京都の闇に魅せられて(新館)

京都妖怪探訪(122):祇園祭・山伏山





 最近オフの法が公私共に多忙になってきましたことのあって、また間があいてしまいしたが、前回の続きで、祇園祭の山鉾の話でも。
 今回は、それらの中でも「山伏山(やまぶしやま)」をとりあげます。

 この山のご神体である浄蔵は、卓越した法力によっていくつもの奇跡を起こしたという伝説を遺した術者です。
 浄蔵(891~964年)とは平安時代中期の人で、天台宗の僧とも修験者とも言われています。
 この「山伏山(やまぶしやま)」では、後者の修験者の姿で表現されています。

 
 この浄蔵という人物には、例えば以下のような伝説があります。

・傾いてしまった「八坂の塔」を法力で元に戻した。

一条戻り橋で、死んだ父・三善清行(みよし・きよゆき/きよつら)を甦らせた。

・勅命によって、反乱を起こした平将門を打倒するための祈祷を行った。

・自室に侵入してきた盗賊を金縛りにして、朝まで説教をして帰した。

・不動明王の眷属である護法童子(ごほうどうじ)を自在に操った。


 また、父・三善清行はあの菅原道真と対立関係にあったと言われ、そのため浄蔵は道真の霊と対峙したという話も伝わっています。

 他にも多くの不思議な伝説の残る浄蔵という人物ですが、多くの故事や伝説・伝承などをテーマに作られた祇園祭の山鉾のひとつにとりあげられています。


前回の鈴鹿山が置かれている烏丸姉小路~烏丸三条のすぐ近く、烏丸通りより一筋西を南北に走る室町通り。
 烏丸御池を西、そして室町通りを南下していったら、シリーズ第44回でとりあげた「役行者山」のある役行者町にたどり着きます。



 
 



 「役行者山」について詳細はシリーズ第44回でとりあげたましたので、ここでは省きます。
 

 室町通りをさらに南下していきます。








 さすが祇園祭・宵山の日だけあって、歩行者天国となった通りにはたくさんの人であふれかえっています。
 途中から、あまりの混雑のために進むのもしんどくなってくるほどです。
 ところで、写真に映っているたくさんの鯉が描かれた大きな幕は、確か去年も目にしていましたよ。

 さらに進むと、山鉾のひとつ「黒主山」がある烏帽子屋町が見えてきます。








 平安時代の有名な歌人・大伴黒主(おおとものくろぬし)の人形をご神体として祀った山です。
 大伴黒主といえば、シリーズ第112回・「小町雙紙洗水遺跡」の伝説で、ライバルの小野小町を卑怯な策を使って陥れようとしたとされる人物でもあります。そのため、黒主は悪役のイメージで見られることも多いようですが、実際の黒主本人が本当にそんなことをしたかどうかは定かではありません。小野小町というスーパーヒロインを引き立てるために悪役にされたのだとすれば、ちょっと気の毒な人です。

 さらに室町通りを南へ。
 「鯉山」のある鯉山町付近を通ります。





 鯉が竜になるために滝登りをするという伝承をもとに作られた山鉾です。
 すみません。
 実を言いますと、ここで使っている写真は去年のものです。
 今年の「鯉山」は相当人気があるらしく、この山の付近はあまりにもたくさんの人で混雑し、また山鉾のご神体が安置されている町屋の前にはこれまた大勢の人たちが行列を作って並んでいましたので、まともに写真を撮ることができませんでした……。


 気を取り直して、室町通りをさらに南へ進みます。
 
 いよいよ、見えてきました。
 「山伏山」のある山伏山町です。









 そして、町屋の2階に祀られているのが、山伏山のご神体である浄蔵像です。





 以前に、「祇園に祇園祭の山鉾には、ディズニーランドのパレードみたいなエンターテイメント性もある」と言いました。
 こうして見ると祇園祭の山鉾とご神体は、「英国ロンドンのマダムタッソー蝋人形館にも似ているな」という気がしてきました。
 あの蝋人形館には、歴史上の有名人(政治家、芸能人、スポーツ選手など)の他に、『ピーターパン』に登場する妖精ティンカー・ベルや、人気映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に登場する海賊ジャック・スパロウとか、映画などの登場人物などの人形が展示されているそうです。
 近年では、人気アニメやゲームのキャラの蝋人形なども展示されているそうです。

 祇園祭の山鉾も、それらが作られた当時に有名だったり、人気が高かったりした歴史や伝説・伝承上の人物などをモチーフに作られたものでしょう。
 浄蔵や、役行者、前回の鈴鹿御前や、シリーズ第46回の平井保昌なども、当時の有名人・人気者として、祇園祭の山鉾のご神体として祀られる栄誉を、京都の人々から授かったわけですね。



 ところで少し余談。
 もし今、祇園祭の山鉾が新たに作られるとしたら、どんな人物やキャラクターがそのご神体として祀られることになるだろうか?
 その時代の大衆に人気のある人物やキャラクターをテーマにした山鉾が作られるのだろうか?
 ふと、そんなことを考えてしまいました。

 歴史上の人物ならば、幕末の英雄として名高い坂本龍馬を祀った「龍馬山」とか、戦国武将を祀った「信長山」「太閤(秀吉)山」「幸村山」とか。
 あるいは、伝説的な歌手を祀った「ひばり山」とか。
 人気の時代劇などドラマでは、「黄門山」、「金さん山」「仕事人山(主水山)」とか。
 小説では、「金田一山」「明智山」「浅見(光彦)山」「十津川山」とか。
 あるいは「京都○○殺人事件」などというシリーズを書いてた山村美沙にちなんで「狩矢山」とか「キャサリン山」とか?
 人気の海外ドラマや映画などは、「ホームズ山」「ボンド山(007山)」「ハリポタ山」「スターウォーズ山」「タイタニック山」「冬ソナ山」とか。
 アニメでは、「アトム山」「鬼太郎山」「ドラえもん山」「ガンダム山」など、特撮では「ウルトラ山」とか「(仮面)ライダー山」など、長年に渡って国民的人気を保ち続けている作品が山鉾になりそうです。
 そして、ゲーム作品では「マリオ山」とか「ドラクエ山」とか。
 そういう「なんちゃって祇園祭」とか、「なんちゃって山鉾」などを作るのはどうだろうか……?

 ……いや、失礼。
 またくだらんことを考えてしまいました。

 というところで、今回はここまでにします。
 また次回!

 



祇園祭のホームページ
http://www.gionmatsuri.jp/




*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm




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コメント一覧

小路@管理人
http://moon.ap.teacup.com/komichi/
>わ~い、お茶さん

 いつもコメントありがとうございます。
 やはり、浄蔵さんは多くの人たちに親しまれ、人気のあるキャラだったようですね。


>「京都の祇園の坊主は贅沢三昧をして皆腹が出ている」と言うのを聞いた事があります。


 決してそんなお坊さんたちばっかりではないのでしょうが。
 ただ、京都のお坊さんたちの中には、かなりのお金や権威・権勢を持っているような人も居るのも事実なんですねー。
 特に、観光客にも開放されている有名寺院などでは、拝観料やお布施、そして関連商品の販売収入などで、ものすごい財力を持っているお坊さんもいます。
 ちなみに私は学生時代、祇園の辺りでバイトをしたことがあります。
 その時の経験からですが……。
 例えば、祇園付近の某有名寺院のお坊さんは、一方通行の道路を平然と逆走するなど交通違反や横着をしていたりしても、誰も注意できないなかったり……。
 
 もっとも(このシリーズで寺社仏閣の歴史を少しかじってみて思ったことですが)、寺社仏閣というのは単なる宗教施設というだけでなく、権力集団とか今で言う圧力団体、さらには財力を持った事業者としての側面も持っていたのですね。

 仰るとおり、だからこそ「檀家も宗教者も襟を正すべき」ですが。
 ただ一方で、宗教者や檀家の皆さんにも、少しくらいは人間くさいところがあってもいい、とは思うのですよね。私個人としてまして。
 もうひとつ、私の個人的体験談ですが、私の学生時代の友人の中に、(国宝か世界遺産かにも指定されたという)京都市内の某有名寺院の修行僧が居りましたが、彼と私はいつもアホな話とかスケベエな話とかしたりの、実に面白い悪友でしたよ(笑)。
わ~い、お茶
こんばんは、浄蔵と言えばこの他にも当時の
様子を描いた草子がありますが周囲の家や屋敷よりも浄蔵の姿の方が大きく描かれていて
いかに浄蔵が慕われていたかが分かります。
そういえばよく聞くのが「京都の祇園の坊主は贅沢三昧をして皆腹が出ている」と言うのを聞いた事があります。僧侶の肩を持つわけではありませんが、檀家(信仰者)ももっと
襟を正すべきだろうと思います。人の事は言えませんが・・・
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