ!」
理人「うっそだー」
理人「やっぱり、何かあったんだ~」
譲二「ないない。何もないから!」
百花「そうだよ、りっちゃん。何もないってば!」
理人「ふーん…」
理人「じゃあ、とりあえずそういうことにしといてあげよっかな」

 理人は鋭い。こやつには気をつけないと…。


 みんなが帰り、2人だけになって、百花ちゃんに前から気になっていたことを聞いてみた。

譲二「百花ちゃん、日本に戻って来たこと後悔してない?」
百花「え?」
譲二「たまにね…気になるんだよ」

譲二「なんだかんだ言っても、百花ちゃんはまだ高校生だし…本当はご両親の元にいた方がいいんじゃないのかな…ってね」

百花「…そんなことないです」

百花「確かにお父さんやお母さんに会えないのは寂しいけど…ここにはみんながいますから」

譲二「ハルに一護に…タケにリュウ、それにりっちゃん」
譲二「みんな、百花ちゃんの王子様だもんね」

 遠い昔、ちっちゃな百花ちゃんが言っていた言葉を思い出した。

百花「え…?」
譲二「…あれ?」

譲二「りっちゃんは、お姫様だったっけ?」

百花「もしかして、今の…私が小さかった頃の話ですか?」

譲二「そうだよ。百花ちゃん、自分でそう言ってたんだよ?覚えてない?」

百花「…覚えてないです」

百花「『大きくなったらお姫様になる』って言ってたのは覚えているんですけど…」

譲二「そっか…」

 小さかったものなぁ。忘れてしまったのか…。じゃあ、俺を王様だって言ったのも忘れてしまったかな。

百花「ごめんなさい。忘れてしまって…」

譲二「何言ってるの。謝ることなんてないよ」

譲二「俺だって、百花ちゃんとの思い出、全部覚えているわけじゃないし」

百花「でも…」

譲二「もともとね、思い出を全部覚えているなんて、無理なことなんだよ」

譲二「でも…例えばね」

譲二「俺が覚えていないことを百花ちゃんが覚えていてさ」

譲二「百花ちゃんが忘れてしまったことを俺が覚えていたらさ」

譲二「2人でこうやって話をするだけで、思い出が2倍になるじゃない?」

譲二「1人ぼっちでいる時よりも…ね?」

百花「確かにそうですね」

譲二「だからね。恋人でも友達でも、思い出話が出来る相手がいるってことは、きっと幸せなことなんだよね」

百花「思い出がたくさん増えるから?」

譲二「そういうこと」

百花「じゃあ、ずっと一緒にいてくださいね」

百花「10年経っても20年経っても…ずっと側にいてくださいね。マスター」
譲二「…」

(百花ちゃんにずっと側にいて欲しいと言われるのはすごく嬉しい!
 とても幸せな気分…をぶちこわすのはその『マスター』っていう呼びかけだ。)

譲二「…あのさ、そろそろやめない?その『マスター』っていうの」
百花「え…?」
譲二「その…さ」
譲二「せっかく付き合っているわけだし。そろそろ呼び方変えてみない?」
百花「…『譲二さん』とか?」
譲二「ハハッ。いいねー、それ」
譲二「もう一回呼んで?」
百花「譲二さん…」
譲二「うんうん」
百花「譲二さん…」
譲二「…」

(好きな子に名前で呼ばれるなんて…。このくすぐったい感覚。)

百花「譲二さん…?」
譲二「…なんか、いろいろヤバくなってきた…」
百花「?」
譲二「ごめん。俺、今すごいニヤけてるでしょ?」
百花「はい…」
譲二「でも、やっぱり嬉しいんだよねぇ…好きなコに名前で呼ばれるのって」
百花「じゃあ、これからたくさん呼びますね。『譲二さん』って」
譲二「うん、ありがとう」
譲二「じゃあ、これ…一緒に飲もうっか」

お揃いのマグカップに入れた温かいココア。
 今日もその中にラム酒を入れてある。
 俺のはたっぷり、百花ちゃんのにはちょっぴり。

譲二「ではでは。今日もお疲れ様、かんぱーい」
百花「かんぱい」

 俺たちの距離はほんの少しずつだけど、縮まっている。

 百花ちゃんはまだ若いのだから、焦らなくていい。
 百花ちゃんが少しずつ大人の女性になっていく姿を…俺は側で見守ろう。

 それが俺の特権だから…。

エピローグ3おわり

☆☆☆☆☆

譲二さんの
「俺が覚えていないことを百花ちゃんが覚えていてさ」
「百花ちゃんが忘れてしまったことを俺が覚えていたらさ」
「2人でこうやって話をするだけで、思い出が2倍になるじゃない?」
という
言葉が大好きです。



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