京都の闇に魅せられて(新館)

石山寺「朗澄大徳遊鬼境」 @ 京都妖怪探訪(472)





(記事中の写真はクリックで拡大します)


 どうも、こんにちは。
 リアル世界では梅の時期はもう過ぎつつあり、もうすぐ桜の季節になろうとしているようですが、弊ブログではもう少し梅の話を。
 今回は京都市内を少し離れ、琵琶湖・瀬田川河畔の古刹・石山寺の梅を観に訪れました。
 その前に『京都妖怪探訪』シリーズにふさわしい、この古刹に遺る青鬼伝説の地を。石山寺・中興の祖でもあり、死後は鬼となって寺を守護し続けたという高僧ゆかりのスポットを巡ります。


 京阪電車・石坂線「石山寺」駅から。





 そこから、瀬田川沿いを南へと歩きます。











 実を申しますと、昨年秋頃(紅葉の時期)にも訪れたのですが、ここの記事に載せている写真のほとんどは、この時のものです。
 もちろんついこの前(梅の時期)にも訪れたのですが、この時撮った、京阪電車「石山寺」駅からの参道及び、今回のスポット「朗澄大徳遊鬼境」の写真のうち、あまり納得のいくものが撮れなかったので。
 それでここだけ、昨年秋頃に撮ったものを使っているわけです。


 10~15分ほど歩きますと、石山寺の門前へと辿り着きます。






 石山寺の正門とも言える「東大門」より少し離れた場所に、小さな庭園があります。





 ここが今回紹介するスポット、「朗澄大徳遊鬼境」です。
 石山寺・中興の祖とも言われる高僧「朗澄大徳」、つまり「朗澄律師(ろうちょうりしっし)」。教学の他、図画等にも卓越した大天才でもあったそうです。
 承元2年(1208年)5月14日、朗澄律師は死に際して、石山寺とその教え、そして万民を守護する為、鬼の姿となることを誓ったと伝えられています。
 石山寺の創建と、その本尊・観世音菩薩の功徳を描いた重要文化財「石山寺縁起絵巻」の第6巻第2段には次のような話が描かれているそうです。
 朗澄律師は、「死後鬼の姿となり、多くの動物を連れて、聖教を守り、法に従わない人々を改めさせる」と宣言しました。
 朗澄律師の死後、その教えを受け継いだ弟子・行宴(ぎょうえん)は、「師はどこにおられるのか?」と熱心に祈りました。ある時行宴は、「山の峰の松の梢に、師の姿が現れる」という夢を見ます。夢から覚めた行宴が、その場所へ急行すると、虚空から「印を結んで両眼にあてて見ろ」という声が聞こえました。その通りにしますと、厳しい表情で四方を見渡す金色の鬼に姿が現れました。
 遺言通りに朗澄律師は、鬼の姿となって、教えと万民を守り続けていたわけです。


 庭の中に入っていきます。






 この石碑の鬼こそ、「石山寺縁起絵巻」に描かれた、鬼の姿となった朗澄律師の姿です。





 毎年5月(朗澄律師の命日のあたり)、鬼となった朗澄律師を祀る祭事がここ石山寺で行われます。
 それがシリーズ第288回で紹介した「青鬼祭」です。
 死後も尊敬・崇拝され続けている朗澄律師ですが……確か、比叡山などにも同じ様に鬼の姿となった高僧が居ましたね。
 そう、最近ではシリーズ第461回や、第462回などで紹介しました、比叡山・中興の祖“元三大師”良源です。魔を払うために、角の生えた鬼の姿に変身したという伝説を持ち、「角大師」とも呼ばれた人物です。
 まるで「デビルマン」みたいな人物の伝説が、比叡山と石山寺という、いずれも歴史ある古刹に伝わっている。
 「毒をもって毒を制す」、つまり「鬼や魔の力をも取り入れてでも魔を払う」という考え方があったのか。
 それとも、昔は「神仏と鬼や魔とは、同種か、近しい存在」だと考えられていたのか。
 いずれにしても、現在の(西欧的な、一神教的な)善悪二元論の考え方には無い発想であり、面白いと私は思いますね。


 なお、今回の最後に。
 あまり上手く撮れていないなと思うのですが、梅の時期に撮った庭園の様子です。






 今回はここまで。
 シリーズ次回は、石山寺境内、菅原道真ゆかりとも言われる梅園の光景をお届けします。




*石山寺へのアクセス・周辺地図はこちら



*石山寺のHP
http://www.ishiyamadera.or.jp/




*『京都妖怪探訪』シリーズまとめページ
http://moon.ap.teacup.com/komichi/html/kyoutoyokai.htm




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