自己嫌悪…

県図書館のそばに、地図を囲む十数人の中国人女性たちの集団がいた。
名古屋城に観光にでも行くのかな、道を訊かれたらなんて説明しよう、歩道橋って中国語でなんていうんだっけ。
と脳天気に考えていたら、日本語で「すみません」と声をかけられた。見せられた地図は、高岳周辺。た、たかおか!?
「ここから歩くと一時間近くかかるよ。地下鉄の方がいいよ」
地下鉄はダメだ、という。歩く、と。
まあ、覚悟があるなら、歩いて歩けないこともなかろう…。
「朝５時から歩いています。みんな疲れています…」
はぁ!?　
こ、これはもしかして、不正就労させられていた中国人たちの集団脱走というものだろうか…。

桜通りまで同行し、あとはこの道をひたすらまっすぐ行って、「高岳」の表示が出てきたら、また誰かに聞いてね、と別れた。
全員で「ありがとうございました！」と礼儀正しく頭を下げてくれた。
コンビニで飲み物とパンを買ってあとを追い、渡したときも、嬉しそうにお礼を言ってくれた。
いたたまれない。

けっきょく、どういう集団なのかはわからない。
脱走なのかもしれない。違うかもしれない。単に中国総領事館というところへ行ってみたかっただけかもしれない。情報収集だけかもしれない。
突っ込んだことは訊けなかった。聞いてもきっとなにもできないとわかっているから。

別れたあと、胃が痛んだ。