恋、ときどき晴れ

主に『吉祥寺恋色デイズ』の茶倉譲二の妄想小説

話数が多くなった小説は順次、インデックスにまとめてます。

『七夕祭りの夜』

2014-07-26 10:00:45 | ハル君ルートで茶倉譲二

譲二さんルートとの混乱を避けるため、ヒロインの名前は佐々木美緒とします。


☆☆☆☆☆
 好きになったヒロインに迷わず告白し、実力行使にでてしまう男らしい譲二さん。
 ただやっかいなのは、ヒロインが好きなのは譲二さんではなく、別の男の人だった。そう…、たとえばハル君。


☆☆☆☆☆
茶倉譲二: 喫茶クロフネのマスター
身長:183cm 体重:70kg

☆☆☆☆☆

『クロフネ勉強会』の続き



『七夕祭りの夜』その1

〈譲二〉
 七夕祭りがもうすぐ始まる。七夕祭りのポスターを美緒に貼るよう頼んだ。

 あいつらは七夕祭りの話題で盛り上がっていた。

 俺は美緒を連れて行けないから、みんなで行ってくれればいい。それぞれが牽制して、まあ大丈夫だろう。



〈美緒〉
 七夕祭りのポスターを貼るのを譲二さんに頼まれた。
 みんなが集まった夕方。七夕祭りの話題で盛り上がる。

春樹「そういえば、ここ何年か行ってないな」
一護「祭りで騒ぐような歳でもねーだろ」

(…一護君、この前2人で七夕祭りに行こうって誘ってくれたけど、あれは本気じゃなかったのかな?)

美緒「あの…私、このポスター貼って来るね!」

ポスターを貼ろうとしたら、上の方まで手が届かない。その時、頭の上から誰かの手が伸びてきた。

春樹「ははっ、そんな背伸びして…早く呼んでくれればよかったのに」
美緒「ハル君!ありがと…」

振り返るとハル君の顔がすぐ近くにあった。

美緒「わっ!」
(なんか…これって、壁に追いつめられているみたい…!)
春樹「あ…ご、ごめん!」
美緒「…」
春樹「なんだか、佐々木と最近、こんなんばっかりだな」
美緒「そう言われると、そうかも…」
春樹「気をつけないと!一護に誤解されたら、困るだろ?」

 え?一護君? 譲二さんではなく?
 もちろん、譲二さんとのことは気をつけて秘密にしてるから、ハル君は気付いてないんだろうけど…。
 でも、どうして一護君? 一護君に七夕祭りに誘われたことを気付いているのかな?


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その2

〈美緒〉
 みんなのところへ戻ると、みんなで七夕祭りに行こうという話になっていた。

美緒「みんなで?」

みんな口々に盛り上がっている。
(…そっか、みんなで行けば、一護君と2人っきりで行くっていう話もなくなるよね。譲二さんもみんなで行っておいでって言ってくれたし…)

一護「…俺は先約があるから」

(えっ!? 先約って私のことだよね?)

理人「あれ?もしかしていっちゃん、ついに彼女できちゃったの!?」
竜蔵「おお!やったな!」
一護「うるせーな、関係ねーだろ」

一護君の顔が赤くなった。

春樹「そっか、先約があるんじゃ仕方ないよな…」
春樹「あ、佐々木は?」

 ハル君に聞かれてドギマギしてしまう。

美緒「あ…えっと…私も、用事があって…」
春樹「…え?佐々木も?」
美緒「うん…」

一護君と先に約束したんだから、守らないといけないよね?

春樹「誰かと一緒に行くの?」

 ハル君に聞かれて言葉に詰まった。
美緒「え?えっと…」

まさか「一護君と行く」なんてとても言えない。ハル君は畳み掛けるように聞いて来る。

春樹「それとも…用事で祭り自体に行けないとか」

美緒「えっと、実は」

どう答えたらいいか分からなくなって、一護君を見た。

一護「美緒だって用事くらいあるだろ。べつに行けるヤツだけで行けばいいんじゃね?」

春樹「あ…そうだよな。ゴメン、佐々木」

美緒「ううん…私こそごめんね。せっかく誘ってくれたのに」

ハル君は気を取り直したように爽やかに言う。
春樹「ま、祭りなんてしょっちゅうあるし。また別の機会にみんなで行けばいいよな。」

私は必死で相づちを打った。
美緒「今度なんかあったら絶対いくから」
本当はハル君と一緒に行きたかった…。

一護「…」

ハル君はちょっと何かに気をとられているようだった。
春樹「…うん。そうだな」

春樹「じゃあ、祭りは4人で行こっか。たまには男4人で遊ぶのも悪くないだろ」

一護「…」

理人「美緒ちゃんが来るまでは、いっつも男ばっかりだったじゃん」

竜蔵「今年こそ射的の景品全部撃ち落としてやるぜ…」

剛史「…リュウ兄、そろそろ出入り禁止になるんじゃない?」

竜蔵「上等だ。毎年レベルあげてくるからな、あのテキ屋」

みんなが盛り上がっている横で、一護君をそっと見た。

一護「…ブサイクな顔」

一護君は相変わらず、意地悪だ…。直ぐに言い返した。

美緒「う、うるさいなー」

一護「…祭り…時間とか、メールするから」

美緒「あ…うん…」

一護「じゃあな」

一護君はどうして私を誘ってくれたんだろう。『みんな一緒に』ではなく、私だけを。


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その3

〈譲二〉
 七夕祭り当日。
 美緒はおしゃれをしていそいそと出掛けていった。

 この頃、美緒が少し明るくなって来たことを思って、嫉妬心を押さえ込む。


〈美緒〉
 一護君とは土手で待ち合わせした。

 2人で笹を見て回る。一護君は相変わらず意地の悪いことばっかり言ってる。
 ハル君はどうしているだろう? もう、みんなと集まってお祭りを見に来ているだろうか?
 ぼんやり考えていると、一護君が立ち止まった。

一護「なあ?」
美緒「何?」

 私が何気なく返事すると、一護君はとても真剣な顔で話しかけて来た。

一護「前、話したよな。七夕祭りでお前が迷子になった話」

美緒「うん…紗枝ちゃんの誕生会の時だよね」

一護「…ああ。お前が迷子になった時…俺が、こいつ守んねぇとって思った」

美緒「…一護君…」

 なんだか、譲二さんに告白されたときと似ている。もしかして、一護君も…?

一護「あん時から、俺…お前のことが」

 一護君はその言葉を最後まで言えなかった。ちょうどその時、ハル君の声がした。

春樹「リュウ兄ー!」

私は思わず、振り向いた。
美緒「え…ハ、ハル君!?」

春樹「あ…佐々木と一護…」

ハル君は驚いたように私たちを見つめた。一護君がバツ悪そうに声をかけた。

一護「…よう」

春樹「…そっか、やっぱり2人で来てたんだ」

(やっぱり、って…ハル君、気づいてたの!?)

気を取り直して、ハル君に話しかける。
美緒「ハ、ハル君はどうしたの?リュウ兄を探してるの?」

春樹「あ…うん。リュウ兄、射的の景品でブレステ当てたのが嬉しかったらしくて、そのまま走ってどっか行っちゃって…」

 リュウ兄らしい…。

一護「どんだけだよ」

一護「…ちょうどいいや。ハルに聞きたいことあんだよ」
春樹「…なに」

一護「ハル…お前、好きなヤツとかいんの?」

(一護くん!?いきなり、どうしたの!?)

春樹「俺? 俺は…いないよ」

美緒「…」
ハル君の言葉を聞いてショックを受けた…。

一護「俺はいる…すぐ近くに」
 えっ。胸がドキドキする。それは…私のことだよね?
春樹「…うん」

一護「ハルも俺と同じだと思ってたけど…違うんだな」

春樹「…」
一護「だったら、俺がもらってもいいだろ?」

 一護君、やっぱり本気なんだ…そんな顔、初めて見た。

春樹「…俺に聞かれても困るよ。佐々木が決める事だし」

美緒「…!」
 ハル君はやっぱり私のことはどうでもいいんだ…。

一護「お前…いいのかよ、それで」

春樹「…いいも何も…俺は口出しする権利ないし。別にみんなの関係が壊れるわけでもないし。俺は一護と佐々木が幸せになれればいいって思う。」

 何か…胸が痛い…どうしてこんなにショックなんだろう…

春樹「えっ」
一護「…美緒」

2人が驚いたような顔で私を見ている。

美緒「な、なに?」
一護「泣いてる」

美緒「あ…」

 ハル君に言われたことが辛くて、私の目からは涙がこぼれていた。
 ハル君のことはもう諦めて…しまったはずなのに。はっきり拒絶されるとどうしてこんなに辛いのだろう?

美緒「ご、ごめん、ちょっと!」

 いたたまれなくなって、私はこの場を逃げ出した。

一護「お、おい!どこ行くんだよ!」
春樹「佐々木!」

 2人の叫ぶ声が追いかける。
 その声を振り切るように、必死で走った。

 ハル君に想われていない事は、どうしようもないのに…。むしろ踏ん切りがついてよかったじゃない。


☆☆☆☆☆

『七夕祭りの夜』その4


〈美緒〉
春樹「佐々木!」

 後ろからハル君の声がしてびっくりした。

美緒「きゃっ」

 そして、ハル君に手首を掴まれる。

百花「ハ、ハル君!?」

 追いかけて来てくれたんだ。

春樹「あの、さっきのだけど…俺…」

美緒「いいの!気にしてないから!」

 ハル君のことはもうキッパリ諦めよう。独りで悩んでばかみたい。

春樹「え…」

美緒「ごめんね、急に泣いたりして…あれは、その…」

 なんとか泣いたわけを誤魔化そうと言い訳を考える。

春樹「佐々木!聞いて、俺は…」

♪~
春樹「あ…」

美緒「…ハル君、携帯鳴ってるよ…出た方がいいんじゃない?」

春樹「…ちょっと待って。絶対、逃げるなよ!」
 ハル君はちょっと怖い顔で念を押した。

美緒「…うん」

春樹「もしもし」

 あれ? ハル君のポケットから何か落ちた。あ、これ、私と撮ったプリクラ…なんで今、これを持ってるんだろう。

 プリクラをハル君に手渡すとハル君は真っ赤になった。

美緒「もしかして、それいつも持ち歩いてるの?」

春樹「えっ、あっ、そうだけど」

美緒「ほ、ホント?}
 なんだか嬉しい。ハル君は私とのプリクラをいつも持ち歩いてくれていた!

春樹「あー、もう!俺、女々しいよな」

美緒「女々しいって…」

春樹「このときの佐々木、すげー可愛いんだもん。だから、なんか持ち歩いちゃって…。うわー、俺、変態みたいじゃん」

 私との思い出、大切に思っていてくれたんだ。
 
春樹「ごめん、気持ち悪くて」

美緒「そんな風には思わないよ」

 でも、それ以上何を言えばいいのかわからない。気まずくて、無言で立ち尽くす。

春樹「あのさ、さっきの一護が言ってたヤツだけど…」

春樹「佐々木が決めればいいというのは、本当で。ただ、そう言ってる俺が、佐々木の気持ち無視してて、一護とくっつくんだろうなとか勝手に想像しちゃってたからっていうのもあるんだけど…。とにかく、ごめん!」

春樹「俺が中途半端なことしたから、泣いちゃったんだろ?」

美緒「ううん…私も、いきなり泣いたりしてごめんね?」

春樹「いや、それは俺が悪いからって、堂々巡りしちゃうね」

美緒「うん。ふふっ」

春樹「あっ、その笑顔。やっぱり佐々木の笑顔、安心する」

 やっぱりハル君、天然のたらしだ。ハル君を諦めようと思った気持ちが薄れていく。

春樹「じゃあ帰ろうか?クロフネまで送るよ」

美緒「もう、お祭りはいいの?」

春樹「俺はもういいよ。佐々木は?今から戻ってみんなで回る?」

美緒「ううん、もう帰る」

 目の前にある段差を上る時、ハル君は手を貸してくれた。でも、その後、ハル君はすぐに手を離した。
 前のようにはずっと繋いでくれたりはしないんだ…。
 



譲二〉
 思っていた時間より早く、美緒は帰ってきた。

 ハルに送ってもらったといいながら、今日もなんだか上機嫌だ。

 ひとしきり七夕祭りが懐かしくて嬉しかったという話をしてくれる。

 あまりにも饒舌で、やはり何か隠し事をしているのではないかと不安になった。


『七夕祭りの夜』おわり

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この続きは『胸騒ぎ』です。



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