見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

英語で学んだ先には

2007-05-10 23:04:10 | 多文化・異文化
16歳のスリジャナは、幼稚園の時から英語主体の私立学校に通っている。

ネパールの私立学校の乱立は目を覆うばかりだ。ホテルの部屋程度の広さの部屋が数室ある建物を手に入れて、簡単にスクールビジネスがスタートする。そのほとんどが「English Boading School」。英語を日常言語とし、寄宿舎を備えた学校を指す。学費は公立学校の数倍かかるが、親は生活費を削ってでも子どもの将来を思って私立学校へ通わせようとする。英語が堪能で優秀な教師は、少しでも給料の多い学校に流れ、当然のことながら、公立学校の教員が確保しにくくなる。教育の質も不安になる。だから質の良い私立学校へ子どもを行かせたい。悪循環である。

スリジャナは、妹弟父母の6人家族の中で、最も英語を堪能に操る。妹弟も全員同じ私立学校へ通う。英語を話さないのはお母さんだけだ。
教科書は、ネパール語(国語)の教科書を除いてすべて英語。科学も、数学も、社会もすべて英語。
 
「学校では、ネパール語で話すことは一切禁止されているの。休み時間も放課後もずっと友だちと英語で話すのよ」とスリジャナ。
ふと、疑問になって聞いてみた。
「ねえ、私立学校を卒業した人が、学校の先生になるとき、ネパール語で授業はできるのかな」
幼稚園のときから英語で学ぶということは、すべての知識が英語で習得されることになる。ネパール唯一の国立大学も英語のみで講義がされるというので、高等教育に進む者にとって英語の習得は必須だ。しかし・・・

「英語で授業をするんだから問題ないわ」とスリジャナ。
「でも、山岳地帯の公立学校ではネパール語で授業をしているでしょ」
「山岳地帯でも、今はいくつか私立学校ができているから大丈夫」
スリジャナは淀みのない英語で答える。

「山の中の公立学校はまだ教育レベルが低いと聞いているけど、そういう地域へ
行って子どもたちにいい教育したいという人がいたら?」
どうしても聞いてみたくて、食い下がった。
「えっとぉ」
スリジャナはちょっと困った顔をして、そして言った。
「たぶん、公立学校では無理。ネパール語で教えることができないから。学んできたことはみんな英語。科学の用語や数学の用語をネパール語で何というか知らないの」

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3 コメント

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Unknown (パパイヤb)
2007-05-14 11:20:07
グローバル化の波が世界を覆っている時に、その国がどの段階にあるかということだと思うのですが、国家という一種の防波堤みたいなものが機能しないと、それが国民にとってどうなのか。教育制度のこと以外はどうなんでしょうか。例えば日本にしろタイにしろ、一方でナショナリズムを煽るというのはあるんですが、ネパールはどうですか。ネパール文化を愛せよ、運動みたいなものの推進は?またレポートお願いします。
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回帰運動 (ワイン)
2007-05-14 15:06:02
パパイヤbさん、ネパールの場合、いい職を得るために英語が必須という社会の現実があり、子どもの将来を託す学校の使命がそこにフォーカスされています。一方で、多くの私立学校が「民族ダンス」「ネパールカルチャー」のような課外活動を取り入れており、英語や欧米方式授業だけに終始することのないような特別カリキュラムを取り入れている姿もあります。
数年前に比べて、女性の服も驚くほど開放的になってきました。この変化について、もう少しインタビューしながら探って見ようと思っています。タイでは回帰運動のような動きはありますか。
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言葉 (YURI)
2007-05-14 20:27:24
お久し振りです。
私は、M市でお世話になりました「しゃべり」を仕事にしていてFLなんかもやってる者です。ワインさんが、私が誰か思い出して頂けたら嬉しいです。HNにはいろいろ訳がありまして、それは長くなるので、またいずれ・・・

・・・と、英語は話せた方がいいですね。私はまったくダメなので話せればいいなあと思います。
でも、母国語も大切にしたいものです。
日本でもちゃんと「日本語」が話せる若者が少なくなっています。言葉は、時代と共に変化するものではありますが、言葉の美しさ、独特の表現など失くしたくないなあと思います。
その国の文化や伝統を伝えるのに、他の国の言葉では難しいんじゃないかな。

ときどき覗かせていただきます。お体に気をつけて旅を楽しんでください。

PS ワインさんはB型だと思ってました(笑)ちなみに私、B型です・・・。
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