風が強い日であったが、久しぶりに実家で火を熾した。蜜柑を食べてゆったりすごし、お昼ご飯にはそこで焼きソバを作り、皆で食べると、もう汗ばむほどの陽気である。山を見ると何だかほんのり緑が見えて、すっかり春なのだ、としみじみ思った。冬にはすがる思いであたっていた焚き火も、何だか暑いと感じるようになっている。そんな日に何だか季節はずれだとは思ったが、実家へのお土産として購入していた「懐中しるこ」が気になって、お湯をわかして皆で食べた。お湯を注ぐと、貝をかたどったモナカの中から具材が出てきて、おしるこになると言うものである。子供の頃、たまに食べさせてもらっていたのを思い出し懐かしく感じたのだ。こいちゃんなどは面白がって、家族全員のしるこを作って喜んでいた。太陽の下、汗をかきながらお汁粉をすすり、時折焚き火の世話をしながら無駄話に花をさかせ、久しぶりの実家を満喫した。この瞬間が至福の時なのである。