山歩き

夕方。
皆で山歩きに出かけた。

木々に新しい芽がついていたり、野草が花を咲かせているのを見つけたりしながらどんどん歩く。
しばらく歩いたところで、ご近所さんに会い「レモンをあげるから好きなだけ取って帰って」と声をかけていただいた。

レモンの木にかけよるといっくんが木を「わさわさ」揺らしながら、力ずくでレモンを引っ張って取ろうとするので焦った。
そんなことをしては木が傷んでしまう。
おじいちゃんの指導のもと、よさそうなレモンを収穫するが、こいちゃんはすぐにレモンの木のとげで怪我をして早くもテンションダウンである。

不自然な雑草の分け目を見つける。
ここらあたりでは良く見かける、たぬきなどの獣道だ。
いっくんはこわごわ中を覗く。
あまり頭を突っ込むと、狸が襲い掛かってくるとでも思っているのか、近寄らず静かに奥の方を覗き観察しているのが面白い。

急な坂道、こいちゃんといっくんは棒やしゅろの葉を振り回したり、空とぶほうきに見立てて走り回ったりと、山歩きを楽しむ。
大人もビール片手にのんびりと、子供のペースで進んでいく。

山をぐるりと歩いて、帰り道が判るところまで来たとたん、先に進む皆を残して、突然逆走を始めたいっくん。
このまま、私を追い抜かし、何と家に帰ってしまった。
何故…。

沈みかけた夕日に、海の家々は何ともいえない雰囲気をかもし出す。
何気ない光景だが、一日が終わろうとしている瞬間に立ち会っているのだ、と感じる。

こいちゃんが道々つんだ野草は、花瓶に入れて飾られた。
何気ない山道で、小さな発見をしたり、笑ったりするのはとても幸せな事である。