ご近所のお友達でも遊びに来たのかと思って玄関から外を覗くと、見慣れない女の子とそのお母さんが立っているでは無いか。
組は違うがバスが同じで、いつもバス待ちのお部屋で楽しく一緒に遊ぶらしいのだ。
女の子は何やら小さなナイロン袋に入ったものを、持っている。
その子のママが
「先日も来て見たのですが、お留守だったようで…突然すみません」
と丁寧に挨拶をされた。
どうやら我が家を探していたらしい。
その子や、その子のお姉ちゃんの情報でうちを探していたのだ。
女の子といっくんは仲がよいらしく、いっくんも「上がってきていいよー!」とご機嫌である。
女の子が手にもっていたチョコレートをいっくんに「あげるね」と、手渡すと、母親が苦笑しながら補足した。
「バレンタインのチョコレートなんですけど、いっくんに渡したいって言うもんですから…」
なんですと??
幼稚園児がバレンタイン!?
私がびっくりしていると、いっくんは「え!?いっくんに!?くれるの?ありがと~!」と喜んでチョコレートを受け取っていた。
意味は判っていないようだが、とても嬉しそうである。
こいちゃんが「こいちゃんにはない…」とがっくり落ち込んでいるんのをみると、やはり2人とも意味はまったく理解していない。
それはさておき、一緒に遊べることになったのが嬉しかったらしく、チョコレートを机に放り出し、3人で楽しげに遊びはじめた。
しばらくして女の子が「自分で作ったチョコレートを食べて欲しい」といっくんに言うと「え??チョコ?チョコレートが入ってるの?くれるの??」と驚いていた。
やっぱりまったく理解してない…。
チョコレートや飴をお預けの我が家ではあったが、手作りチョコレートをいっくんに食べて欲しいと言う可愛いお願いに、私もニコニコ見守った。
たった3個しか入っていない手作りチョコレートではあったが、こいちゃんはずうずうしくも「一個頂戴?ね?ね?」と女の子を説得して、貰ってしまった。
普段あまり口にしないチョコレートに舌鼓のこいちゃんといっくん。
その後も工作をしたり、テレビを見たり、ととても楽しそうに遊んでいた。
最後の一個を、何故か私に渡したのは、分けられなくて喧嘩になるから預かってくれと言う意味だろう。
その子のママの話だと、よく家に帰ってもいっくんの話をしているらしい。
一時期は、コミュニケーションが取れない子なのではないかと危惧するほどやる事が荒く、心配していたいっくんであったが、こうやって無事に皆と楽しく過ごしているらしいことに安心した。
わざわざ家を探してまでチョコレートを持ってきてくれるほど、いっくんと仲良くしてくれて、本当に、感謝感激である。