見果てぬ夢

様々な土地をゆっくりと歩き、そこに暮らす人たちに出会い、風景の中に立てば、何か見えてくるものがあるかもしれない。

経営者よりコック

2007-05-07 21:34:34 | ネパール
バナナラッシー(バナナ・ヨーグルトドリンク)付の朝食セットは60Rs(約110円)。
スーリアは、今年28歳。2年前、ネパール第二の都市ポカラでレストラン「ラクシミ・レストラン」を始めた。
 
専門学校を出てから、ゲストハウスのアルバイトをしたり、ツーリストバスの終点でホテルの客引きをしたり、自分の村に帰って農業をしながら識字教室のボランティア活動をしたり、自分の活きる道を模索していたが、2年前に一念発起、約40万円でこのレストランを買った。
周囲にも様々なレストランが開業しており、競争は激しい。テーブルがわずか4セットのレストランは、実は内装も、メニューも、店の名前までも、前のオーナーの時のままだ。
「そのうち、メニューも内容も新しくしなくちゃと思っているんだけどね」と、スーリアは静かに言う。とても商売気があるとは思えない物腰だ。
ところが、料理の味と気遣いはなかなかのもの。朝食セットは、付近のどのレストランよりも安くてボリュームがあって、何よりも、とても美味しい(^^)。卵の横に付く、玉ねぎとニンニクで味付けされたポテトソテーの味は絶品。バナナラッシーも、これまでで飲んだどのラッシーよりもすっきりして朝食にぴったりのコクだ。
 

思わず、夕食時にも通い、ビールを飲んだ。そのビールのグラスが冷やされて出てきたのだ。日本では当たり前のこんな気遣いは、この旅が始まって初めてのことだった。ビールのおつまみに、彼が遠慮がちに進めるピザパイを注文してみた。「この前、友達から習ったばかりなんだけど、けっこう好評なんだよ」と静かに彼が言う。「一度、料理の作り方を見れば、たいていのものは作れる」と、自慢げな内容を、言葉少なげに静かに言う。
妻と2歳の長女の住む実家からバイクで1時間かけて通うが、夜遅くなることもたびたびなので、週のうちの多くは店の奥の仮眠室で寝る。「レストランは始めてみたものの、あまりいい商売じゃなかった」と彼。でも、彼の料理の腕は確かにいい。運ばれてきたヤギのチーズがたくさんかかったピザパイ(120Rs)も、カトマンズで食べた350ルピーのパイより、ぱりぱりと香ばしくずっと美味しかった。
彼はまだ若い。この先の夢は何?と聞いてみる。
「コックになることかな。料理をつくるのは楽しい。レストランの経営は大変だよ」と、やはり静かに言葉少なげに彼は言った。


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2 コメント

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おいしそう~ (UO)
2007-05-13 21:28:34
今、ポカラですか。

ポカラには、たくさんレストランありますね。
日本食の店も、まだ何軒かありますか?

朝食おいしそう。
旅を楽しんでいるようですね。
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「古都」 (ワイン)
2007-05-14 14:58:40
UOさん、「古都」というレストランの看板を見ました。数年ぶりに来て驚いたのは、ハングル語とイスラエル語の看板や広告が増えていたことです。
町を歩く人も、日本人より中国人が目立ちます。
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