買ったのはだいぶ前なんですが、どんどん消化していかないと追いつかない某衛星放送の特集のおかげでつい見そびれてしまった映画もBDが今回のテーマです。そのタイトルは「ブレインダメージ」。あの「バスケットケース」シリーズの監督であるフランク・ヘネンロッターが「バスケットケース」と「バスケットケース2」の間に作った映画です。このころは2の要請を断り、代わりに出したタイトルからしてイロモノ以外の何物でもない企画をボツにされまくっていたころなので、この「ブレインダメージ」もさぞかしイロモノのバカ映画なんだろうと大いに期待して取り寄せました。それゆえに買ってしまった点で半分満足していたので視聴が遅れてしまっていたのですが。
そもそもですねぇ、ここに貼ったアフィリンクのパッケージ写真と実際に送られてきた商品のパッケージ写真、全然違うんですよ。多分ギリギリで差し替えたんだと思いますが、そこだけでもこの映画が販売元からイロモノ扱いされているのがよく分かるというものです。なお、同じ「ブレインダメージ」というタイトルのマンガが存在しますが、関係はないようです。
大雑把な内容を解説しますと、主人公ブライアンの前に突如あらわれた謎の生命体、エルマー。エルマーは人間の脳を食べるため、ブライアンに寄生して操り、その陰に隠れて人々を襲います。ブライアンはそれが発覚してからしばらくはエルマーへの協力を拒否しますが、エルマーには強力な脳内麻薬を作り出す能力があり、それを注入されたことでブライアンは依存症になってしまってその禁断症状に耐えられず、エルマー無しでは平常心を保てない体になっていくのでした・・・。
というものです。このエルマー、その大きさわずか十数センチ。細長い体つきで青っぽく、全身筋だらけで腹部には人間にとりつく際などに使用されると思われる吸盤が見られ、まるでタコの足の一本だけを切り落としたようです。タコ足の根本に相当する部分には頭部が丸く少し大きくなっており、その付け根の押しつぶされたような位置には目と口がついております。
・・・・・・・・・この時点で猛烈な「どこかで見たことがある」感がわたしを襲いました。おかしい。この「ブレインダメージ」に関しては、少なくともビジュアル的な情報は一切入れずに視聴に臨んだはずなんです。実際エルマー自体を見たことはないはずですが、この頭部のバランスの悪さ、どこかで見覚えがある・・・。
と頭をひねって捻じ曲げたところで思い出しました。チブル星人! このエルマー、テレビ特撮ドラマ「ウルトラセブン」等のウルトラ作品に登場するチブル星人に似てるんです。色や造形はだいぶ違いますが、でっかくて球状の頭の根本に押し込められたような目と口による顔、この配置の仕方が似ていると思ってしまったのです。ちなみにチブル星人の名は、沖縄言葉で「頭」を意味する「ちぶる」から来ているとされており、知能が発達しすぎた文字通りの頭でっかちな宇宙人で、代わりに肉体は退化していて申し訳程度の体と足か手かもわからない触手が3本あるだけ、肉弾戦の能力では最弱と言われています。一方エルマーは頭は頭でも、主人公の股間から女に襲い掛かって口に突っ込む姿がアレにしか見えないところからあっちの頭がイメージと思う人が多いでしょうが、そこの印象が強いだけで他のシーンでのエルマーは脳を喰らう食性といい、言葉巧み(いい声でよくしゃべるんです)にブライアンを利用しようとするところといい、大半は「頭」そのものを連想させるんです。モデルがチブル星人というのも、絶対ありえない話ではないでしょう。
そして演出はなかなかグロいです。襲われた人々はスプラッタな血しぶきを噴き出して次々と殺されていきますが、そこはやや間接的な表現で抑え気味。もっとグロなのはエルマー製の麻薬が切れて禁断症状を起こしたブライアンが見る夢や幻で、耳がちぎれて血が噴き出る・食べ物が脳に見えるなどのシーンがドロドロネチャネチャブヨブヨと言った嫌悪感を引き起こす感触の造形で表現され、気持ち悪くはありますがあくまでエンターテインメントの範囲内での気持ち悪さであり、プラスマイナスどちらの意味でも許容範囲内です。エルマーの演出も基本は造形物の操演ですが、シーンによってはコマ撮りやセルアニメも使い、それぞれの出来も及第点を出せるレベルで良好、思っていたよりしっかりしたB級ホラーよりの作品で、単体で十分楽しめるものでした。あれ? バカ映画じゃないの? なんか予想と違ってます。「バスケットケース2」や「バスケットケース3」を期待してみたら「バスケットケース」でした、と言えばイメージは近いでしょう。ただオチなんかはバカ映画そのもので何が何だかわかりませんが、あえてオチを決定的なものにせず、観客の脳内で適当に補正してもらおうという落とし方も、そこまで十分楽しめる作品ならわたしはアリだと思います。
そうそう、作品途中で主人公が電車に乗るシーンがあり、その近くにバスケットケースを抱えた男が座っています。特に何もせず、セリフもなしで去っていくだけなんですが、ちゃんとエンディングにクレジットされています。その俳優の名はケヴィン・ヴァン・ヘンテンリック。「バスケットケース」シリーズの弟・ドウェインを演じた人ですねぇ。カメオ出演なんでしょう。ただ顔は2相当に年齢を重ねているため、2や3を見た後でないとわかりにくく、せっかくのカメオ出演も楽しめないのは残念ですが、後年DVDやBDで楽しむ分にはいいかな。
と、予想外な作りではありましたがちょっと高評価をしてみました。作品の印象が良かったのはエルマーがチブル星人に見えてしまったせいでしょうが、満足度は高めです。さぁ、あとは「フランケンフッカー」が安く再販されるか新プレスされるのを待つだけだ。出ないかな。
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