京都の闇に魅せられて(新館)

京都妖怪探訪(121):祇園祭・鈴鹿山





 どうも。
 本シリーズの前回から半月ほど間を空けてしまいました。
 このところ、オフが公私共に多忙だったため、なかなかネットにかまっていられませんでした。
 また、もうひとつのブログで、政治・社会記事らしきものを書いたりして、それで時間やエネルギーをとられていました。
 ここいらで、シリーズ再開と行きます。

 もう7月になりました。
 7月京都の風物詩と言えば、多くの人が思いつくのが「祇園祭」、特にそのハイライトと言われる「山鉾巡行」でしょう。
 そして祇園祭といえば、本シリーズとも無関係ではありません。
 昨年記事でも言いましたが、祇園祭とは元々、怨霊や悪霊、疫神やもののけなどを鎮めるために行われた「御霊会(ごりょうえ)」という宗教的儀式だったのです。
 平安時代の貞観11(869)年、当時流行した疫病を鎮める祈願を込めて、66本の矛を立て、神輿3基を送り、その当時に災厄の原因だと考えられた怨霊や悪霊、その大ボスである疫神・牛頭天王(=スサノオ)を祀り、御霊会を行ったのがその起源だとされています。
 また祇園祭で使用される山鉾は、ひとつひとつが神様を祀る社や神輿のようなもので、それぞれが歴史や神話・伝説などをテーマに作られています。
 その中には妖怪や神話、異能者の伝説などをモチーフを作られたものもあります。
 昨年と同じく今年も、そうした山鉾などを中心に祇園祭の特集をしたいと思います。

 今回は、そんな山鉾のひとつ「鈴鹿山」をとりあげます。

 「鈴鹿山」とは。
 伊勢の国(現在の三重県辺り)鈴鹿山で、人々を苦しめた悪鬼を退治した鈴鹿権現を女人の姿であらわしている。
 祇園祭(山鉾巡行の当日)で配られていた案内書には、確かそのように書かれていました。
 しかしこの鈴鹿権現と崇められた女神には、天女であるという伝説の他、しかも「天竺四大天魔王の娘・鈴鹿御前」という大物の鬼神であったとの伝説もある、謎めいた女性です。そして「絶世の美少女」であったという不思議な魅力を持つ存在でもあります。
 東北の蝦夷を討伐した征夷大将軍で、何人もの大物の鬼を退治した英雄としての伝説も遺されている平安時代の高名な武人・坂上田村麻呂は……なんと、この「鈴鹿御前(=鈴鹿権現)」と恋に落ち、のちに妻となって田村麻呂の鬼退治に協力したとの伝説もあります。
 ファンタジーで喩えて言えば、「美しき魔族の姫が、国王に仕える勇者と恋に落ちて結婚し、その英雄としての戦いを助ける」という類の話です。

 そんなミステリアスな魅力を持つ女魔王でもある「鈴鹿権現(以後、鈴鹿御前と呼びます)」を祀った山が、「鈴鹿山」なのです。


 京都市内の中央を縦断する烏丸通りと、やはりほぼ中央を横断する御池通りとが交わる、烏丸御池の交差点南西角。





 京都市営地下鉄「烏丸御池」駅が最寄りの交通機関です。
 
 この交差点の南西角から、少しだけ南下します。





 姉小路通りを越えたところにある、ひとつ目の小さな交差点。
 その南西角の町屋に鈴鹿山の御神体である、鈴鹿御前の人形が安置されています。
 そのすぐ近く、烏丸通り沿いに「鈴鹿山」が置かれています。

 まずは、鈴鹿御前の像がある町屋の中に入ってみます。











 たくさんの参拝者や観光客が訪れています。
 この山のご利益は確か、主に「盗難除け」「雷除け」「安産」です。

 御神体として祀られている「鈴鹿御前」の像を拝みます。





 この御神体の人形は、「鈴鹿権現」「瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)」と呼ばれているそうです。
 山鉾の中では、唯一の美女像とされています。
 能面を付け、腰には太刀を差し、左手には長刀を縦に持ち、右手には扇を持っています。
 この写真では鳥居に隠れて見えにくいですが、金の烏帽子を被っています。烏帽子を被っていることから、鈴鹿御前は「立烏帽子」とも呼ばれることもあったそうです。
 なんか、昔に流行ったスタジオジブリのアニメ作品『もののけ姫』に登場する烏帽子御前を連想してしまいましたが……まあ、それはどうでもいいことです(笑)。
 烏帽子は当時、遊女や盗賊などが好んで被っていたともされています。そのため、鈴鹿御前の正体を「盗賊」や「盗賊団の女頭領」だと考える説もあるそうです。

 古来より鈴鹿山は、京都、近江、伊勢などを結ぶ交通の要所であったため、盗賊などの犯罪者もよく出没したと考えられます。
 また古来、山地は異世界のように考えられていたので、そこに現れる盗賊や犯罪者、反体制的な人々なども「人ならざる者」だと考えられていたのでしょう。
 そのためか鈴鹿山の付近には、鈴鹿御前の他にも鬼や妖怪などの伝説が遺されているそうです。


 さてその翌日、山鉾巡行が行われた17日にも、この鈴鹿山を見に行きました。
 山の上に、御神体の鈴鹿御前像が乗っている。つまり完全な姿での鈴鹿山を見に行ったのです。











 
 鈴鹿山に乗った鈴鹿御前の像です。
 こうして青空を背景に立っている姿には、凛とした雰囲気すら感じます。







 冒頭の“天竺四大天魔王の娘”鈴鹿御前と、“鬼退治の英雄”坂上田村麻呂とが恋に落ちる話とか、二人が夫婦となって「高丸(たかまる)」や「大獄丸」などといった日本各地の鬼を退治していく話などは、『田村三代記』という書物に記されているそうです。
 しかし鈴鹿御前の伝承には、他にいくつものパターンがあるそうです。
 最初から「邪悪な鬼女」として描かれ、最後には田村麻呂に倒されるというもの。
 最初から「天女」「天の使い」として描かれているものなど。

 何故、このようないくつもの異説が存在するのか?
 史実は、あるいは元の伝説はどんなものだったのか?
 今ではわかりませんが、それだけにいろいろと想像力をかきたてたりもするミステリアスな点も、鈴鹿御前の魅力のひとつでしょう。


 それでは今回はここまで。
 シリーズ次回も祇園祭の話をします。
 では、また!



祇園祭のホームページ
http://www.gionmatsuri.jp/




*京都妖怪探訪まとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm




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コメント一覧

小路@管理人
http://moon.ap.teacup.com/komichi/
>わ~い、お茶さん


 いつもコメントをありがとうございます。
 近年の京都では、大資本による乱開発のため、自然や歴史的景観などが荒らされた時期もありました。
 京大など大学の近くにもパチンコ屋が建ったりして、「現代の京都人・日本人は歴史文化を大事にしようという気がないのか?」などと残念に思ったことがありましたが。
 それでも幽玄というイメージが保たれているのは、「腐っても鯛」ならぬ、「腐っても京都」というところでしょうか。


>私の目から見て都市部の妖怪は人の欲だったりするのが地方では妖怪は生き物の精気とかそういったものが正体だと思います。


 これは言えると思います。
 京都は、「都市」どころか「都」としての歴史が長いため、人間のあらゆる欲望や怨念などの負の感情が、人間の最も暗くドロドロした部分が渦巻いてきました。
 『京都妖怪探訪』シリーズを始めて、多くの妖怪や怨霊などの伝説の背景には、そうした人間のドロドロしたものがあるということが、よくわかりましたよ。
 現代の「都市伝説」というものにも、そうした人間の暗い部分が見えることもあり、「何千年という歴史が流れても、人間と人間社会の本質部分は変わっていないのかもしれない」などと考えさせられます。



>妖怪は「アヤカシ」つまりは「妖」何かこう引き寄せられる、幻惑されるからこそなのでしょうか。


 まさにそのとおりかもしれません。
 どういうわけか、人を引きつける何かがある。
 私もひきつけられた一人であるからこそ、『京都妖怪探訪』シリーズなどというものを120回以上も続けてこられたのでしょう(笑)。



>あと、雨の日に墓の塀に近付くとなぜかニンニクのようなにおいがする事はありませんか?私は昔からそういったにおいがする事を不思議に思っています。


 実を言いますと、雨に日に墓地に近づいたことはあまりないため、それはよくわかりません。
 でも、そういうにおいを感じる感性を、私ははうらやましく思います。
 最近は雨に日になると、神社や庭園、石畳の道などに行くことが多いです。雨の日は、そういった光景を、より美しく見せることがありますので。
 一度、雨の日に墓地か、墓地近くに行ってみるかな?(笑)
わ~い、お茶
おはようございます。京都が幽玄な感じがするのは町の感じや造りにあると思います。東京などの都市部は高層ビルが立ち並び、自然と言うのは端に追いやられ消えていきますが
京都は自然の中にビル等があります。歴史的な建造物や景観を保つ為にそういった物の建設の規制を行っている為だと思います。私の目から見て都市部の妖怪は人の欲だったりするのが地方では妖怪は生き物の精気とかそういったものが正体だと思います。妖怪は「アヤカシ」つまりは「妖」何かこう引き寄せられる、幻惑されるからこそなのでしょうか。
あと、雨の日に墓の塀に近付くとなぜかニンニクのようなにおいがする事はありませんか?私は昔からそういったにおいがする事を不思議に思っています。
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